【絵本】しごとをみつけたサンタさん(5歳~)

絵本

作:スティーブン・クレンスキー 絵:S.D.シンドラー 訳:こみやゆう 出版:好学社

サンタさんの若いころを知っていますか?

実は、色々な仕事を転々としていたんです。

そして、今の仕事にもその経験が活かされていたのです。

あらすじ

まだ、サンタさんが若かったころ。

サンタさんは、仕事を探していました。

最初に見つけた仕事は煙突掃除。

サンタさんは、煙突をすいすい降りていきました。

けれど、あまりに煙突掃除がうまいので、サンタさんの作業着はいつもきれい。

きれいすぎて、仕事が終わっても本当に掃除をしたと信じてもらえなかったのです。

こうして、サンタさんは煙突掃除の仕事をやめることになりました。

次に見つけた仕事は、郵便配達。

街中の人に荷物を届けるのはとても楽しいものでした。

ただ、道路が混みあっていて全然車が進みません。

そこで、サンタさんは、道路がすいている真夜中に荷物を届けることを考え付きました。

けれど、真夜中に荷物を届けられる方はたまったものではありません。

郵便局にもクレームが届き、サンタさんはこの仕事もやめることになりました。

真夜中に働く楽しみを覚えたサンタさんは、夜遅くまで開いているレストランで働き始めました。

料理を作るのが楽しくて、時々頼まれてもいないものまでサービスでつけたりもしていました。

けれど、サンタさんは料理を出す前に、つい味見をしてしまい、それが積み重なって段々と太ってしまいました。

それを気にして、サンタさんはこの仕事もやめることにしました。

太った体を元に戻すため、今度は動物園で働き始めました。

サンタさんの動物の世話はとても上手で、動物たちみんなに気に入られました。

けれど、その中でも特にトナカイたちと仲良くなったので、ほかの動物たちがヤキモチを焼き始めたから大変です。

それを見た園長に、動物園から追い出されてしまいました。

しかし、悪いことばかりではありません。

仲良くなったトナカイたちが、サンタさんの後を追ってきたのです。

こうして、サンタさんとトナカイたちは、一緒にサーカス団に入り、人間大砲を披露し始めました。

飛ばすのはトナカイたちで、飛ぶのは赤い服を着たサンタさんです。

これが楽しすぎて、飛ぶたびに「ホッホッホッ!」と笑うサンタさん。

けれど、団長から、それでは見ているほうがハラハラドキドキしないから、怖がっているふりをしろと言われてしましたが、どうしても笑ってしまいます。

そのせいで、サーカス団もクビになってしまいました。

サンタさんが荷物をまとめていると、そこへ小人たちがサインを求めやってきました。

サンタさんは小人たちにクビになった話をしました。

すると、小人たちは、サンタさんを自分たちの家へ招待してくれたのです。

小人たちの家は、ずっと寒いところにあり、家の中にはおもちゃがところせましと置かれていました。

驚いたサンタさんが話を聞くと、小人たちはおもちゃ作りが好きで、作ってはいるが使い道は考えていないと言います。

そこで、サンタさんは思いつきました。

このおもちゃを世界中の子どもへ配ることを。

小人たちは、サンタさんにどんなにたくさんのおもちゃでも入る袋と、赤いそりを作ってくれました。

そして、そのそりを引くのは力持ちのシロクマです。

果たして、このプロジェクトはうまくいくのでしょうか?

サンタさんは自分にぴったりの仕事が見つかるのでしょうか・・・?

『しごとをみつけたサンタさん』の素敵なところ

  • サンタさんがまだサンタクロースじゃなかったころ
  • それぞれの仕事のピースが集まってサンタクロースになるおもしろさ
  • 「ところがひとつ問題がありました」の興味を引き付ける繰り返し

