かけだしたイス(4歳~)

絵本

作:サトシン 絵:ドーリー 出版:あわわ

いつも座っているイス。

そんなイスの気持ちを考えたことがあるでしょうか。

「落ち着いてイスに座る」「イスに座ってきちんと授業を受ける」

などを求められることが多いですが、果たしてイスはじっとしていたいのでしょうか。

あらすじ

ある日、イスはふと思った。

毎日人に座られるだけの人生でいいのだろうか。

こんなに立派な足があるのにと。

そう気づいたイスは一歩を踏み出さずにはいられなかった。

前足に力を入れ、動くことを確かめる。

次に後ろ足も。

そして、渾身の力を込めて窓に向かってジャンプした。

初めて見る外の世界。

イスはどこまでもいつまでも駆け巡った。

そのイスの走りっぷりに、イヌやウサギ、キツネ、イノシシが挑戦したが敵わなかった。

有名な陸上選手も挑んだが敵わなかった。

その速さが噂になり、ある日史上最強の名馬の耳に届いた。

馬は、そのイスと戦いたいと競馬界の偉い人に頼み、なんとか承諾させることが出来た。

そして、レースの日はやってきた。

前代未聞の馬とイスのレースに観客は超満員。

一体どちらが勝つのでしょうか。

『かけだしたイス』の素敵なところ

  • イスを4足動物に見立てる発想力
  • 否が応でも盛り上がる熱い語り口
  • 綺麗に終わった後の意外なオチ

背もたれを頭に見立て、4足動物のように走るイス。

通常、イスについているイメージは「動かない」「落ち着く」など静のイメージだと思います。

この絵本の発想はまさにその逆。

その動きのしなやかで、生き生きとしていることと言ったら。

その姿を見たら、じっと座っているのが申し訳なくなってきます。

子どもたちもこの発想力には口を開けてポカーン。

しかし、この絵本の魅力はただの意外性では終わりません。

イスが飛び出す決意をするまでの自分語りや、新世界を見た後のイスの気持ち、その走りっぷりが熱く生きた言葉で語られます。

初めはポカーンと口を開けていた子も、感情移入せずにはいられません。

「よかったね!」「すごい!」とイスに寄り添った言葉が飛び交います。

そこからの名馬とのレースの盛り上がりは本当にすごい。

競馬界の偉い人を説得する場面で、名馬の固い決意が熱く語られます。

そして、名馬と向き合った時のイスの想いもまた熱く語られます。

どちらもかっこよく、どちらも応援したくなる中レースがスタート。

その様子は本当のレースを見ているような躍動感と勢いで描かれます。

レースが終わり、すごくきれいに感動的に終わった・・・と思っていたところに最後のページをめくるとまさかの場面が・・・。

イスの生き様を熱く感じられつつ、最後の笑いを忘れない盛り上がること間違いなしの絵本です。

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