お元気様です!
登る保育士ホイクライマーです。
以前、『探求遊び』についての記事を書きました。
今回は、具体的にどう遊びを展開すればいいのかというイメージが湧くように、実際に子どもたちとやってみた、簡単な光の探求遊びについて、紹介したいと思います。
探求遊びの意義や本質については、上記の記事に書いてありますので、ぜひそちらを先に見てから、この実践例を見てもらうのが、より学びになるのでおすすめです。
この実践は、
- 探求遊びをしてみたいけど、なにから始めていいかわからない
- おもしろそうだけど、難しそう
- 探求遊びの実例を見ても、スケールが大きすぎてうちの園ではできそうにない
そんなイメージを持っている人に、ぜひ試してみて欲しい内容となっています。
もちろん、園全体で一丸となり、プロジェクトとして協力し合いながら探求遊びができるなら、それに越したことはありません。
ただ、そもそも探求遊びを知らない保育者が多いという現状で、それをするのはいばらの道。
やろうと根回ししている間に、時間ばかりが過ぎていき、実践に繋がらないということになりがちです。
それなら、保育者1人でもできる探求遊びを始めてしまいましょう。
もっと、本格的にやる上でも、小さな探求遊びをした経験は絶対に活かされます。
なにより、とても楽しいので、たくさんの人に探求遊びを体験してほしいところです。
では、具体的な内容にいってみましょう!
ステップ1:探求する環境を準備しよう
使うもの
必須:スタンドライト、懐中電灯、大きな白い紙、カラーセロハン、水を入れたペットボトル
できるだけ用意したいもの:ビー玉、〇・△・□の積み木、積み木に乗るくらいの小さなフィギュア、透明な入れ物、網状になっているもの
※すべて用意しなくてもいいですが、光を透過する素材、透過しない素材は両方用意しておきましょう。また、フィギュアは出し過ぎると、フィギュア遊びに移行しやすいので、1~2体にしておくといいです。
子どもの参加人数
1~4人。
やりたい子がたくさんいる場合は、30分くらいの時間を決めたグループ入れ替え性にするとやりやすいです。
途中で抜けるのはいいのですが、途中で入ってくると、それまでグループ内で出来上がってきた探求の空気感が途切れてしまいがち。
導入もしやすいので、入れ替え制がおススメです。
環境設定
- 4人掛けくらいのテーブルいっぱいに模造紙を敷いて固定する。
- 中央に光の輪ができるようスタンドライトを設置する。
- 近くの棚などに、光の探究で使うものを並べ、自由に使えるようにしておく。
- 部屋を暗くする(部屋の一部を暗くするだけでも、はっきりと影が映ります。ぼくの園は部屋を一括でしか消灯できなかったので、コーナー付近の照明に、黒い画用紙を貼って遮光しました)
ステップ2:光の探究スタート
導入
まず、グループの子に、「光ってなんだろう」と問いかけてみます。
子どもたちの答えを聞いて、光に対してどんなイメージを持っているのかを知りつつ、「光ってどんな色?」「暗い夜にも光はある?」など、光にまつわるイメージを深掘りしていきましょう。
ここで、気を付けたいのが、こちらから答えや例題を提示しないこと。
子どもが、現段階で持っている光へのイメージを知ることと、質問をしてそれを深掘ることで、忘れているけれど子どもの内に眠る、光へのイメージを思い起こさせるように気を配りましょう。
ある程度、光へのイメージが膨らんだら、影の形を予想しやすそうなもの(積み木など)を持ってきて、光に当てるとどうなるか聞いてみます。
子どもからは「四角い影」など、答えが出てくるでしょう。
子どもが答えたら、実際に答え合わせとしてスタンドライトで、照らしてみます。
このあたりで、子どもたちから、棚に用意したものを照らしたいという要望がでてくると思うので、そこまできたら探求開始です。
使ったら棚に戻すなど、必要なコーナーの使い方を説明してから始めましょう。
もし、子どもから「試してみたい」という声が出て来なかったら、保育者が誘ってあげてください。
普段、好奇心より秩序を重んじる環境にいたりすると、受け身な子もけっこういたりしますので。
