作:中垣ゆたか 出版:交通新聞社
乗り物ならなんでも参加できるレースが開催されます。
その出場車は、石でできた車から、お風呂カー、ハイパートレインまで多種多様。
次々出てくるヘンテコな乗り物たちに、目が離せない絵本です。
あらすじ
今日は、世界一のスピードレースの日。
会場には、たくさんの乗り物たちが集まっています。
このレースの特徴は、車だけでなく、乗り物ならなんでもいいところ。
インタビュアーのお姉さんは、色々な車を、運転手から紹介してもらうことにしました。
まずは赤いスーパーカー。
でも、ぜんまいで動くから止まるたびまかないといけません。
次は絶対に壊れない、石でできた車です。
ただ、重すぎて動かないので、10人がかりで押す必要があります。
今度は、とても長い車。
300キロで走れるけれど、直線しか走れないみたいです。
ほかにも、家から出たくない人たちの、ソファーカー、おフロカー、ベッドカーにトイレカー。
エンジン付きベビーカーや、ハンバーガーカー、足がはえてるカーなど、変わった乗り物がたくさん。
その中でも一番の目玉が、未来の乗り物そらとぶクルマ。
でも、飛び上がるまでに1500キロの助走が必要で、ゴールまで走っても飛ばないみたい・・・。
ほかの車も見ていると、そばの出前のお兄さんが、自転車でやってきました。
出前のついでに参加するのかと思いきや、ただの出前だったみたい。
そのスピードは、レースでも通用しそうです。
よく見ると、足元にも小さな車が。
人だけでなく、ネズミやダンゴムシなど、乗り物ならなんでも参加できるのです。
さらに進んでいき見つけたのはハイパートレイン。
時速700キロ出るようです。
この乗り物が、今回のレースの優勝でしょうか?
いったい、このレースの結果やいかに・・・?
『せかい1のスピードレース』の素敵なところ
- どれも一長一短なヘンテコな乗り物が目白押し
- 画面いっぱいに登場する多種多様な変わった乗り物
- スタートで終わる物語
どれも一長一短なヘンテコな乗り物が目白押し
この絵本のとてもおもしろいところは、なんといってもレースに出場するヘンテコな乗り物の数々でしょう。
最初のスーパーカーの登場で、まじめなレースと思いきや、まさかのゼンマイ仕掛け。
さらに出てくるのは頑丈だけど、走らない石でできた車です。
このあたりで、子どもたちもまじめなレースではないことに気付きます。
さらにさらに、速いけれど曲がれない、世界一長い車が登場します。
どれもすごいけれど、大きすぎる弱点に、子どもたちも、
「おもちゃの車なのかな?」
「歩いたほうが速そう!」
「壁にぶつかっちゃうじゃん!」
と、呆れつつも大笑い。
そこからはもう、タイヤさえついていればいいという勢いで、どんどんヘンテコさが加速していく乗り物たち。
おフロカーにトイレカーと、子どもの心をつかんで離さないおもしろ乗り物が次々と出てきます。
もうこうなると、乗り物が出てくるたび大爆笑。
本当のレース会場のような盛り上がりとにぎやかさが場を包み込むことでしょう。
この、一長一短すぎるヘンテコな乗り物たちが次々と出てくるおもしろさが、この絵本のとてもおもしろいところです。
画面いっぱいに登場する多種多様な変わった乗り物
こうして、インタビュアーに紹介される色々な乗り物ですが、これらはほんの一部です。
絵本の途中途中で、乗り物がひしめき合う会場の様子が映されるのですが、そこで画面いっぱいに広がる乗り物がすごい。
画面の端から端まで、アメリカー、ベンチシートカー、コインロッカー、ラーメンカー、そのままころがるカー・・・
などなど、完全に一発屋な乗り物たちがひしめき合っているのです。
これには子どもたちも、
「目が回っちゃいそう!」
「イヌは乗り物じゃなーい!」
「ダジャレじゃん!」
など、ツッコミや乗り心地の想像が止まりませんし、その物量に追いつきません。
例えるなら『からすのぱんやさん』で、画面いっぱいに並べられたパンを見ているような楽しさでしょうか。
名前が紹介されている乗り物以外にも、よく見るとまだまだたくさんのヘンテコな乗り物を見つけることができ、ページを眺めているだけでもおもいしろい。
この、画面いっぱいに出てくるヘンテコな車たちを見るおもしろさと、それに対して大笑いしながらあーだこーだ言うわちゃわちゃとした空気感も、この絵本ならではのおもしろいところです。
スタートで終わる物語
さて、色々な乗り物たちが紹介されるこの絵本ですが、レースの様子は描かれずに終わります。
この絵本の最後は、レースのスタートコールとなっているのです。
色々な乗り物が紹介されますが、どの乗り物が1位になるかはわからない結末。
この結末に、想像力が刺激されます。
「どの乗り物が1位なのかな?」
「ゴールまで見たいよ!」
「あしがはえてるカーが、階段も登れるから速いんじゃない?」
などなど、まだ見ぬレースを自然と想像してしまうのです。
それと同時に、どんな乗り物なら1位になれるかという想像も膨らみます。
読んだ後に、「自分の世界一の乗り物」を想像してみるのも楽しいでしょう。
ゴールを描かないことで、どんなにヘンテコな乗り物にも1位の可能性を想像できるのです。
この、スタートで終わることにより、レースの内容や結果へと想像が膨らみ、自分だけのレースを思い描ける自由さも、この絵本のとても素敵なところです。
どんなコースなのかを想像したり、描いてみるのもとてもおもしろいですよ。
二言まとめ
次々出てくる、たくさんのヘンテコな乗り物たちに、笑いとツッコミが止まらない。
物語だけでなく、画面いっぱいに広がる乗り物たちを、見ているだけでとても楽しい、乗り物絵本です。
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