【絵本】でんちゅう(5歳~)

絵本

作:野坂勇作 出版:福音館書店

誰もが見たことのある電柱。

ですが、電線が走っていること以外、結構知らないことも多いはず。

そんな電柱の秘密がすべてわかる絵本です。

あらすじ

道の端に立っている電柱。

その電柱の機能を、下から順にみていきます。

電柱についているブツブツは、張り紙をされないためのもの。

黒と黄色のシマシマは、車のライトで光り、夜でも車が電柱に気が付くようについています。

その上には、登るための足場ボルトがついていて、一番下は外してあります。

電柱の中はがらんどうなので、足場ボルトを外した穴から、ハチが巣をつくることもあります。

電柱についている札は、電柱の名前や住所を表すもの。

電気会社や電話会社により、別々の名前がついています。

見通しの悪いところでは、鏡が取り付けられ、道のあっちとこっちが見えるようになっています。

夜になると光る灯りは街灯です。

さらに上に行くと黒い箱を通って線が横に伸びています。

この線は電話の線です。

上から降りてきた線が、腕金を通って横に伸びているのは電気の線。

電気と電話の線は、そのまま家に伸びていて、これによって電話と電気が使えます。

もっと上についているバケツのようなものが変圧器。

高圧線で送られた電気を、家で使える電気に変えています。

その上を横に3本通っているのが高圧線。

そして、電柱の一番上にはもう一本線が走っていて、キャップで電柱の先端に留められています。

この線は架空地線と言い、電機は流れていません。

雷が電線に落ちるのを避けるための線なです。

一本の電柱には、下から上まで色々な働きをするものがついているのです。

『でんちゅう』の素敵なところ

  • とてもわかりやすく電柱の機能を教えてくれる
  • 縦開きで、本当に見上げているような感覚になる
  • 見たら電柱を眺めて確認したくなる

とてもわかりやすく電柱の機能を教えてくれる

この絵本のなによりおもしろいところは、電柱についているものがどんな働きをしているか、1から10まで教えてくれるところでしょう。

いつも目にしている電柱ですが、電線が通っているというくらいしか、知らない人も多いのではないでしょうか。

むしろ、当たり前にあるから興味の対象外になっている人の方が多いのかもしれません。

けれど、じっくり見てみると、その仕組みはとてもおもしろいものになっています。

言われてみれば思い出せる、ぶつぶつや、黒い箱や、バケツのような箱の存在。

その働きを聞いてみると、「なるほど」と思うことや、自分の生活に直結しているものだとわかります。

すると、一気にこれまでよりも身近なものに感じられるからおもしろい。

この、知っているはずなのに知らないものが、改めて目の前に現れるような感覚にしてくれるのが、この絵本の素敵なところ。

「だから、電気が使えるんだ!」

「電柱って電話も使えるようにしてくれてるんだね!」

「だから、雷が落ちても停電しないのか・・・」

などなど、自分の生活に電柱が入ってくるのです。

特に、変圧器の話はおもしろく、電力会社から送られた電気がそのままでは使えないことに驚きます。

実は電柱で家でも使える電気に変えると言う働きがあったこと、

そのおかげで家に電気がつくことを知ると、電柱のありがたみもひとしお。

さらに、雷が落ちても大丈夫な作りになっていることも知り、なんだかものすごく頼もしい存在に見えてくることでしょう。

縦開きで、本当に見上げているような感覚になる

そんな高くて長い電柱を見ていくこの絵本。

縦開きという、この流れにぴったりな作りとなっています。

縦にページが進んでいくので、まさに電柱を下から上へ見上げているような感覚が味わえるこの作り。

目線は同じはずなのに、まるで電柱の根元に立っている感覚になるから不思議です。

なにより、縦に見開きを使えるので、電柱の高さや長さがとてもわかりやすい。

まさに電柱の絵本にぴったりな作りと言えるでしょう。

見たら電柱を眺めて確認したくなる

さて、そんな電柱の秘密を知ったら、さっそく本物の電柱をみたくなってしまうというもの。

この、電柱に対する好奇心を掻き立ててくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

黒い箱からのびる電話線。

3本並んでいる高圧線。

一番上の架空地線。

まさにこの絵本のようになっている電柱に、感動を覚えることでしょう。

ただ、おもしろいのはここからで、機能を知ったからこその疑問も生まれてきます。

「高圧線なのに、なんで鳥は乗っても平気なんだろう?」

「あれ?絵本と違うところがある。」

「電柱もよく見たら色々あるね。」

など、知ったからこそ見えてくる新たな疑問。

こうなったらより知りたくなるのが子ども心というものです。

色々な電柱を見てみたり、

図鑑などで調べてみたり、

と、新たな知的探求に繋がっていくかもしれません。

この、絵本から実際の電柱へ、実際の電柱からさらなる疑問へと、どんどん好奇心を広げていってくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

電柱について、とてもわかりやすい語り口で、1から10まで教えてくれる。

その秘密を知ることで、電柱がこれまでよりも身近で魅力的な存在に思えてくる科学絵本です。

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