作・絵:片山健 出版:福音館書店
子どもたちを乗せて電車が出発します。
少し走ると、目の前にトンネルが。
真っ暗なトンネルを抜け電車が出てくると・・・子どもがみんな雪だるまに!?
あらすじ
電車の発車ベルが鳴り、子ども達が急いで電車に乗り込みました。
ドアが閉まり出発です。
少し走ると、目の前にトンネルがありました。
トンネルに入ると辺りは真っ暗です。
そして、トンネルを抜けると・・・
なんと、子どもたちが雪だるまになっているではありませんか。
そのまま走って行くと、目の前にまたトンネル。
トンネルを抜けると・・・
みんなダルマになっていました。
また、トンネルに入り、抜けると・・・
子どもたちがフクロウに。
さらに、トンネルに入り、抜けると・・・
お月様になっていました。
まだまだ、トンネルは続くみたい。
今度はなにになってしまうのでしょうか?
『とんねるをぬけると』の素敵なところ
- トンネルを抜けるたび、突拍子のない大変身
- どんどんペースを上げていく場面転換
- 変身とともにさりげなく変化している走行音
トンネルを抜けるたび、突拍子のない大変身
この絵本のなによりおもしろいところは、電車がトンネルを抜けるたび、車内が大変身するところでしょう。
しかも、この変身にはまったく脈絡がありません。
トンネルを抜けるたび、雪だるま、ダルマ、フクロウ、果てはお月様・・・
と、絶対予想できないものに変身していくのです。
でも、突拍子もないからこそおもしろい。
子どもたちも、
「えー!?」
「なんでー!?」
「雪だるまになっちゃった!」
と、最初は驚いていましたが、流れがわかってくると大爆笑の渦に包まれます。
トンネルを抜けて変身するたび、
「また、変わっちゃったー!w」
「おもしろいねー!」
と、近くの友だちと大笑い。
こうなってくると、橋が転がってもおもしろい。
ページをめくるたびに大爆笑が起こり、大盛り上がり。
楽しい一体感に包まれます。
この、「考えるな!感じろ!」と言わんばかりの、突拍子なく、どんどん変身していく展開のおもしろさが、この絵本のなによりも楽しいところです。
どんどんペースを上げていく場面転換
また、このおもしろさと、子どものテンションをどんどん盛り上げてくれるのが、徐々にスピードが上がっていくテンポ感です。
最初はゆっくり丁寧に描かれます。
電車が走り、前にトンネルが見えてくる場面。
↓
電車の中に入り真っ暗な場面。
↓
トンネルを抜けて変身した場面。
と、その経過が1場面、見開き1ページで描かれます。
これが、変身を繰り返すたび、どんどん過程が短縮されていくのです。
トンネルに入る場面がカットされ、「トンネルに入り、トンネルを抜けると」という文章だけで済まされるようになり、
さらには「トンネルに入り」までカットされ、変身後に「トンネルを抜けると」の一文だけで、場面がどんどん転換していきます。
最終的には、ページをめくるたび、変身するのですごいスピード感に。
ただ、このスピード感がこの絵本の突拍子のなさと相性抜群。
変身して笑っている間に、次の変身が来て燃料を投下していくので、まったく休む暇がありません。
最後のページまでノンストップで笑い続けていました。
この、電車×笑い×スピード感という、最高の組み合わせもこの絵本のとてもおもしろいところです。
変身とともにさりげなく変化している走行音
最後に、場面ごとに変わる、電車の走行音のおもしろさにも触れておこうと思います。
最初は「カタン カタン カタン カタン」と走っている電車。
でも、トンネルに入ると「ガタン ガタン ガタン ガタン」に変わります。
さらに、ダルマになると「カタン カタコト カタン カタコト」
フクロウになると「カタン カタン カタン カターン」
こんな風に、変身したものや場面によって、走行音が変わるのです。
これが、繰り返しの物語の中で、よいアクセントに。
単純文章の繰り返しの中に、テンポの変化を生んでいて、新鮮な風を吹き込んでくれています。
これは地味に効果があり、変身したことを目だけでなく、耳でも感じる効果があります。
また、ひたすら変身を繰り返す後半の場面を、飽きににくくもしてくれているのでしょう。
この、さり気なく変わる走行音も。この絵本の地味だけれど、おもしろいところの1つです。
二言まとめ
電車がトンネルを抜けるたび、車内が全然違うものに変化していく展開がたまらなくおもしろい。
どんどん加速する変身スピードに、子どもたちが息つく暇なく笑い転げ続ける絵本です。
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