サンタさんがまだサンタクロースじゃなかったころ

この絵本のなにより魅力的なところは、サンタさんの昔話を知ることができるところでしょう。

クリスマスに、子どもたちの疑問の中でも多いものに、

「どうやってサンタさんになったの?」

というものがあります。

この絵本はそんな疑問に真正面から、詳しく、おもしろく答えてくれるのです。

物語が始まった直後に現れる、誰も見たことのない、サンタさんが若者だったころの姿に、まずはびっくり。

「普通のお兄さんみたい!」

「太ってないよ!」

「ひげも生えてない!」

と、あまりに普通な青年っぷりに、驚きの声が上がります。

こんなにも興味がそそられる始まりからの、知られざるサンタさんの仕事遍歴が展開されていくのだから気にならないはずがありません。

新しい仕事に就くたびに、食い入るように、笑いあり驚きありなサンタさんの仕事ぶりや、その悩みを見ていました。

この、サンタクロースになる前のサンタさんを、若いころからとても詳しく、現在に至るまで楽しくわかりやすく描き出しているのが、この絵本のとてもおもしろく子どもたちの興味を釘付けにしてしまうところです。

それぞれの仕事のピースが集まってサンタクロースになるおもしろさ

そんなサンタさんの仕事遍歴ですが、これが見事に現在のサンタさんへと繋がっているのも、この絵本のとてもとてもおもしろいところとなっています。

サンタさんは、たくさんの仕事をしますが、

煙突掃除→煙突を通ってのプレゼント配り

郵便配達→真夜中に荷物を配る

レストラン→サービス精神と太った体

動物園→トナカイとの絆

などなど、そのどれもがサンタさんの仕事へと繋がっているのです。

この少しずつ「サンタクロース」へのピースがそろっていくのが、まるでパズルやミステリー小説のようにおもしろい。

最初は、ただサンタさんの昔の仕事としてだけ見ているのですが、

「味見してて太ったんだ!」

「煙突掃除も、サンタさんの仕事に役立ってる!」

「トナカイと動物園で出会ったんだね!」

と、段々とサンタさんの仕事に繋がっているとわかってくると、前半の仕事の意味合いも改めてわかってきます。

そして、それぞれの仕事の要素がきれいに収まりサンタクロースという仕事になることに、感動すら覚えるほどのすっきり感と美しさを感じることでしょう。

この、若いころの様々な仕事での経験が、見事にサンタクロースという結晶になり、サンタさんにぴったりの仕事として花開くのが、この絵本のとてもとてもおもしろく感動させられるところです。

「ところがひとつ問題がありました」の興味を引き付ける繰り返し

さて、こうして仕事が転々としていく、サンタさんの歴史ですが、その転機を表す決まり文句があるのです。

これが、子どもたちの注目を集めるのにも、風向きが変わったことを知らせよりドキドキ感を高めるのにも効果的で、物語をよりおもしろくしてくれます。

その決まり文句とは、

「ところがひとつ問題がありました」。

この決まり文句は大体、サンタさんが仕事に就き、その仕事を気に入って楽しくしている場面の後に出てきます。

そして、なにか問題があり仕事をやめてしまうのです。

これが、すべての仕事の場面で繰り返されます。

決まり文句の前に、その仕事がまるでサンタさんの天職のように描かれるのもあり、決まり文句の後のがっかり感がすごい。

サンタさんが楽しそうに仕事をする姿を見て、盛り上がりあれこれ話す子どもたちですが、

「ところがひとつ問題がありました」

という、言葉を聞いた瞬間、

「えー、なになに?」

「またやめちゃうのかな?」

「なにがあったんだろう?」

と、みんなページに注目。

その注目度と切り替えの早さが、どれだけこの言葉と物語が大きな魔力を持つのかを証明していました。

また、サンタさんの仕事だけじゃなく、サンタクロースの仕事を始めた時にも、この言葉は健在で、サンタクロースの仕事もまた一筋縄ではいかないおもしろさを伝えてくれるのも、おもしろいところ。

ちゃんと、サンタクロースの仕事を始めてから、軌道に乗るまでもこの言葉とともに描かれるのです。

この、順調な流れからの「ところがひとつ問題がありました」という、どんな問題があったのか注目せずにはいられない、破壊力抜群な決まり文句の繰り返しも、この絵本のとてもおもしろく気になってしまうところです。

二言まとめ

「どうやってサンタさんになったの?」という質問に、サンタさんの昔話を通して、丁寧に、詳しく、おもしろく答えてくれる。

サンタクロースになるまでの、紆余曲折とその集大成っぷりが、パズルのようでおもしろい、サンタクロース絵本です。

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