【絵本】デリバリーぶた(3歳~)

絵本

作:加藤休ミ 出版:偕成社

デリバリーぶたは、世界中どこへでも現れます。

海へも山へも過去にまで。

食べたいと願った、おいしそうな料理を持って!

あらすじ

デリバリーぶたは、どこへでも食べ物を届ける配達ブタです。

ある日、漁師が海の上で漁をしている時のこと。

広い海の上で焼いた肉が食べたい気分になりました。

すると、その時、空の上からデリバリーぶたが自転車に乗ってやってきたのです。

配達してくれたのは焼き立ての焼き鳥。

大満足した漁師は、デリバリーぶたへお礼の魚をくれました。

今度は、登山家が世界で一番高い山の頂上へ登ることに成功した時のこと。

喜びながらも、寒すぎて温かいものが食べたくなりました。

すると、その時、山の下からデリバリーぶたが、自転車に乗ってやってきたではありませんか。

配達してくれたのはアツアツのラーメン。

温かいラーメンからパワーをもらった登山家は、お礼にパラシュートをくれました。

またある時、昔々のおじいさんが畑仕事を終えて一休みしている時のこと。

汗だくになったので、冷たくて甘いものが食べたくなりました。

すると、その時、藪の中から自転車に乗ったデリバリーぶたが現れました。

配達してくれたのはアイスクリーム。

こんなもの食べたこないおじいさんは、大喜びでお礼に傘をくれました。

またまたある時、お姫様がランチパーティに世界の友だちを招いた時のこと。

みんなが喜んでくれる食事に頭を悩ませていると・・・。

一体デリバリーぶたは、どんな食事を持ってくるのでしょうか?

『デリバリーぶた』の素敵なところ

  • みんな一緒に呼びたくなる「デリバリーぶた!」
  • 本物そっくりでおいしそうな食べ物たち
  • 「そこまで行くの!?」最後の配達先

みんな一緒に呼びたくなる「デリバリーぶた!」

この絵本のなによりおもしろいところは、どこにでも現れデリバリーしてくれるデリバリーぶたという存在でしょう。

もう、自転車に乗って、Tシャツを着ているブタというビジュアルだけでキャッチ―過ぎるのに、それが空から舞い降りてくるのだから、驚かないはずがありません。

てっきり、地面を走ってくると思っていた子どもたちは、最初の場面から海の上という困難な配達現場に「どうやって届けるんだろう?」と困惑。

「船に乗ってくるんじゃない?」という、自転車に乗っていないという意見まで出てきます。

けれど、デリバリーぶたは期待を裏切りません。

キコキコと自転車をこぎ、華麗に空から現れるのですから。

これには、子どもたちも、

「空飛べるの!?」

「魔法かな!?」

「デリバリーぶたすげー!!」

と、ビックリ仰天。

見事に度肝を抜かれていました。

その後も、雪山の急斜面を登って現れたり、藪の中から現れたりと、登場シーンへのこだわりを忘れないデリバリーぶた。

どのシーンでも、ピンチに颯爽と現れるヒーローのような登場に、気付けばデリバリーぶたがかっこよく見えてくるから不思議です・・・。

さらに、もう一つ、デリバリーぶたの登場シーンには特徴的なものがあります。

それが、登場する時の掛け声。

どのシーンも「デリバリーぶた!」の掛け声とともにデリバリーぶたが現れるのです。

これには子どもたちも、声を合わせて「デリバリーぶた!」。

つい言いたくなる魔力が詰っています。

絵本が終わったころには、

「あ!あれが食べたいと思った時には・・・?」と子どもに言うと、

「デリバリーぶた!」と、当たり前のように叫ぶまでになっていて驚きでした。

この、どこにでも颯爽と現れるデリバリーぶたの魅力と、現れる時の「デリバリーぶた!」という一緒に言いたくなってしまう掛け声の楽しさが、この絵本のとても素敵で魅力的なところです。

本物そっくりでおいしそうな食べ物たち

そんなデリバリーぶたが届けてくれるのは、その時の気持ちにぴったり合った食べ物たち。

そのどれもが本物そっくりでおいしそうなのも、この絵本の思わずよだれが出てきてしまうところです。

焼き鳥の香ばしそうな焦げ目(特に、ねぎの焦げ目が秀逸)。

醤油ラーメンの麺のモチモチ感と、スープの油感。

アイスクリームのチョコソース感に、口に入れたらとろけるのが想像できる感じ。

そのどれもが、間違いなくおいしそう。

まさに出来たて、よそいたてなのが、伝わってくるほどの臨場感で、おいしさが伝わってくるのです。

これを見てしまったら、子どもたちのお腹が空かないはずがありません。

「ラーメン食べたーい!」

「焼き鳥おいしそう~」

「わたし、チョコがいいなー!」

と、ページをめくるごとに、口の中が出てきた食べ物の味になってしまいます。

しかも、その食べ物がばっちりとはまるシチュエーションとの相乗効果で、さらにおいしく見えるからすごい。

海の上で魚ばかりの中食べるジューシーな焼き鳥。

寒い雪山で食べるアツアツのラーメン。

汗だくの中食べる冷たいアイスクリーム。

どれも、これ以上なくおいしく感じるシチュエーションと言えるでしょう。

想像しただけで、その時の感動が目に浮かぶようです。

この、本物そっくりの見た目に加え、シチュエーションまでその料理のおいしさを際立たせ、見た人のお腹を「ぐ~」と鳴らしてしまうところも、この絵本のとても素敵なところです。

「そこまで行くの!?」最後の配達先

さて、こうしてたくさんの食べ物を運んでいったデリバリーぶた。

ですが、最後の届け先は一味違う目的地でした。

これには、デリバリーぶたに慣れてきて、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってきた子どもたちもびっくり。

「えー!?そこまで行けるの!?」

「お話しできるのかな!?」

と、見事に驚かされていました。

この、最後に出てくる、まさかの配達先も、この絵本のおもしろいところ。

そこへ向かう途中で終わるので、詳しくは描かれないのですが、だからこそ想像が膨らみます。

「なにを頼んだのかな?」と目を凝らして、食べている物を見てみたり、

「お蕎麦じゃない?」と想像したり、

子どもたちの頭の中で、最後の場面が補完されていくのです。

さらににくいのが、裏表紙でちゃんと場面を完結させてくれること。

これまでの流れがわかっている子は、どんなお礼をもらったのか気になりますが、それもしっかり描かれています。

これにより、最後の配達に向かったところで絵本は終わっていますが、最後の配達先が宙ぶらりんにならず、子どもの想像で補完されつつも、「配達してお礼を貰う」という流れがしっかりと完結しているのです。

このお礼にもびっくりで、配達先にふさわしいもの。

そのスケールので大きさに改めて驚かせてくれます。

この、配達先から、そのお礼までスケールが大きすぎて驚かされる最後の場面も、この絵本のとても遊び心溢れる素敵でおもしろいところです。

二言まとめ

どんな場所にも自転車1つで颯爽と現れるデリバリーぶたを、「デリバリーぶた!」とみんなで一緒に呼びたくなる。

その本物そっくりでおいしそうな食べ物に、ついついよだれが出てしまう食べ物ファンタジー絵本です。

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