探求
探求が始まったら、子どもたちから様々な発見が出てくると思うので、その驚きを共有しつつ、見守っていきます。
ここで最も注意しないといけないことがあります。
それは、教えたり、ヒントを出さないよう我慢すること。
「こうやったら、あれが発見出来そうなのに。」
「それは使い方が違う。」
など、見ていると色々と思うことが出てくることでしょう。
けれど、ぐっと我慢してください。
ここで、子ども達が行っているのは、正解を見つけ出す遊びではありません。
自分の好奇心のまま、環境に向き合い、試す遊びです。
その中で発見したことは、大人から見たらすごいものや、イマイチと思えるもの、科学的に間違っているものもあるでしょう。
でも、子ども達にとっては、どれも世紀の大発見なのです。
なによりも、好奇心のままに試すことはおもしろいという実感できることが大切なのです。
大人がそこで口を挟んでしまえば、その発見は数段色あせてしまいます。
ぜひ、子どもから出てくる、純粋な言葉を聞き取ることを、一番大切にしてみてください。
きっと、これまで気づかなかった子どもの、素晴らしい感性に気付かされると思いますよ。
探求を深めるために大人がすること
とはいえ、大人がなにもしなくていい訳ではもちろんありません。
探求遊びの中で大人がしなくてはいけない、特に大きな役割は2つです。
1つ目は、子どもに対して質問し、探求を深めていくこと
2つ目は、探求の深まりを見逃さず、臨機応変に対応すること
では、それぞれを詳しく見ていきましょう。
子どもに対して質問し探求を深めていくこと
先ほど、答えを教えたり、ヒントは出さないように気を付けると言いましたが、ただ黙って見ているだけでは、子どもの探究が深まる機会を逃してしまいます。
そこで、探求を深めるために大人がしていきたいことがあります。
それが、子どもに質問をするということ。
例えば、光がなにかに反射して天井に映りキラキラしているのを、「きれい!」「あそこにも光があるよ!」と発見した場面。
これが発見だけで終わってしまうのはもったいない。
そこで、子ども達の話の流れを聞きつつ、必要そうであれば、
「あの光はどこから来たんだろうね?」
「なんであそこが光ってるの?」
といった質問を投げかけてみます。
すると、その問いに対して考えることで、新たな発見や探求に繋がっていくのです。
こんな風に、質問を通して、子どもの発見や探求を掘り下げ、その興味関心ををより深めていくのが大人の大切な役割なのです。
探求の深まりを見逃さず、臨機応変に対応すること
もう1つの大切な役割は、見守りながら、子どもの動きや関心に合わせて、子どもではできないことへ臨機応変に対応することです。
探求遊びは、ゴールなく、常に動き続けているので、そこでの発見や子ども同士の関わりの中から、大人が想定していなかった探求に発展したり、速いスピードで進んでいくことがあります。
反対に、想定より、子どもが探求遊びに興味を示さないこともあるでしょう。
そんな時、おそらく最初に用意したものだけでは、探求に限界がきてしまいます。
そこで臨機応変に、環境の追加や再構成を行うのが大人の役割。
子どもの言葉の中から、必要そうなものを見つけ出し、さりげなく追加したり、子どもと一緒に素材を探しに行ったり、より環境構成をシンプルなものにして、子どもの興味を惹きつけやすいようにしたり・・・
どんな対応をしたら、探求が広がり深まるかは、その時の状況次第です。
ただ、どんな対応をするにしても必要なことは、子どもたちの中で、どこに興味を持ち、どんな発見が起こり、どんな探求をしているのかを、しっかりと見定めること。
子どもたちの声をよく聞き、表情や行動を観察することが大切です。
ステップ3:振り返りと共有
探求遊びが終わったら、振り返りや共有を行いましょう。
「振り返り」では、「どんなことを見つけたか?」を、子どもたちと振り返っていきましょう。
「セロハンをつけると色が変わる」
「これ(反射素材)に光を当てるとまぶしい」
など、色々な発見が出てくるでしょう。
