作・絵:はせがわかこ 出版:金の星社
お父さん、お母さんと100匹の子どもたち。
そんな、ネズミの大家族全員で、イチゴ取りに出かけます。
でも、イチゴ畑には恐ろしいネコが・・・。
あらすじ
大きな木の根元に扉があり、その中にのねずみのチューチュさん一家が住んでいました。
父さんネズミのトト・チューチュ。
母さんネズミのカカ・チューチュ。
そして、100匹の子どもたち。
全員で102匹の家族です。
そんな、チューチュさん一家の朝は大忙し。
朝ごはんでは、100と2杯のお茶をコップに注ぎ、100と2枚のパンにジャムを塗らなけらばいけないのです。
ちょうどその日、102枚目のパンにジャムを塗ると、ジャムの瓶がからっぽになってしまいました。
朝ごはんを食べながら、カカ母さんとトト父さんが、ジャムのためのイチゴをおばあさんの畑へ取りに行く話をしていると、それを聞いた子どもたちも、一緒に行くと言い出しました。
けれど、子どもたちは、まだ家から出たことがありません。
悩んだ末に、トト父さんとカカ母さんは、一緒に連れていくことにしたのでした。
いよいよ出発に時間になり、トト父さんは子ネズミたちを並ばせながら、ネコについて注意をします。
おばあさんの畑には、カブというネコがおり、見つかると食べられてしまうのです。
と、その時、モグラが顔を出しました。
子どもたちは、これがカブかと大慌て。
トト父さんに、モグラだと教えてもらい一安心です。
気を取り直して進んでいくと、曲がり角の先で、カブが寝ていました。
チューチュさんたちは、カブを起こさないよう、静かにそこを通り過ぎていきました。
なんとか、イチゴ畑につき、たくさんのイチゴにみんなおおはしゃぎです。
1匹1つのイチゴを持って、そろそろ帰ろうとしていると、あることに気が付きました。
子ネズミが1匹いなくなっていたのです。
トト父さんと、カカ母さんは、子ネズミたちをイチゴの葉に隠すと、大急ぎで子ネズミを探しに行きました。
色々な野菜を探し回るトト父さんと、カカ母さん。
そして、キャベツの葉の隙間に、やっと見つけることができました。
ところが、安心したのも束の間、帰り道にカブと出会ってしまったから、さあ大変。
102匹の大所帯では逃げることもできません。
果たして、チューチュさん一家は無事にイチゴを持って帰ることができるのでしょうか・・・?
『102ひきのねずみ』の素敵なところ
- 言葉的にも視覚的にもおもしろい102という大きな数字
- 初めてのイチゴ取りという大冒険
- カブの特性を活かした見事な作戦
言葉的にも視覚的にもおもしろい102という大きな数字
この絵本のなによりおもしろいところは、102匹というとてもインパクトの大きな数字でしょう。
子どもにとって100は、信じられないくらい大きな数字。
102匹というタイトルを見ただけで、
「100!?」
「そんなにいるの!」
「全員描かれてるのかな?」
と、興味津々。
あっという間に、絵本に釘付けになってしまいます。
ただ、この絵本のおもしろいところは102という数字だけではありません。
その多さが、視覚的にとてもわかりやすく描かれているのも、より102匹のインパクトを際立たせています。
まず、表紙をめくったところにある人物紹介。表紙裏と裏表紙裏の両方に合わせて102匹全員の、姿と名前が紹介されているのです。
この時点で、
「すごい、いっぱいいる!」
「こんなにたくさん、おうちに入るのかな?」
と、大盛り上がり。
さらにおもしろいのが、朝の支度の場面。
お茶や、ジャムパンを用意するのですが、トト父さんの大きなものが1つ、カカ母さんの中くらいのものが1つ、そして子ども用の小さなものが100個、すべて描かれているのです。
その数えきれないほどのカップや、パンを見るとその多さが身にしみてわかります。
子どもたちも、
「えー!?すごい!」
「こんなにたくさん!?」
と、改めて102という数の大きさと大変さを実感しているようでした。
この、102というインパクトのある数字を、視覚的にもしっかり102個描くことで、よりその多さが実感でき、102という数字を全力で驚き楽しめるところが、この絵本のとてもおもしろいところです。
初めてのイチゴ取りという大冒険
そんな102匹が、イチゴ取りに行くというのだから、ワクワクドキドキしないわけがありません。
しかも、子どもたちは家から出るのが初めてというのだからなおさらです。
外で出会うものがすべて未知な子どもたちの、新鮮な反応は、物語をとても盛り上げてくれます。
特に、ネコを見たことがない子どもたちの、ネコのカブに関するやり取りはおもしろく、モグラをネコと勘違いしたり、ネコと知らずに近づいたりする姿には、笑わせられたり、ドキドキさせられたりと大忙し。
本当に初めて見るのだということを強く感じさせてくれます。
その中でも、やっぱり大きな見どころは、カブが出てくる場面。
寝ているカブの横を通り過ぎる場面では、子どもたちにも緊張が走り声をひそめます。
迷子を捜す時にも、「カブ起きないかな・・・?」と、カブの影がちらつきます。
この、まるで「オオカミには気をつけなさい」という昔話のような、カブという恐ろしい存在がいる中でのイチゴ取りの大冒険もまた、この絵本のとてもドキドキワクワクさせられる楽しいところとなっています。
カブの特性を活かした見事な作戦
さて、そんな物語の最後に登場するのはもちろんカブ。
迷子が見つかった安心感も束の間。
子どもたちに、起きたカブが迫ります。
この時の緊張感は相当なもので、
「カブが起きちゃった!」
「どうしよう~」
「食べられちゃうよ!」
と、一気に体が固くなります。
そんな中、トト父さんが子どもたちに伝えた作戦は、カブの特性をよく活かしたものでした。
この作戦中の緊張感と臨場感に、一瞬息が止まってしまうことでしょう。
同時に、102匹という、逃げることも戦うこともできない大所帯だからこその、とても現実的な作戦でもありました。
この、現実味がネコとネズミという、絶対的な力関係をより感じさせ、緊張感や臨場感を高めているのだと思います。
ネズミにとって圧倒的なネコという存在に対する、頭脳を駆使した見事なこの作戦も、息ができないほどにハラハラドキドキさせられる、この絵本の大きな見どころの1つです。
二言まとめ
102という大きな数字を視覚的にもとてもわかりやすく描くことで、102の持つすごさや驚きを心から実感させてくれる。
そんな102匹でのイチゴ取りという大冒険に、ドキドキワクワクさせられる大家族絵本です。
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