文:原京子 絵:はたこうしろう 出版:ポプラ社
少し早く冬眠から目覚めた双子のクマ。
外には雪が積もっていますが、待ちきれずに春を探しに出かけます。
そして、ついに出会ったのは・・・春?
あらすじ
あるところに、双子の子グマ、マークとマータが住んでいました。
2人は初めての冬眠から目覚めたばかり。
窓から外を見てみると、そこは灰色の空の下、枯れ木や枯れ草が風に震えていました。
外は寒く、まだまだ冬といった様子です。
けれど、寒がる2人を見て、お父さんはもうすぐ春がやってくるのだと言います。
春を知らない子グマたちは、お父さんに春のことを聞きました。
お父さんは春が来ると、緑が芽吹き、色とりどりの花が咲き、いい匂いがするから、春の匂いはおいしいのだと教えてくれました。
お母さんもそばに来て、春が来れば森の仲間達も外に出てきて、2人にも友だちができると教えてくれました。
2人は、春が見たくてたまらなくなりました。
翌朝、2人が外を見てみると、日が差し、風もやんでいました。
2人は春が来ているのかもと思い、外へ春を探しに行くことに。
2人は雪の積もる森を、元気に駆けていきました。
森を駆け回りながら、雪や小川の水を触ってみると、とても冷たく春は感じません。
落ち葉や石の下を見てみてもなにもいません。
なかなか春は見つからず、大声で春を呼んでいると、地面から声が聞こえてきました。
その声の主はカエル。
でも、カエルを見たことがない2人は、カエルに春なのかと聞きました。
カエルは名乗ると、外の寒さに驚き、穴の中へ引っ込んでしまいました。
2人は気を取り直し、また春を探しに行きました。
木に登ったり、穴を掘って春を探していると、木の穴から双子のヤマネが顔を出しました。
子グマたちは、ヤマネに春なのかと聞いてみます。
けれど、ヤマネたちも名前を教えると、やっぱりまだ寒いと穴の中に引っ込んでしまったのでした。
2人は、春を探しながら小高い丘にたどり着きました。
その間に春はまったく見つかっていません。
がっかりする2人。
ですが、マークがあるものを見つけ、急に立ち上がりました。
それは、道の向こうから歩いてくる女の子。
黄色いリボンに、緑の服、赤いマフラーをしています。
それを見た2人は、緑が葉っぱ、赤が花、リボンがチョウチョだと考え、ついに春と出会えたと思い丘を駆け下りました。
女の子の下へ行くと、ふんわり甘くていい匂い。
これもお父さんの言ったとおりです。
2人を見ると、女の子はにこやかにあいさつをしてくれました。
2人はさっそく、女の子へ春なのかを聞いてみます。
果たして、この女の子が2人の探していた春なのでしょうか?

おしまい!
『はるにあえたよ』の素敵なところ
- 春を知らない子グマたちの驚きに溢れた春探し
- 春の特徴にぴったりな女の子との出会い
- 春の訪れに合わせた色づいていく絵本
春を知らない子グマたちの驚きに溢れた春探し
この絵本のおもしろいところは、春を知らない子グマたちが、春を探して森中を駆け巡るところでしょう。
春について両親に教えてもらいますが、いまいちわかっていない子グマたち。
春という実態があるのだと勘違いしながら探しに行きます。
もちろん、見ている子どもたちは春が季節だと知っているので、ここにおもしろいギャップが生まれます。
木の芽を探したり、花を探すのは春探しとして、子どもたちの春探しと違いはありませんが、節々で子グマたちの春に対する勘違いを感じられるのがおもしろい。
それがよく表れているのが、カエルやヤマネに「春ですか?」と聞く場面。
春への勘違いだけじゃなく、様々なことを知らない幼いクマであることがよく伝わってくるのです。
だからこそ、勘違いを笑うのではなく、温かい眼差しで見守ることができるのでしょう。
この、小さなクマたちが、無邪気に一生懸命春を探す様子が、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。
そして、両親の話を聞いたり、子グマたちの姿から、春の具体的な探し方がわかるところも。
きっと、子グマたちが見つけられなかった、草の芽や緑の葉っぱを見つけたとき、これまでよりも嬉しく感じることと思いますよ。
春の特徴にぴったりな女の子との出会い
こうして、春を探し続けていた子グマたちですが、なかなか春は見つかりません。
そんなときに出会ったのが、春の特徴にぴったりな女の子だったのです。
服の色に、リボンのチョウチョ、さらにいい匂いまでするとなれば、これは春で間違いありません。
ここでおもしろいのが、これまでの流れで、子どもたちはまた勘違いだと思っていますが、そうとも言い切れないところ。
それというのも、この女の子は春だと名乗りはしませんが、はっきりと否定もしないのです。
しかも、女の子の立っている場所を境目に、女の子の後ろには春の景色が広がっています。
これは、女の子が春になった場所から来たからなのか?
それとも、女の子が歩いてきたから春がやってきたのか?
そんなふうに、どちらの受け取り方もできるものとなっています。
この、子グマたちと女の子の、ただの女の子なのか、本当に春なのか、どちらとも取れる出会いややり取りも、この絵本のとてもおもしろいところです。
ぜひ、実際にこの素敵な出会いを見て、不思議な女の子の正体に思いを馳せてみてください。
春の訪れに合わせた色づいていく絵本
さて、女の子との出会いをきっかけに春が訪れるこの絵本。
実は、大きな特徴というかおもしろい仕掛けのようなものが使われています。
それが、色の変化です。
最初から女の子に出会うまでのページは、すべて白黒で描かれていて、まさに灰色の空の下、冬の時代であること直感的に感じさせられる景色となっています。
唯一色が違う部分は、文章の中の「はる」という言葉だけ。
この言葉だけは桃色で色付けしてあります。
これが、女の子の登場から少しずつ色づき始めます。
はじめに目を引くのは、白黒の木々の間を歩いてくる女の子。
黄色、赤、緑と、これまでの絵本と同じだとは思えないほど色鮮やかです。
それと同時に、白と黒だけだった背景に、緑の草の芽が生え、黄色いタンポポが咲き、枯れ木にも緑が色づきます。
さらにページが進むと、蝶や蜂が飛び、野原は緑に覆われ、木に赤い実が実るなど、一気に色鮮やかな春景色へと色づくのです。
そして、きわめつけとして、物語の最後には目を見張るほどの、春ならではな美しい景色が見開きいっぱいに広がります。
これには子どもたちも、
「きれい・・・」
「春になったね!」
と、息を呑み、心から春の訪れを実感しているようでした。
この、徐々に色付いていくという、絵本の中での変化が、まさに少しずつ春へと変わっていく季節の変化と見事にリンクし、冬から春への移り変わりを直感的に味あわせてくれるところも、この絵本のとてもとても素敵な演出となっています。
こればかりは言葉では伝えきれないので、ご自身の目でそのすごさを実感してみてください。
きっと、その美しさに圧倒されると思いますよ。
二言まとめ
春を知らない子グマたちの、様々な勘違いをしつつも、一所懸命春を探す姿がかわいく微笑ましい。
冬の白黒から、春の訪れと連動して色づいていく仕掛けに、冬から春への温かでカラフルな季節の変化を体感できる、心がウキウキする絵本です。
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