作:谷口智則 出版:文溪堂
一人でも魔法の杖さえあれば何でもできる魔法使い。
そんな暮らしは悠々自適。
でも、ある日友だちが出来たとしたら・・・。
もう一人には戻れないかも。
あらすじ
魔女のルマニオさんはいつも一人です。
ルマニオさんの友だちは一本の魔法の杖だけでした。
杖は魔法の呪文を唱えれば、空飛ぶほうきや、笛、スプーンなどへ早変わりしてくれます。
ところがある日、ルマニオさんはケガをした小鳥に会いました。
いつも一人だったルマニオさんはどうしていいかわかりません。
魔法で薬を作ろうとしたり、スープを作ろうとしてもなぜか失敗。
ルマニオさんは怒って杖を窓の外に放り投げてしまいました。
それからルマニオさんは来る日も来る日も小鳥を看病しました。
小鳥は少しずつ元気になりました。
ルマニオさんは小鳥と過ごす毎日が幸せでした。
けれど、ケガが治った小鳥は仲間の元へ帰らなければいけません。
小鳥が飛び立つと、ルマニオさんはまた杖と暮らすことにしました。
しかし、放り投げたままにしていた杖は小さな木になってしまっていたのです。
本当に一人ぼっちになってしまったルマニオさん。
一人寂しく暮らしていくしかないのでしょうか。
『まじょのルマニオさん』の素敵なところ
- ルマニオさんの素直でかわいい表情
- 一緒に暮らす姿が本当に幸せそう
- 木になっていく杖の変化がこっそり描かれ続けている
真っ黒な服に身を包んだまじょのルマニオさんですが、その表情はとっても豊かで素直です。
感情がすぐに表情に出てしまいます。
ほうきで空を飛ぶときは楽しそうだし、スープを作る時はまったり顔。
ケガをした小鳥に会うと、焦り顔。
薬を作るのに失敗すると、もうパニックといった様子。
スープづくりに失敗した時なんか、本当に悲しそうです・・・。
でも、小鳥のケガが治ると、物凄く嬉しそうな顔になります。
そんな表情豊かなルマニオさんだからこそ、誰かと一緒にいる幸せをとてもわかりやすく表現してくれます。
小鳥と一緒に暮らしている時のルマニオさんの顔を見たら、それだけでどれだけ幸せかがわかるのですから。
それは反対に、小鳥が飛び立ってしまってからの一人ぼっちの日々にも言えること。
その寂しそうな表情を見ただけでどれだけ悲しいかがよくわかります。
それだけに、最後の場面のルマニオさんの表情をぜひ見て欲しいと思います。
そんな表情豊かなルマニオさんの横でこっそりと描かれ続けている杖。
窓の外に放り投げられましたが、地面に突き刺さったのか、窓から顔をのぞかせています。
そして時が経つにつれ、葉が生え、枝が生えとこっそり根付いていっています。
一度見た後に読み返してみると、「木になってきてる!」と発見もあったりして面白い仕掛けです。
魅力的なキャラクタールマニオさんだからこそ、寂しさも幸せもより心に響く絵本です。
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