作:征矢清 絵:林明子 出版:福音館書店
外でさちが遊んでいると、雨が降り出しました。
でも、大丈夫。
葉っぱのおうちがあるのですから。
さっそく中に入り雨宿り。
すると、虫たちも次々雨宿りにやってきて・・・
あらすじ
さちが庭で遊んでいると、雨が降ってきました。
でも、さちには葉っぱのおうちがあるから大丈夫。
生い茂る葉っぱの中に、さちが入れる場所があるのです。
そこは葉っぱの屋根があり、雨も振り込んでくることはありません。
さちはさっそく葉っぱのおうちに入り、雨宿りをしました。
ところが、さちのおうちではカマキリが先に雨宿り。
さちはカマキリが怖いので、こちらを見ないように言うと、カマキリは向こうを向きました。
すると、モンシロチョウもさちのおうちに入ってきます。
さちは、モンシロチョウが濡れないように中に招き入れてあげました。
今度は、葉っぱの間からコガネムシが顔を出しました。
さらにテントウ虫も飛んできて、さちの頭にとまります。
なんだか、みんな同じ家に住む家族のようで、さちは嬉しくなりました。
アリがパンを加えて歩いていたので、アリも中に入れてあげました。
ちょうどその時、おうちの外を見てみると・・・

おしまい!
『はっぱのおうち』の素敵なところ
- 秘密基地のようなロマン溢れる葉っぱのおうち
- 次々生き物たちが現れて、賑やかになっていく葉っぱのおうち
- ごっこのおうちと本当のおうち
秘密基地のようなロマン溢れる葉っぱのおうち
この絵本のなによりワクワクするところは、秘密基地のような自分だけのおうちがあるところでしょう。
生い茂る葉っぱの中にポッカリと空いた洞窟のような空間。
そこはさちが余裕を持って入れるくらいのちょうどいい大きさで、とても居心地がよさそう。
思わず、

いいな~、ぼくも欲しいな~
と、心の声がもれてしまうほど、魅力的な空間です。
しかも、偶然あったわけではなく、日頃からおうちとして使われていたのがわかるのも、より葉っぱのおうちが魅力的に見えるポイント。
表紙でさちが葉っぱのおうちを掃除していたり、おうちのなかに掃除道具や植木鉢、ままごとの道具があることから、ただの穴ではなく、さちのおうちという魅力が伝わってくるのです。
だって、誰にも邪魔されず、自分だけの暮らしができるおうちがあるなんてロマンの塊。
自分も欲しいと思わないわけがありません。
虫嫌いな子はちょっと別かもしれませんが・・・。
そんな、存在だけでも特別な葉っぱのおうちで、雨宿りするというこれまた特別な体験が待っているのだからたまりません。
自分だけの家の中で、雨に濡れることなく、雨が降る中外で過ごす。
さちの心も子どもたちの心も、ワクワクドキドキしていることでしょう。
この、存在だけで魅力的な葉っぱのおうちで、雨宿りという特別な時間を過ごす、ロマン溢れるシチュエーションが、この絵本のとても素敵で心躍るところです。
きっと、外へ遊びに行った時、自分だけのおうちを探してみたくなりますよ。
次々生き物たちが現れて、賑やかになっていく葉っぱのおうち
そんな、素敵な葉っぱのおうちには、葉っぱのおうちらしく、様々な生き物たちが雨宿りにやってきます。
この、次々とよく知る生き物たちが登場し、どんどん家の中が賑やかになっていく繰り返しも、この絵本のとても楽しいところとなっています。
最初にカマキリが家の中にいますが、ここには塩対応。
「こっちみないで」と言われて、カマキリは向こうを向いてしまいます。
この塩対応には、



カマキリさんかわいそうだね・・・
と、少しカマキリに同情する子どもたち。
ですが、ここからはどの生き物にもウェルカムで、雨に濡れないよう優しく気遣ってくれます。
子どもたちも、



チョウチョさんだ!



テントウ虫も来たよ!
と、知っている生き物たちが出てくるたび大興奮。
まるで、町中で友だちを見つけたかのように喜んでいました。
さらに、よく見るとカタツムリやカエルもさり気なく登場していて、



あ!ここにでんでん虫いる!ほら!



ホントだ!
と、新たな発見にも大喜び。
自分たちに身近な生き物たちが、次々出てくるというのは、とても楽しい体験なようです。
また、生き物たちが登場するにつれ、家の中が賑やかになっていくのも見ていて楽しいポイント。
最初から十分に魅力的だった葉っぱのおうちですが、やっぱり1人で入っていると少し寂しげ、雨音だけが大きく聞こえてくるような雰囲気です。
でも、住人が増えるに連れて雰囲気やさちの表情が明るいものになっていきます。
家の中が賑やかになり、言葉を交わしているぶん気持ちも華やいでいくのでしょう。
生き物たちが増えるたび、嬉しそうなさちと子どもたちの表情のシンクロ具合が印象的です。
この、次々と身近な生き物が葉っぱのおうちにやってきて、家の中が明るく賑やかになっていく繰り返しも、この絵本のとてもとても楽しいところです。
ごっこのおうちと本当のおうち
さて、そんなみんなで雨宿りする楽しさを味わえるこの絵本。
最後の場面で、とても印象的な言葉が2つあります。
それが、
葉っぱのおうちに生き物たちが集まった時の「みーんなおなじうちの人みたい」
最後の場面の「ほんとのおうちへ帰ろう。みんな帰ろう。母さんが待ってるもん」
という言葉です。
この最初の言葉からは、葉っぱのおうちでのごっこ遊びのような楽しさを感じます。
1つのおうちの中にみんなで入るという、まさに家族のような状況が楽しかったのでしょう。
でも、最後の場面の言葉で、「やっぱり自分の家とお母さんが1番いい」という気持ちがとてもストレートに伝わってくるのが、なんとも子どもらしく素直なところ。
安心して帰る場所があるからこそ、安心して雨宿りができるし、おうちごっこができるのだということを感じさせてくれます。
この「ほんとのおうちへ帰ろう・・・」という言葉に、きっと子どもたちも強い安心感を得られることでしょう。
この、とても楽しい1人遊びの時間のあとに、きちんと帰る場所があることが伝わる素敵な言葉と表情で、安心してページを閉じることができるところも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
秘密基地のような葉っぱのおうちで雨宿りするという、ロマン溢れるシチュエーションにワクワクが止まらない。
次々と生き物たちが雨宿りにやってきて住人が増える繰り返しが、とても楽しい雨の日絵本です。
コメント