【絵本】しずかにあみものさせとくれー!(4歳~)

絵本

作:ベラ・ブロスゴル 訳:おびかゆうこ 出版:ほるぷ出版

編み物をしたいおばあさん。

でも、孫たちが静かに編み物をさせてくれません。

そこで旅に出ることに。

森、雪山、果ては宇宙まで!?

あらすじ

ある村に、おばあさんが住んでいました。

寒くなる前に編み物をしなければなりませんが、家には孫がたくさんいて、全然編み物がはかどりません。

そこで、おばあさんは、大きな袋に荷物を積めると、村を出て行ってしまいました。

静かに編み物ができる場所を探しに。

おばあさんは森に入り、ちょうどいい場所を見つけたので焚火を起こし、編み物を始めました。

ところが、クマの親子がやってきて、おばあさんに襲いかかろうとしたではありませんか。

すると、おばあさんはクマへ向かって、

「静かに編み物させとくれー!」

と、一喝。

別の場所を探しに森から出ていったのでした。

おばあさんは雪山を登っていきました。

しばらく行くと洞穴があり、おばあさんはそこで編み物を始めました。

ところが、今度はやぎに見つかってしまったから大変。

ヤギは毛糸をおみやげだと勘違いし、勝手に食べ始めたのです。

おばあさんはヤギにも、

「静かに編み物させとくれー!」

と言い、山のさらに上へと登っていきました。

山の頂上へついたおばあさんは、さらに満月へと歩いていきます。

月の上にはちょうどイスの形をした岩があり、おばあさんはそこに座り編み物を始めました。

ところが、そこへ緑色の体をした変なのが集まってきたからたまりません。

人間の女の人珍しいようで、謎の機械をかざし、おばあさんのことを調べようとしています。

その発信音のうるさいこと。

おばあさんは変なのを、

「静かに編み物させとくれー!」

と怒鳴りつけると、宇宙の穴の中へと逃げ込んだのでした。

宇宙の穴の中は、まっくらでとても静かです。

ここでなら静かに編み物ができるのでしょうか?

そして、こんなところまで来てしまって、おばあさんは大丈夫なのでしょうか?

『しずかにあみものさせとくれー!』の素敵なところ

  • 聞くのも言うのも楽しい「しずかにあみものさせとくれー!」
  • 宇宙まで行ってしまうおばあさんの旅
  • 確かに静かな場所だけど・・・

聞くのも言うのも楽しい「しずかにあみものさせとくれー!」

この絵本にはなによりも印象的な言葉があります。

それが、「静かに編み物させとくれー!」という決まり文句。

タイトルからすでにインパクト抜群で、この絵本の楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

もちろん、物語の中でも、要所要所で出てくるこの言葉。

おばあさんがこの言葉を大声で言うと、次の場所へと移動することもあり、子どもたちの耳にも印象にも残りやすいものとなっています。

なにより、おばあさんの怒った表情と相まった、この言葉そのものの持つ存在感がものすごい。

この文章を見ただけで、おばあさんになりきり、全力で叫びたくなることでしょう。

それを聞いて、大笑いするのも楽しいし、一緒に言うのもおもしろい。

子どもたちだけで絵本を見る子は、字が読めなくてもこのフレーズだけは、

「しずかにあみものさせとくれー!」

と、しっかりはっきり読んでいました。

友だち同士タイミングを合わせて楽しそうに。

この、インパクト抜群で、聞いても言っても楽しい全力の叫びの繰り返しが、この絵本のとてもおもしろいところです。

宇宙まで行ってしまうおばあさんの旅

そんな、静かに編み物ができる場所を探して旅をするおばあさん。

この旅路が、完璧に予想の斜め上の斜め上を行くのも、この絵本のおもしろいところとなっています。

村を出て、森に入り、山に登り・・・と、順当な旅路を進むおばあさん。

ここまでは、おもしろいけれどある程度予想通りです。

・・・が、ここから毛色が変わってきます。

山の頂上まで来たおばあさんは、当たり前のようにそのまま月へと歩いていくのです。

あんまり自然に月へ歩いていくので、子どもたちも一瞬普通に受け入れますが、間をおいてから、

「えー!?そんなところまで!?」

「おばあさん月に行っちゃったよ!?」

「空歩けるの!?」

と、びっくり仰天。

よくよく考えたら、すごいことをしていると気付きます。

そこからさらに、宇宙人らしき変なのが出てきたり、宇宙の穴へと入ったりと、急にSF要素強めに。

村を出発した時点では、まさかSFに着地するとは思いもしない、この奇想天外すぎる物語の流れも、この絵本のとても驚かされるおもしろいところです。

それと、宇宙人らしきものを「変なの」、ブラックホールらしきものを「宇宙の穴」と、ふんわりしたネーミングセンスも素敵ですよね。

これにより、子どもたちの間で、

「宇宙人かな?」

「ブラックホールじゃない?」

「いや、別の穴かも」

と、いろんな想像が膨らみ、より奇想天外なおばあさんの旅を楽しいものにしてくれていると感じるのです。

確かに静かな場所だけど・・・

さて、そんなおばあさんの旅も、ついに終着点を迎えます。

それが宇宙に開いた穴の中。

そこはまっくらでとても静かです。

ここでは、ついに静かに編み物ができました。

でも、編み物をしただけでは物語は終わりません。

そうなった時、編み物をするには最適だった宇宙の穴は、まったく別の顔を見せてきます。

まっくらで静かな場所の、いいところと悪いところ、状況や求めていることによって、それが大きく変わるというおもしろさが感じられるのです。

ただ、そこはこのたくましいおばあさん。

特に深刻な感じになることはなく、これまでの勢いを活かした、この絵本らしい結末となっているのでご安心ください。

最後の場面でも、このおばあさんらしい、パワフルな展開で楽しさと驚きを感じられること間違いなしですよ。

もちろん、SF感も。

この、静かに編み物ができる場所の見せる2つの顔のおもしろさと、そこへのおばあさんらしいパワフルな解決策の楽しさと驚きも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

「静かに編み物させとくれー!」という叫び文句が、言うのも聞くのもおもしろくて気持ちいい。

まさかのSF展開に度肝を抜かれる、最後まで驚かされっぱなしな絵本です。

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