作:ニック・ブランド 訳:あべ弘士 出版:クレヨンハウス
雨宿りのために洞窟に入った動物たち。
しかし、そこは機嫌の悪いヒグマの巣穴。
そこで、動物たちはある作戦を立てました・・・。
あらすじ
その日、ジャングルは雨降りでした。
大雨の中、シマウマ、ライオン、ヘラジカ、ヒツジが、ある洞穴にやってきました。
そこはヒグマの巣穴で、さらにそのヒグマの機嫌が悪いということを、動物たちは知りませんでした。
トランプを始める動物たちを見て、ヒグマは大きな声をあげ、動物たちを追い出したのでした。
追い出された動物たちは、あることを思いつきました。
ヒグマの機嫌を直せばいいのではないか?
そこで、動物たちは、それぞれヒグマをご機嫌にする方法を考えました。
そして、ライオンはたてがみをプレゼントするためにわらを持って、
シマウマはしま模様にしてあげるため、泥の入った缶を持って、
ヘラジカは角をプレゼントするため、大きな枝を2本担いで、
また洞穴へと入っていきました。
ヒツジは、その様子を入り口から見守っていました。
しばらくすると、動物たちが洞穴から飛び出してきました。
その後ろにいたのは、飾りつけをされたクマ。
動物たちの作戦は、さらに機嫌を損ねてしまったようです。
クマはわざと大きく足を踏み鳴らし、近くにいたヒツジを「静かに眠りたいだけなんだ!」と怒鳴りつけた。
それをきいたヒツジは、あることを思いついた。
そして、自分の毛をバリカンで狩り始めると・・・。
いったいヒツジはなにを思いついたのでしょう?
クマの機嫌は直るのでしょうか?
『ぷんぷんヒグマ』の素敵なところ
- 最初から怒っているとわかっているハラハラ感
- 失敗が目に見えている解決策
- ヒツジの活躍による平和な結末
最初から怒っているとわかっているハラハラ感
この絵本のとてもおもしろいところは、ヒグマが怒っていると最初からわかっているところでしょう。
タイトルからもわかるし、文章の中でもよくわかります。
だって、「あいつらは気付いていなかった。この洞穴の奥に俺がいるってことに。しかもその時の俺はものすごーく機嫌が悪く、ぷんぷんしていた。」と本人が言っているのですから。
それに気づかず、楽しそうにトランプをする動物たち。
こんな状況ハラハラドキドキしないはずがありません。
「そこにはクマいるよ!」
「怒ってるから食べられちゃうよ!」
「早く出たほうがいいのに・・・」
と、和やかな動物と正反対に、子どもたちは気が気ではありません。
この、クマが怒っているのを自分たちだけが知っているという、ハラハラドキドキ感が、この絵本のとてもおもしろいところです。
そして、そこからのクマの登場。
これが『3びきのやぎのがらがらどん』のトロルばりの迫力で出てきてくれるからたまりません。
最初からずっと「くるぞ・・・くるぞ・・・」というハラハラドキドキからの、「やっぱりきたー!」という期待を裏切らないクマの怒りっぷりをぜひお楽しみください。
失敗が目に見えている解決策
そんな、怒り心頭のクマに対して、大慌てで逃げる動物たち。
ですが、ここで解決策を思いつきます。
それが、クマの機嫌を直すこと。
機嫌がよくなれば、洞穴に入れてくれるという理屈です。
これには、「なるほど!」と子どもたちも目からウロコ。
怒っているクマやオオカミから逃げる発想はあっても、一緒にいる方法を探すというのはあまり思いつかないものです。
ただ、その具体的な方法がまずかった・・・。
子どもたちから見ても、完全に見当違いとしか思えないシマ模様や、たてがみや、角をプレゼントするという方法。
この、失敗する未来しか見えない解決策を意気揚々と試しに行くところも、この絵本のとてもおもしろいところです。
自信たっぷりに洞窟に入る動物たち。
そして、しばらくの間・・・
からの、怒って出てくるクマと逃げる動物たち。
完全にコントの様式美といってもいいでしょう。
さらに、クマがたてがみと角とシマ模様という珍妙な姿で出てくるのだから、笑いをこらえられるはずがありません。
「やっぱりー!」
「そりゃ怒るよ・・・」
「変な格好してる!」
と、呆れつつも大笑い。
振りの作り方、間の取り方、オチのつけ方が完璧すぎます・・・。
ヒツジの活躍による平和な結末
さて、こうして見事に追い出された動物たちですが、そのおかげでクマがなぜ怒っているのかを知ることになります。
その理由はゆっくりと眠りたいから。
やはり、動物たちの方向性は完全に間違っていたようです。
ここでおもしろいのが、これまでただ傍観しているだけだったヒツジが、問題を解決してくれるというところ。
眠りのスペシャリストであるヒツジが、一肌脱いでくれるのです。
そして、その解決法が、シンプルかつ見事なものであるところ。
「確かによく眠れそう!」
「さすがヒツジさんだね!」
「気持ちよさそう~」
と、この解決法にはみんな納得。
機嫌を直すにしても、その原因を知ることは大事です。
この、一番おとなしかったヒツジが、これ以上ない解決法で見事にクマの機嫌を直してしまうところも、この絵本のとても素敵なところです。
ぜひ、機嫌が直った後の安らかなクマの顔と、表紙のクマの顔を見比べてみてくださいね。
二言まとめ
クマが怒っていると最初からわかっているからこその、ハラハラドキドキ感がおもしろい。
期待を裏切らない大迫力の怒りっぷりと、機嫌が直った後の安らかさな姿とのギャップもまたおもしろい絵本です。
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