【絵本】にんじんだいこんごぼう(3歳~)

絵本

再話・絵:植垣歩子 出版:福音館書店

人参と、大根と、ゴボウって、

昔はみんな白かったのをご存じですか?

この3人が、なんで今の色になったのかという昔話です。

あらすじ

あるところに、ニンジンと、ダイコンとゴボウが暮らしていました。

昔は、3人とも白い身体をしていました。

ところが、ある日、みんなで泥遊びをした時のことです。

3人とも泥で体が真っ黒になってしまいました。

そこで、3人はお風呂に入ることに。

最初に入ったのはニンジンでした。

でも、そのお湯の熱いこと。

それでも我慢して浸かっていると・・・

のぼせて体が真っ赤になってしまったのでした。

次に入ったダイコンは、お湯に水を入れぬるくして、体もゴシゴシとよく洗いました。

なので、ダイコンの体は元のように真っ白に。

さて、最後のゴボウは・・・。

『にんじんだいこんごぼう』の素敵なところ

  • 馴染みある野菜の知られざる昔話
  • シンプルでわかりやすい文章と、愛嬌溢れる野菜の姿
  • 日常生活でもちょくちょく顔をのぞかせるおもしろさ

馴染みある野菜の知られざる昔話

この絵本のおもしろいところは、とても馴染み深い野菜の、意外な過去を題材にしているところでしょう。

今では当たり前の、ニンジンは赤(オレンジ)、ゴボウは黒、ダイコンは白というイメージが、昔は違ったという衝撃的な事実に、みんなびっくり。

白いニンジンと、白いゴボウを見て、

「白いニンジンはカブみたいだね」

「ゴボウが白いとなんか変」

「でも、ゴボウは中身が白いよね」

などなど、白い野菜を見て思うところを口々に話していました。

そんな野菜たちが、どうして今の色になったかという話なのですから、興味をひかない訳がありません。

しかも、色が変わった理由も、泥遊びで泥だらけになり、お風呂に入る。

さらに、そのお風呂でのぼせたり、体を洗ったりという、どれもこれも子どもたちが体験したことのある身近な出来事ばかりです。

この、お風呂でのエピソードを見て、

「ニンジンが赤いのは熱かったからなんだね!」

「だからゴボウを洗うと白いのか!」

「ダイコンはきれい好きだね~」

と、野菜に思いを馳せつつ、妙に納得している子どもたち。

きっと、自分が泥だらけになった時や、お風呂で真っ赤になる姿が頭に浮かんでいるのでしょう。

この、馴染みの野菜たちが、これまた馴染み深いお風呂エピソードで、今の色になるというとても身近なおもしろさが、この絵本のとても素敵なところです。

シンプルでわかりやすい文章と、愛嬌溢れる野菜の姿

また、この昔話がとてもわかりやすく、愛嬌たっぷりに仕上げられているのも、この絵本の素敵なところ。

まずは文章のわかりやすさ。

余分な文章がほとんどなく、絵でうまく補完することで、かなりシンプルな文章になっています。

そのため、話がテンポよく進み、飽きる暇がありません。

次々に場面転換していく物語に、子どもたちも惹きこまれ、次の場面が気になって、最後まで身を乗り出して見ていました。

次に、愛嬌たっぷりに描かれる野菜たち。

その出で立ちからして、洋服を着ておしゃれです。

特に、ニンジンはフリフリの服を着てまるでお嬢様のよう。

そんな3人は、様々な場面で愛嬌たっぷりな仕草を見せてくれます。

本気過ぎる泥遊びや、

泥だらけの姿を鏡で見て驚くダイコン。

お風呂を嫌そうに見つめるゴボウ。

風呂上りのひと時に氷嚢を頭に乗せているニンジン・・・

などなど、絵の一つ一つ、野菜の場面ごとの表情など、絵本全体から愛嬌が溢れだしていて、とても愛着が持てるのです。

ただ、かわいいだけじゃないのがポイントで、頭に生えた葉がやたらリアルだったり、ひげ根がちゃんと描かれていたりする野菜らしさがありつつも、衣服や家具がオシャレなどのギャップがあるからでしょう。

この絵本ならではの絵の魅力があるのです。

これらがうまく絡み合い、この昔話をとてもわかりやすく、魅力的に再話してくれているのもこの絵本のとても素敵なところです。

日常生活でもちょくちょく顔をのぞかせるおもしろさ

さて、そんな身近な題材ばかりが組み合わさった物語。

日常生活でも、ちょくちょく顔を出して来ます。

ニンジンを見れば、お風呂に入った姿を想像し、

ゴボウを見れば、泥遊びしている姿が思い浮かびます。

なんなら、他の人にもこの昔話を話したくなることでしょう。

誰もが知っている身近なものの、意外と知られていない秘密というのは、とても魅力的なのです。

さらに、お風呂に入って体が赤くなってきたら、「自分もニンジンみたいだな」。

ちゃんと洗っていないわが子に「ゴボウみたいに真っ黒になっちゃうよ」。

など、子どもも大人も、色々なところでこの絵本の場面や言葉が脳裏によぎることもあると思います。

この、身近な内容だけで出来ているからこそ、日常生活の中で絵本の場面が思い浮かぶところも、この絵本のとてもおもしろいところ。

今まで、そのまま見ていたものに物語が想像出来たり、日常の場面で自分たちを物語の人物に見立てることで、きっと日常生活をより楽しいものにしてくれることでしょう。

二言まとめ

ニンジン、ダイコン、ゴボウという、身近な野菜が昔は白かったという秘密が衝撃的過ぎる。

物語のわかりやすさと身近さから、この秘密をすぐ誰かに言いたくなってしまう昔話絵本です。

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