余裕があれば、それを写真付きで一覧にしたドキュメンテーションを作ると、次に光の探究をする時の、前回と今回を繋ぐ中間地点になってくれるのでおすすめです。
最初に問いかけた「光ってなんだろう?」という質問をもう一度してみるのもおもしろいですよ。
次の、「共有」は、帰りの会など探求に参加していない子がいる場合や、2グループでやった場合など、探求に参加していなかったり、別グループで参加していた子がいる時に行います。
共有することの目的は2つ。
1つ目は、探求に参加していなかった子へ、探求に興味を持つきっかけとするため。
2つは、他グループと発見したことを共有することで、自分たちが知らなかった光の性質にも気付けるからです。
特に2つ目は重要で、自分たちは見つけられなかった発見を見つけたという、他者へのリスペクトや、情報を共有することで互いの探究が広がるという、誰かと協力する有用性を体験できる機会となります。
探求遊びの後は、振り返りと共有を行うようにしていきましょう。
ステップ4:探求に終わりはない
こうして、1回の光の探究は終了しますが、探求に終わりはありません。
探求をする中で、影、色、光源、反射・・・
色々なことへ興味が出るでしょう。
そして、その興味は新たな探求に繋がります。
ぜひ、その興味を踏まえて、2回目の光の探究を行ってみてください。
影であれば、紙をスクリーン状にして、影を映りやすくしたり、自分の影を映せる環境を用意したり、
色であれば、色の出る素材を中心に用意し、透明な容器に入れることで、自分の色を作れるようにしたり、
反射であれば、園内の反射する場所を探しに散策して見たり、
より探求を深める内容にしていけることでしょう。
また、光の探究をしたことで、日常生活の中での光に対する解像度もあがります。
これにより、今まで気づかなかったことに気付いたり、疑問が浮かんでくることもあります。
そんな気付きや疑問を、探求のテーマに組み込んでいけば、子どもたちの探究はより生き生きとしたものになるはずです。
子どもは常に探求しています。
ぜひ、探求遊びの時間だけにこだわらず、日常生活と探求遊びを有機的にリンクさせていきましょう。
きっと、この繋がりを感じた時、子どもが「学ぶ」ということの本質を実感できることでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、光の探求遊びの実例を、具体的に紹介していきました。
日本ではまだまだ知名度の低い探求遊び。
また、探求遊び自体は知っていても、敷居が高くてなかなか実践できずにいる人も多いと思います。
ちなみにぼくもその1人でした。
けれど、やってみたさが上回り、かなりコンパクトにしたうえで、実際に色々な年齢に対して何度かやってみたところ、これまでの活動とはまったく異なる、子ども達の姿が見えたのです。
自分から貪欲に環境に関わり、次々と色々なものを照らしていき、時には興奮気味に発見を伝えてくる、時にはうっとりとした表情で影を見つめる姿。
なにより、子ども達と一緒にゆったりと過ごしながら、丁寧に子どもたちの声に耳を傾けられる時間。
そんな探求遊びならではの、体験ができたのです。
ただ、ぼくも最初からうまく出来たわけではありません。
透過しない素材として、ままごとの食器や食べ物を使ったら、ままごと遊びになってしまったり、
恐竜フィギュアを多くし過ぎて、人形遊びになってしまったり・・・。
その都度修正は必要でした。
ただ、全体としてはうまくいかなかった中でも、子どもたちが光に対して目をキラキラと輝かせ、能動的に楽しむ姿はしっかりと見られました。
きっと、最初はうまくいかない部分もあるでしょう。
けれど、この実践例に合わせて進めていけば、ある程度の形にはなるはずです。
ぜひ、憧れの探求遊びを実践してみてください。
一度やったら、子どもも大人もその魅力の虜になること間違いなしですよ。
最後まで見ていただきありがとうございました!
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