作:田島征三 出版:佼成出版社
食べることは生きること。
色々な生き物が思いっきり食べ物をがっつきます。
その見事な食べっぷりにもりもり食欲が湧いてくる絵本です。
あらすじ
ヤギがむしゃむしゃ草を食べています。
そのヤギのおっぱいを、子ヤギがごくごく飲んでいます。
春はお花見でごちそうを食べます。
でも、桜のことはあまり見てないみたいです。
鳥の巣では、雛たちが口を開けてご飯を待っています。
お母さんが虫を雛たちの口へ運びます。
人間の兄弟が、野原で野イチゴを摘んでいます。
野イチゴからは野原の味がします。
男の子がトウモロコシを丸かじり。
畑のごちそうは、あと3本いけそうです。
虫が大きなはっぱをがじがじとかじります。
小さな体とは思えないほどの食べっぷり。
川で男の子たちがスイカを食べます。
川の流れで冷やしたおいしいスイカ。
イノシシは、畑に突撃。
どっさりの野菜をいただきます。
流しそうめんは楽しく食べる。
でも、取り損ねると食べられない。
大きな魚が自分より小さな魚を食べています。
でも、食べられた魚も自分より小さな魚を食べています。
さらにまた小さな魚を・・・。
一番小さな魚は必死に逃げます。
まだまだ出てくる生き物たち。
どんな食べ物をどんな風に食べるのでしょう。
『たべるぞたべるぞ』の素敵なところ
- 食べ物をダイナミックにがっつく姿に食欲が湧く
- 一緒に言いたくなる「たべるぞたべるぞ」という合言葉
- たまに出てくる笑える変化球のアクセント
食べ物をダイナミックにがっつく姿に食欲が湧く
この絵本のなにより素敵なところは、食べ物を一生懸命食べるダイナミックな姿でしょう。
いろいろな生き物が、いろいろな場面で食べ物を食べますが、どれも食べ物に夢中です。
花見などで、みんなと楽しく食べる。
たくさんの鳥の雛が、お母さんに餌をもっとくれと、大きく口を開けてがっつく。
大きなトウモロコシにかぶりつく。
どの場面も、食べ物に真正面から向き合っているのです。
その姿からは、まさに「食べることは生きること」と、実感させてくれることでしょう。
見ていると、出てくる食べ物が「おいしそう」と思うのはもちろんですが、それを超越した「食べたい!」という欲求が湧いてきます。
この、本能的な食欲の高まりが、この絵本のすごいところ。
その力強い絵と、言葉から強い食欲が湧いてくることでしょう。
これは、実際に絵本を開いてみないと伝わらないので、ぜひ実際に見て確かめてみてください。
その力強さとダイナミックさ、そして生命力の輝きに驚くと思います。
一緒に言いたくなる「たべるぞたべるぞ」という合言葉
また、この絵本のダイナミックさをさらに印象付けている言葉があります。
それは、「たべるぞたべるぞ」という言葉。
すべてのページに使われていて、この絵本の合言葉となっています。
この言葉の求心力がものすごい。
聞くだけで、口に出すだけで、とても気持ちを高揚させ、まさに「食べるぞ!」という気持ちにさせてくれるのです。
見ていると、自然と子どもたちも「たべるぞたべるぞ」と言い始め、昼食の時など「たべるぞたべるぞ。肉を食べるぞ!」というように、しっかり使いこなしていました。
どこか「じゅげむじゅげむ」のような、声に出すおもしろさもあり、口にするだけで楽しい気分になるこの言葉。
自分の食べるものに使うだけでなく、「食べるぞ食べるぞ。おもちゃをたべるぞ!」のように、言葉遊びとしても使っていたのが印象的。
このとにかく言いたくなる「たべるぞたべるぞ」という言葉の魅力と魔力も、この絵本のとても素敵なところとなっています。
たまに出てくる笑える変化球のアクセント
さて、そんな食べることに一生懸命なこの絵本ですが、ちょくちょく笑える変化球が入ってきて、肩の力を抜いてくれます。
畑にイノシシが突撃してきて、慌てる農家の人の姿。
魚がマトリョーシカのように次々と前の魚を飲み込みながら「食べるぞ。食べられた」と続いていく姿。
流しそうめんを取り損ねて、そうめんを追いかけ走る子ども。
などなど、一生懸命だけどなんだか笑える場面の数々。
子どもたちも、
「畑のは食べちゃダメー!」
「食べられちゃってるよ!」
「流しそうめんは待ってなくちゃ!」
と、思わずツッコミを入れていました。
特に、最後の場面は大笑い。
みんなで真似しながら、楽しく肩の力を抜いて終わります。
この「食べることは生きること」という大切なことを実感させてくれつつも、絵本としてとても楽しく気軽に笑えるものとなっているのも、この絵本のとても素敵なところです。
このバランスは本当にすごい!
二言まとめ
いろいろな生き物たちが、一生懸命いろいろなものを食べる姿を、生き生きと力強く描き出している。
「たべるぞたべるぞ」という合言葉とともに、体の底から食欲が湧きあがってくる食べ物絵本です。
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