文・構成:竹山枝里 写真:西山悦子 出版:福音館書店
光を当てると影ができる。
当てる物や角度によっても大きく変わる。
さて、これは何の影?
あらすじ
物に光を当てると、反対側に影ができる。
長細い影と、丸にトゲトゲがくっついた影がある。
これは・・・
バナナとパイナップルの影でした。
今度は、丸の真ん中に棒が突き刺さったような影。
でも、違う方向から光を当てると、半円に棒を立てたような形に。
さらに違う方向から光を当てると、みんなもよく知っている形の影に。
これは・・・
やかんの影でした。
光を当てる方向で、影の形はこんなに変わるのです。
次は、5つの丸い影。
これじゃ、なにかよくわかりません。
でも、違う方から光を当てるとすぐわかる。
きゅうり、トマト、しいたけ、ピーマン、たまねぎ。
次に出てきたのは、英語や数字が並んだ暗号のような影。
でも、よく見ると、鉛筆やテープ、洗濯バサミなどの、家にある身近なものの組み合わせでした。
物を組み合わせると、いろんな形の影ができます。
お鍋とスプーンフォークのセットや、お皿とお箸のセットを組み合わせてみると・・・。
まだまだ出てくる、色んな影。
透ける影、色のついた影、次に出てくるのはどんな影でしょう?
『なんのかげ?』の素敵なところ
- わかりやすく描かれる、光と影の不思議でおもしろい特性
- 夢中になってしまうクイズ形式
- 自分も色々なものを映してみたくなる
わかりやすく描かれる、光と影の不思議でおもしろい特性
この絵本のおもしろいところは、光と影の不思議さやおもしろさをとてもわかりやすく見せてくれるところでしょう。
最初は、簡単になんの影かわかる子ども達がよく見る影から始まって、
よく知っているものでも、映す角度によって全然違う形の影になるおもしろさ、
組み合わせによってブロックのように形を作れるおもしろさ、
さらには透過するもの特有のおもしさと美しさまで、
影の持つおもしろい特性を余すことなく見せてくれます。
1ページごとに新しい特性が現れる影の不思議に、子ども達はすっかり夢中。
「セロテープが9になってる!」
「上から見るとレモンみたい!」
「緑の影だ!」
などなど、ページをめくるごとに驚きの声が上がります。
これは、無駄な説明を極力省き、写真をふんだんに使った視覚中心の伝え方にしたからこそ、ここまで子どもたちの興味を惹きつけたのでしょう。
この、影のおもしろさや特性が直感でわかり、子ども達を夢中にしてしまうところがこの絵本のとても素敵なところです。
夢中になってしまうクイズ形式
また、この絵本がクイズ形式で進んでいくのも、子ども達を夢中にさせるポイントになっています。
この絵本は、基本的に影を使ったクイズ形式になっています。
先に影の写真があって、ページをめくると光を当てられているものがわかります。
子ども達はクイズが大好き。
「なんの影?」と問いかけられるだけで、集中力が1.5倍くらい高まります。
これが導入にぴったりで、最初はクイズとして夢中になっているうちに、中盤くらいからすっかり影の魅力に夢中になります。
最後の方で、答えのない影が出てくるのですが、その頃には答えを求めず、
「これはなんの影だろう?」
「メガネってこんな風になるんだ!」
と、そのおもしろさへとベクトルが向ていました。
併せて、答えがあるものでも、最初の方は影とまったく同じ構図で答えが出ていたのが、
中盤では、「鍋とフォーク」など影を作るのに使ったものは載っていても、どうやって組み合わせたかは自分で考えるようになっているなど、考える要素が多くなっていくのも特徴的。
これも、影そのものへの興味を強める仕掛けになっているのだと思います。
この、クイズ形式で子どもの興味を惹きつけ、そこから自然と影そのものへの興味へ繋がっていく構成も、この絵本のとても素敵なところです。
自分も色々なものを映してみたくなる
さて、こうして色々な影を見てきたら、自分も試してみたくなるのが自然な流れ。
もちろん、子ども達からも、
「ぼくもやってみたい!」
「これ影にしたらどうなるんだろう?」
と、興味津々の言葉が出てきます。
こんな風に、自然と実際の光と影遊びに繋がっていくのも、この絵本の素敵なところ。
しかも、準備するものも簡単で、懐中電灯と、影が映りやすい場所さえあればすぐに出来てしまいます。
普段当たり前に使っているおもちゃや道具も、影になった瞬間別のものに見えるから不思議です。
きっと、部屋中のものに違う顔があると気付くことでしょう。
さらに、普段は置いていないもの(透明なカプセルや、水の入ったペットボトル、瓶など)を置いておけば、より深い探求へと繋がるかもしれません。
この、影へと子どもたちの興味を惹きつけ、自然と実際の遊びへ発展させてくれるところもこの絵本のとても素敵なところです。
ぜひ、子ども達が影と出会った時の言葉を、たくさん聞いてみてください。
そこには、子どもだからこその、様々な世界の見方が垣間見えると思いますよ。
二言まとめ
写真をふんだんに使うことで、影のおもしろさや不思議さが直感的伝わってくる。
見たら、自分も色々なもので影を作ってみたくなる、影遊びへ自然と繋がる科学絵本です。
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