文:まいえかずお 絵:植垣歩子 出版:福音館書店
網にも橋にもなる不思議な物体。
これは一体何でしょう?
と、言いつつタイトルでネタバレしてる!?
あらすじ
とても長い、毛の束のようなものがありました。
それは長く長く続いていて、
海の中では網のように魚を絡ませ・・・
川の上では橋のように人々が渡り・・・
傾斜のあるところではすべり台にもなってしまう。
毛の中を泳ぐこともできるし・・・
被れば布団みたいにあったかい・・・
と、思っていたら、急に動き出しました。
辿っていくと、毛の束の大元にいたのはおじいさん。
なんと、ひげじいさんのヒゲだったのです。
そんなおじいさんの大事にしているものがあります。
それは、おじいさんが大事そうに持ている毛の束。
やっぱり長い毛の束を辿っていくと・・・。
『ひげじいさん』の素敵なところ
- タイトルでネタバレしてる「これなあに?」
- ヒゲとは思えないくらい楽しそうなヒゲ
- 終わりかと思いきや、まさかの続き
タイトルでネタバレしてる「これなあに?」
この絵本のとてもおもしろいところは、クイズ形式になっているのに、答えがタイトルにでかでかと出ているところでしょう。
物語の冒頭で「これなあに?」と問いかけられる子どもたち。
「え?ひげじいさんのヒゲじゃないの・・・?」
と、答えがほぼわかっている問いに困惑。
若干、どよめきが起こります。
でも、続きを見ていくと、どう考えてもおじいさんのヒゲ。
こうなってくると、この問いかけが振りのようになってきて、盛り上がり始めます。
「網じゃないけど、網じゃない」
「橋にもなるけど、橋じゃない」
と、ページをめくるたび、「ヒゲでしょ!」と、ツッコミを入れる子どもたち。
そこで、「いや、ヒゲじゃなくて、絶対橋じゃない?」などと、茶々を入れるのもおもしろい。
「いやヒゲだって!ひげじいさんって書いてあったもん!」
と、さらに盛り上がります。
この、タイトルでネタバレしつつ、素知らぬ顔で「これなあに?」と聞いてくる、まるでコントのようなおもしろさが、この絵本のとても楽しいところです。
ぜひ、子どもたち渾身の「ヒゲでしょ!!!」を聞いてみてください。
ヒゲとは思えないくらい楽しそうなヒゲ
また、完全にヒゲだけど、まるでヒゲとは思えないような使い方をされているのも、この絵本のおもしろいところです。
その使われ方は、網、橋、すべり台、泳ぐ・・・など様々。
泳ぐ時なんて、ひげの波に乗り、サーフィンまでしちゃうし、
網の時は、カジキマグロを絡ませる荒業も見せつけます。
このヒゲだとわかっているからこその、荒唐無稽な使い方がおもしろい。
「上を歩いたらフカフカして気持ちよさそう」
「でも、足に絡まって転んじゃうかも」
「転んでも痛くないんじゃない?」
など、子どもたちもヒゲだとわかっているから、それ前提でイメージが膨らみます。
この、ヒゲらしからぬ、ダイナミックなヒゲ使いも、この絵本のとてもおもしろく盛り上がるところです。
終わりかと思いきや、まさかの続き
こうして、ヒゲの色々な使い方を辿りつつ、ヒゲの根元にいるひげじいさんへたどり着いた子どもたち。
「やっぱり、ひげじいさんのヒゲじゃん!」
と、伏線回収。
みんな「めでたしめでたし」で終わるつもりでいました。
・・・が、なんと、この絵本には続きがあります。
ページをめくると、おじいさんの手に謎の毛の束が・・・。
今度は、子どもたちにもその正体がわかりません。
「え!?もう一人いるの!?」
「また、ヒゲ!?」
「でも、今度は細いよ・・・」
と、最初の「これなあに?」と違い、本気で頭を悩ませます。
この、「ひげじいさん」で終わりかと思いきや、もう一束出てくるという予想外の展開が、この絵本のとてもおもしろいところです。
子どもたちの、あっけにとられた顔は必見。
鳩が豆鉄砲くらった顔とは、この顔かもしれません。
あと、ひげじいさんの大事なものの正体にほっこりさせられるのも、この絵本のさり気なく素敵なところとなっていますよ。
二言まとめ
タイトルからヒゲだとわかっている中で聞かれる「これなあに?」に、「ヒゲでしょ!」とツッコむのが楽しすぎる。
ヒゲの終着点から、さらに出てくるもう一つの毛の束に、予想外の驚きも楽しめるヒゲの絵本です。
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