【絵本】まじょのくつ(4歳~)

絵本

文・絵:さとうめぐみ 出版:ハッピーオウル社

魔女の靴は魔法の靴。

子牛が頭につけると、立派な角に早変わり。

しかも、白黒模様がかっこ悪いと思っていると、白い模様まで剥がれます。

そこにタヌキがやってきて、白い模様を体につけると・・・。

あらすじ

ある日、魔女がほうきに乗って空を散歩していました。

そこへ強い風が吹き、帽子が飛ばされ小川の中へ。

魔女は仕方なく、靴を脱いで小川に入っていきました。

魔女がいなくなったちょうどその時、子牛がやってきました。

子牛は落ちている魔女の靴を見て、「なんだろう?」と思いました。

尖っていて角みたいな形なので、なにげなく頭に乗せてみると・・・。

紫色の煙がモワッとあがり、靴は子牛の頭にぴったりくっつき立派な角に。

強そうな角が欲しかった子牛は大喜びです。

でも、強いウシには真っ黒な体の方が似合います。

そう思っていると、不思議なことに白い模様がはずれて、子牛は立派な黒牛になりました。

黒牛は外した模様を木の枝にかけると、鼻息荒く出かけていきました。

そこへタヌキがやってきて、白い模様を見つけました。

タヌキが不思議そうにその模様を体に当ててみると・・・

紫色の煙がモワッとあがり、タヌキの体にぴったりくっつき、パンダの姿に。

でも、タヌキの太い尻尾が余計です。

そこで、パンダがしっぽに触ってみると、お尻からしっぽが取れたではありませんか。

パンダはしっぽを木の枝にかけ、出かけて行ったのでした。

そこへ垂れ耳のイヌがやってきて、タヌキのしっぽを見つけました。

イヌがしっぽをお尻に当てて見ると・・・

紫色の煙がモワッとあがり、イヌのお尻にくっつきました。

イヌはキツネみたいだと喜びましたが、キツネにしては耳が変です。

そう思っていると、不思議なことに垂れ耳がはずれ、キツネの耳に早変わり。

キツネは垂れ耳を木の枝にかけ、出かけていきました。

そこへ、帽子を拾った魔女が帰ってきて、垂れ耳を見つけました。

魔女は垂れ耳を見てびっくり。

自分の靴がぺったりした靴になってしまったと思ったのです。

魔女は靴を見てかんかん。

ですが、魔女が怒っていたその時です。

闘牛士に追いかけられ、黒牛が魔女に助けを求めてきました。

さらに、泥棒に追いかけられているパンダも、魔女に助けを求めてきます。

さらにさらに、農家のおじさんに追いかけられて、キツネまで魔女のもとに。

動物たちが変身していることを知らずに、詰め寄る闘牛士と、泥棒と、農家のおじさん。

助けを求める動物たちと、靴を返してほしい魔女。

一体どうなってしまうのでしょうか?

『まじょのくつ』の素敵なところ

  • 不思議な力を持った魔女の靴
  • 魔法の力が連鎖するおもしろい繰り返し
  • 最後にわかる意外過ぎる関係性

不思議な力を持った魔女の靴

この絵本のなによりおもしろいところは、魔法の力が込められた魅惑的な魔女の靴でしょう。

一見普通の靴ですが、やっぱり魔女の身に着けている物には、魔法の力が宿っていました。

頭につけた牛の角になってしまうのです。

この時に、魔法の力が働いていることが、しっかりわかる演出になっているのがにくいところ。

頭につけたとたん、紫色の煙がモワッと上がるので、自然に魔女の魔法だと想像できます。

また、体にくっつく時は「あら、不思議!!」

体からはずれる時は「まあ、不思議!!」

という合言葉があるのもわかりやすく、不思議なことが起こっているとわかりやすく伝えてくれます。

これらの演出が、より魔法の力の魅力を引き出し、魔女の靴や魔法の力のすごさに、子どもたちを夢中にしてくれるのです。

この、不思議過ぎる魔女の靴と、そこから連鎖していく魔法の力のおもしろさが、この絵本のとても楽しく驚きに満ちたところです。

魔法の力が連鎖するおもしろい繰り返し

さらにおもしろいのはここからで、魔女の靴は発端に過ぎません。

ここから魔法の力が連鎖して、動物たちが部位の交換をしていくところが、この絵本の目玉です。

魔女の靴を角にした子牛は、黒牛になりたいと願うと、なんと白い模様がシールのようにはずれます。

これには、子どもたちもびっくり。

「模様とれちゃった!?」

「魔女の靴をつけたからかな?」

「洋服みたいに木にかけてる!」

と、予想外過ぎる展開に目を白黒させていました。

ですが、これだけでは終わりません。

その模様をタヌキがつけ、しっぽを取り、

そのしっぽをイヌがつけ、耳を取り・・・。

と、連鎖していきます。

この繰り返しが、「次はどうなるんだろう?「だれがやってくるんだろう?」という、ドキドキワクワクを生みだし、たまらなくおもしろいのです。

しかも、なんでもありな割りに、妙な納得感があるのもおもしろいところ。

確かにタヌキとパンダはフォルムが似ていたり、

イヌとキツネもパーツを変えると、変身できそう。

魔法の力を使ってはいるものの、不思議な現実味もあるのです。

この絶妙な魔法の塩梅も、子どもたちが夢中になるところなのだと思います。

ただ、ここまででも十分におもしろ過ぎるのに、この後の展開にも目が離せません。

変身して大満足だった3匹の動物が、人間に追いかけられて魔女のもとへ戻ってくるのです。

しかも、追いかけられる原因が、変身したせいだというのだから、なんとも皮肉なもの。

この変身した順に追いかけられて帰ってくるという、巻き戻しのような繰り返しのドタバタ劇も、この絵本の見どころとなっています。

このドタバタとした勢いのままに、色々と丸く収まるオチをぜひ見てみてください。

最後にわかる意外過ぎる関係性

こうして、丸く収まったドタバタ劇ですが、最後の最後でまさかの事実が発覚します。

すごく大きな衝撃ではありませんが、「え!?そうだったの!?」という、なんともすっきりするものとなっているのです。

それが、追いかけられていた動物たちと、追いかけていた人たちの関係性。

実は、それぞれ関係のある組み合わせとなっていました。

でも、よく見返してみると、動物の登場シーンのセリフなどに、伏線が散りばめられていることに気付きます。

これがなんともおもしろいところ。

最初は、気にもとめていませんでしたが、最後の場面を見た後だと印象や、そのセリフのイメージが大きく変わることでしょう。

「そういうことかー!」と、ものすごい納得感があるはずです。

この、ただのドタバタ劇では終わらない、意外な人間・動物関係と、納得感あふれる丁寧な伏線回収の驚きとおもしろさもまた、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

魔女の靴から、動物たちへ魔法の力が連鎖する繰り返しが、たまらなくおもしろい。

どんどん変化していったものが、巻き戻しのように戻ってくるスッキリ感が気持ちいい絵本です。

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