作:加藤休ミ 出版:偕成社
デリバリーぶたは、世界中どこへでも現れます。
海へも山へも過去にまで。
食べたいと願った、おいしそうな料理を持って!
あらすじ
デリバリーぶたは、どこへでも食べ物を届ける配達ブタです。
ある日、漁師が海の上で漁をしている時のこと。
広い海の上で焼いた肉が食べたい気分になりました。
すると、その時、空の上からデリバリーぶたが自転車に乗ってやってきたのです。
配達してくれたのは焼き立ての焼き鳥。
大満足した漁師は、デリバリーぶたへお礼の魚をくれました。
今度は、登山家が世界で一番高い山の頂上へ登ることに成功した時のこと。
喜びながらも、寒すぎて温かいものが食べたくなりました。
すると、その時、山の下からデリバリーぶたが、自転車に乗ってやってきたではありませんか。
配達してくれたのはアツアツのラーメン。
温かいラーメンからパワーをもらった登山家は、お礼にパラシュートをくれました。
またある時、昔々のおじいさんが畑仕事を終えて一休みしている時のこと。
汗だくになったので、冷たくて甘いものが食べたくなりました。
すると、その時、藪の中から自転車に乗ったデリバリーぶたが現れました。
配達してくれたのはアイスクリーム。
こんなもの食べたこないおじいさんは、大喜びでお礼に傘をくれました。
またまたある時、お姫様がランチパーティに世界の友だちを招いた時のこと。
みんなが喜んでくれる食事に頭を悩ませていると・・・。
一体デリバリーぶたは、どんな食事を持ってくるのでしょうか?
『デリバリーぶた』の素敵なところ
- みんな一緒に呼びたくなる「デリバリーぶた!」
- 本物そっくりでおいしそうな食べ物たち
- 「そこまで行くの!?」最後の配達先
みんな一緒に呼びたくなる「デリバリーぶた!」
この絵本のなによりおもしろいところは、どこにでも現れデリバリーしてくれるデリバリーぶたという存在でしょう。
もう、自転車に乗って、Tシャツを着ているブタというビジュアルだけでキャッチ―過ぎるのに、それが空から舞い降りてくるのだから、驚かないはずがありません。
てっきり、地面を走ってくると思っていた子どもたちは、最初の場面から海の上という困難な配達現場に「どうやって届けるんだろう?」と困惑。
「船に乗ってくるんじゃない?」という、自転車に乗っていないという意見まで出てきます。
けれど、デリバリーぶたは期待を裏切りません。
キコキコと自転車をこぎ、華麗に空から現れるのですから。
これには、子どもたちも、
「空飛べるの!?」
「魔法かな!?」
「デリバリーぶたすげー!!」
と、ビックリ仰天。
見事に度肝を抜かれていました。
その後も、雪山の急斜面を登って現れたり、藪の中から現れたりと、登場シーンへのこだわりを忘れないデリバリーぶた。
どのシーンでも、ピンチに颯爽と現れるヒーローのような登場に、気付けばデリバリーぶたがかっこよく見えてくるから不思議です・・・。
さらに、もう一つ、デリバリーぶたの登場シーンには特徴的なものがあります。
それが、登場する時の掛け声。
どのシーンも「デリバリーぶた!」の掛け声とともにデリバリーぶたが現れるのです。
これには子どもたちも、声を合わせて「デリバリーぶた!」。
つい言いたくなる魔力が詰っています。
絵本が終わったころには、
「あ!あれが食べたいと思った時には・・・?」と子どもに言うと、
「デリバリーぶた!」と、当たり前のように叫ぶまでになっていて驚きでした。
この、どこにでも颯爽と現れるデリバリーぶたの魅力と、現れる時の「デリバリーぶた!」という一緒に言いたくなってしまう掛け声の楽しさが、この絵本のとても素敵で魅力的なところです。
本物そっくりでおいしそうな食べ物たち
そんなデリバリーぶたが届けてくれるのは、その時の気持ちにぴったり合った食べ物たち。
そのどれもが本物そっくりでおいしそうなのも、この絵本の思わずよだれが出てきてしまうところです。
焼き鳥の香ばしそうな焦げ目(特に、ねぎの焦げ目が秀逸)。
醤油ラーメンの麺のモチモチ感と、スープの油感。
アイスクリームのチョコソース感に、口に入れたらとろけるのが想像できる感じ。
そのどれもが、間違いなくおいしそう。
まさに出来たて、よそいたてなのが、伝わってくるほどの臨場感で、おいしさが伝わってくるのです。
これを見てしまったら、子どもたちのお腹が空かないはずがありません。
「ラーメン食べたーい!」
「焼き鳥おいしそう~」
「わたし、チョコがいいなー!」
と、ページをめくるごとに、口の中が出てきた食べ物の味になってしまいます。
しかも、その食べ物がばっちりとはまるシチュエーションとの相乗効果で、さらにおいしく見えるからすごい。
海の上で魚ばかりの中食べるジューシーな焼き鳥。
寒い雪山で食べるアツアツのラーメン。
汗だくの中食べる冷たいアイスクリーム。
どれも、これ以上なくおいしく感じるシチュエーションと言えるでしょう。
想像しただけで、その時の感動が目に浮かぶようです。
この、本物そっくりの見た目に加え、シチュエーションまでその料理のおいしさを際立たせ、見た人のお腹を「ぐ~」と鳴らしてしまうところも、この絵本のとても素敵なところです。
「そこまで行くの!?」最後の配達先
さて、こうしてたくさんの食べ物を運んでいったデリバリーぶた。
ですが、最後の届け先は一味違う目的地でした。
これには、デリバリーぶたに慣れてきて、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってきた子どもたちもびっくり。
「えー!?そこまで行けるの!?」
「お話しできるのかな!?」
と、見事に驚かされていました。
この、最後に出てくる、まさかの配達先も、この絵本のおもしろいところ。
そこへ向かう途中で終わるので、詳しくは描かれないのですが、だからこそ想像が膨らみます。
「なにを頼んだのかな?」と目を凝らして、食べている物を見てみたり、
「お蕎麦じゃない?」と想像したり、
子どもたちの頭の中で、最後の場面が補完されていくのです。
さらににくいのが、裏表紙でちゃんと場面を完結させてくれること。
これまでの流れがわかっている子は、どんなお礼をもらったのか気になりますが、それもしっかり描かれています。
これにより、最後の配達に向かったところで絵本は終わっていますが、最後の配達先が宙ぶらりんにならず、子どもの想像で補完されつつも、「配達してお礼を貰う」という流れがしっかりと完結しているのです。
このお礼にもびっくりで、配達先にふさわしいもの。
そのスケールので大きさに改めて驚かせてくれます。
この、配達先から、そのお礼までスケールが大きすぎて驚かされる最後の場面も、この絵本のとても遊び心溢れる素敵でおもしろいところです。
二言まとめ
どんな場所にも自転車1つで颯爽と現れるデリバリーぶたを、「デリバリーぶた!」とみんなで一緒に呼びたくなる。
その本物そっくりでおいしそうな食べ物に、ついついよだれが出てしまう食べ物ファンタジー絵本です。
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