作:サトシン 絵:ドーリー 出版:あわわ
いつも座っているイス。
そんなイスの気持ちを考えたことがあるでしょうか。
「落ち着いてイスに座る」「イスに座ってきちんと授業を受ける」
などを求められることが多いですが、果たしてイスはじっとしていたいのでしょうか。
あらすじ
ある日、イスはふと思った。
毎日人に座られるだけの人生でいいのだろうか。
こんなに立派な足があるのにと。
そう気づいたイスは一歩を踏み出さずにはいられなかった。
前足に力を入れ、動くことを確かめる。
次に後ろ足も。
そして、渾身の力を込めて窓に向かってジャンプした。
初めて見る外の世界。
イスはどこまでもいつまでも駆け巡った。
そのイスの走りっぷりに、イヌやウサギ、キツネ、イノシシが挑戦したが敵わなかった。
有名な陸上選手も挑んだが敵わなかった。
その速さが噂になり、ある日史上最強の名馬の耳に届いた。
馬は、そのイスと戦いたいと競馬界の偉い人に頼み、なんとか承諾させることが出来た。
そして、レースの日はやってきた。
前代未聞の馬とイスのレースに観客は超満員。
一体どちらが勝つのでしょうか。
『かけだしたイス』の素敵なところ
- イスを4足動物に見立てる発想力
- 否が応でも盛り上がる熱い語り口
- 綺麗に終わった後の意外なオチ
背もたれを頭に見立て、4足動物のように走るイス。
通常、イスについているイメージは「動かない」「落ち着く」など静のイメージだと思います。
この絵本の発想はまさにその逆。
その動きのしなやかで、生き生きとしていることと言ったら。
その姿を見たら、じっと座っているのが申し訳なくなってきます。
子どもたちもこの発想力には口を開けてポカーン。
しかし、この絵本の魅力はただの意外性では終わりません。
イスが飛び出す決意をするまでの自分語りや、新世界を見た後のイスの気持ち、その走りっぷりが熱く生きた言葉で語られます。
初めはポカーンと口を開けていた子も、感情移入せずにはいられません。
「よかったね!」「すごい!」とイスに寄り添った言葉が飛び交います。
そこからの名馬とのレースの盛り上がりは本当にすごい。
競馬界の偉い人を説得する場面で、名馬の固い決意が熱く語られます。
そして、名馬と向き合った時のイスの想いもまた熱く語られます。
どちらもかっこよく、どちらも応援したくなる中レースがスタート。
その様子は本当のレースを見ているような躍動感と勢いで描かれます。
レースが終わり、すごくきれいに感動的に終わった・・・と思っていたところに最後のページをめくるとまさかの場面が・・・。
イスの生き様を熱く感じられつつ、最後の笑いを忘れない盛り上がること間違いなしの絵本です。
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