【絵本】おにぎりゆうしゃ(4歳~)

絵本

作:山﨑克己 出版:イースト・プレス

おにぎりと友だちになった男の子。

おにぎりを増やしたり大きくしたりも自由自在です。

その不思議な力を使い、大事件を解決していくお話です。

あらすじ

男の子ハルタくんは、おにぎりが大好きで、朝昼晩におやつまでおにぎりを食べていました。

そして、とうとうおにぎりと友だちになりました。

ハルタくんがおにぎりにお願いすると、数を増やしたり、大きくなったりと、おにぎりはなんでも言うことを聞いてくれます。

ハルタくんは池にいるお皿ガメとも仲良しです。

お皿ガメは甲羅がお皿のカメ。

ハルタくんは、そのお皿に、増やしたおにぎりをわけてあげていました。

そんなある日、一匹のお皿ガメが、お皿ガメの国でタコのタコベエが暴れ回って困っていると訴えてきました。

それを聞いたハルタくんはかんかん。

タコベエを懲らしめに行くことに決めました。

ハルタくんが「ご飯一粒食べたら、ぼくの体小さくなーれ」とおにぎりにお願いし、ご飯粒を一粒食べると、体がお皿ガメと同じくらいの大きさに。

お皿ガメのお皿に乗り、池の中にあるお皿ガメの国へ向かいました。

お皿ガメの国に着くと、大きなお皿が転がってきました。

それはお皿ガメの王様でした。

しかし、王様のお皿にはおにぎりがありません。

どうやらタコベエに食べられてしまったみたいです。

すると、ハルタくんは、王様のお皿に乗り、ご飯粒を食べおにぎりに変身しました。

そして、そのままタコベエの住処へ。

タコベエの住処では、タコベエがお皿ガメたちのおにぎりを次々に食べていました。

いよいよ王様の番になり、タコベエの目の前に。

タコベエがおにぎりになったハルタくんを食べようとしたその時・・・。

ハルタくんはタコベエを懲らしめることができるのでしょうか?

『おにぎりゆうしゃ』の素敵なところ

  • 突拍子のない不思議すぎる世界観
  • 魔法のようなおにぎりの力を使った大冒険
  • ドキッとするけど平和で優しい結末

突拍子のない不思議すぎる世界観

この絵本のまず驚かされるところは、その不思議すぎる世界観でしょう。

冒頭の、朝昼晩におやつまでおにぎりを食べる少年が登場したところから、

「えー!?おにぎりしか食べないの!?」

「全部おにぎりなんてやだー!」

と、一気に世界観に引き込まれます。

さらにそこから、おにぎりと友だちになり、不思議な力を使えるように。

ここで、さらにこの不思議な世界にのめりこんでいくのです。

けれど、この物語の真骨頂はここからで、不思議なのはおにぎりだけではありませんでした。

お皿ガメという、甲羅がお皿になっている、不思議な生き物まで登場するのです。

しかも、お皿ガメの国で暴れているのはタコだというではありませんか。

もう、出てくるものが不思議で突拍子のないものばかりで、

「変なカメ~w」

「タコが暴れてるのー!?」

「私は、ツナマヨが好き~」

と、驚きがとまりません。

この、なにが出てきてもおかしくない、不思議で独特すぎる世界観が、この絵本の素敵なところ。

この絵本でしか味わえないおもしろいところです。

魔法のようなおにぎりの力を使った大冒険

そんな不思議な世界観を、さらにパワーアップさせているものがあります。

それが、おにぎりの不思議な力。

おにぎりと友だちになったハルタくんは、おにぎりに頼めばなんでもできてしまいます。

おにぎりを増やすことや大きくすることだけでなく、米粒を食べ自分を小さくしたり、おにぎりに変身することまで。

その姿は、まるで魔法使いやドラえもんの道具を使っているかのよう。

この力をうまく使い困難を乗り越えていく大冒険が、心底おもしろいのです。

特に、この力のおもしろいところが、不思議な力と知恵をうまく組み合わせていくところ。

不思議な力でお皿ガメの国へ飛んでいくのではなく、あくまでお皿ガメの背中に乗れるよう小さくなるのに使ったり、

タコベエを不思議な力でなんとかするのではなく、潜入するためのおにぎりに変身したり。

タコベエと対峙する場面も、あくまでおにぎりにお願いする形で、ハルタくんの知恵とおにぎりの不思議な力という構図は崩れません。

この、万能のようで絶妙に万能ではない、ちょうどいい塩梅が、この冒険にドキドキわくわく感を与えてくれているのでしょう。

「小さくもなれるの!?」

「タコベエに食べられちゃうよ・・・」

「おなかの中で暴れる作戦じゃない!?」

など、すっかり物語の中に入り込み、おにぎりの力に驚いたり、その使い方を予想したりする子どもたちなのでした。

この、不思議だけど工夫しないとうまく使えない。

おにぎりという縛りのある不思議な力を使った大冒険のおもしろさも、この絵本のとても子どもたちを夢中にさせてくれるところです。

ドキッとするけど平和で優しい結末

さて、そんな物語の結末ですが、ももたろうのように勧善懲悪では終わりませんでした。

子どもたちが、めでたしめでたしだと思ったとき、その事件は起こります。

この場面に、ドキッとさせられるのも、この絵本のおもしろいところとなっています。

そこで起こるのは、強者と弱者の逆転現象。

子どもたちからも、

「そうだそうだ!」という声と、

「それはかわいそだよ」という声が上がります。

どちらの言い分もわかるこの展開は、いろいろと考えさせられるものがあります。

ただ、深刻にこの議題が続くわけではなく、とてもサクッとすっきりさっぱり解決するのが、この絵本の素敵なところ。

予想外の展開にドキッとはさせられますが、とても平和で優しい結末を迎えてくれます。

この、お皿ガメとタコベエの遺恨にドキッとさせられ、でも、しっかりと解決してくれる結末のすっきり感も、この絵本のとても素敵なところとなっています。

二言まとめ

おにぎりの力を使った、お皿ガメの国を救う知恵と勇気の大冒険が、おもしろすぎる。

その独特すぎる世界観が癖になる、この絵本でしか味わえない感覚を味わえる絵本です。

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