作・絵:エイドリアン・アダムズ 訳:野口絵美 出版:徳間書店
真夜中は魔女たちの時間です。
コウモリシチューを食べたあと、魔女たちはほうきにまたがり遊びに出かけます。
魔女たちの少し不気味で楽しい時間の始まりです。
あらすじ
暗い森の奥深く。
たくさんの魔女たちが住んでいました。
ある晩、月が空高く上がったころに魔女たちは起き出しました。
今日は、お祭りの日なのです。
魔女たちはコウモリシチューのごちそうを食べ大騒ぎ。
ごちそうを食べたあとは、ほうきにまたがり飛び立ちます。
ほうきに立ち乗りしたり、組体操をしたりと、空でもやっぱり大騒ぎ。
月のまわりをぐるぐる回り、月の上で休憩します。
次の遊びは、地球までの競争。
ほうきに乗って、トウモロコシ畑に着陸します。
けれど、魔女たちがトウモロコシ畑を歩いていると、向こうからなにかが近づいてきました。
急いで畑に隠れる魔女たち。
向こうからやってきた、魔女も怖がるものたちとは・・・?

おしまい!
『まよなかの魔女たち』の素敵なところ
- 大はしゃぎする魔女の姿にこっちまで楽しくなる
- 魔女絵本らしい不気味でおどろおどろしい雰囲気
- 魔女が恐れる意外過ぎるものに思わず笑ってしまう結末
大はしゃぎする魔女の姿にこっちまで楽しくなる
この絵本のなにより楽しいところは、大はしゃぎする魔女たちの姿でしょう。
魔女といえば、暗くて、不気味で怖い雰囲気が一般的。
毒リンゴを持ってきたり、怪しげな薬を作っているイメージです。
けれど、この絵本の魔女は違います。
お祭りにはしゃいでとても楽しそう。
その無邪気な姿は、まるで子どもみたいです。
ごちそうを食べながら笑顔でおしゃべりしたり、
皿洗いはあとにして、ほうきを持って踊りながら歩く姿は、次の遊びが待ち切れないことが伝わってきます。
ほうきに乗って立ち乗りする姿なんか、ブランコをする子どものように楽しそう。
顔はものすごい魔女なのに、完全に子どもにしか見えないのです。
その楽しそうな姿に子どもたちも、

全然怖くないね!



いい魔女さんみたい!



わたしもほうきに乗ってみたい!
と、すっかり魔女たちと仲良しに。
その楽しそうな表情から、魔女たちのお祭りに参加していることが伝わってきました。
この、遊びたくてたまらない、子どものように大はしゃぎする魔女の姿に共感し、魔女たちと思い切りお祭りを楽しめるのが、この絵本の素敵なところです。
魔女絵本らしい不気味でおどろおどろしい雰囲気
そんな子どものような魔女たちですが、どこか不気味でおどろおどろしい雰囲気も忘れてはいません。
魔女たちの黒ずくめな姿はもちろんのこと、
森にうっそうと生い茂る木の枝がまるで腕のように見える不気味な木。
月しか明るいものがない、闇に覆われた色合い。
「コウモリシチュー」「クモの巣パン」というドロドロした料理名。
など、まさに「魔女」「暗闇」「深い森」といった、不気味さのキーワードになる要素は、しっかりと不気味に薄暗くおどろおどろしく存在しているのです。
だからこそ、楽しそうなのに、魔女らしさを失っていないのでしょう。
楽しそうな子どもたちも、絵本がどんな内容なのかわからない最初の場面や、最後の場面でなにかが来るシーンで身構えてしまうのは、この不気味さが漂っているからなのだと思います。
この、とても楽しい内容なのに、常にどこか不気味さを感じる薄暗い雰囲気も、この絵本のとても魔女絵本らしい素敵なところです。
魔女が恐れる意外過ぎるものに思わず笑ってしまう結末
さて、そんな魔女たちのお祭りは、思わぬ来客によって終りをむかえます。
この結末が、とてもおもしくてシュールなのです。
現れたのは、見ている子ならその正体がすぐにわかる、怖いことなどなにもないものたち。
ですが、魔女たちはその正体がわからず、恐れおののき家に帰っていきます。
これには子どもたちも、



魔女なのに怖がってる!?



全然怖くないのに!



魔女さんわかんないんだ!
と、驚きつつ笑ってしまいます。
普段は自分たちが怖がっている魔女という存在が、自分たちたちならあ全然怖がらないもの見て、怖がって逃げていくという立場の逆転。
その立場の逆転が、おもしろさとシュールさを生み出しているのでしょう。
この、子どもたちには怖くない来客を、魔女が怖がって逃げていくという結末も、この絵本のとてもシュールでおもしろいところです。
二言まとめ
いつもは怖い魔女たちが、子どものように大はしゃぎしながら、お祭りをめいっぱい楽しむ姿に、見ている方も楽しくなる。
魔女らしい不気味さと、魔女らしからぬ明るさのバランスが絶妙なハロウィン絵本です。
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