ぼくはまいごじゃない(4歳~)

絵本

作:板橋雅弘 絵:シゲリカツヒコ 出版:岩崎書店

楽しいお出かけやいつもの場所も、迷子になると一変します。

「もう家に帰れないかも」「家族に会えないかも」

そんな不安にどんよりと不気味に見えてきます。

そんな迷子体験をリアルにさせてくれる絵本です。

あらすじ

お兄ちゃんたちと一緒にショッピングモールにやってきた男の子。

中に入るとその大きさにびっくり。

びっくりしすぎてトイレに行きたくなってしまった。

お兄ちゃんに本屋で待っていてもらい、男の子はトイレに行った。

トイレから戻ると、本屋にお兄ちゃんたちの姿はなかった。

お兄ちゃんたちはわざと隠れて、男の子の様子を見ていたのだった。

男の子はお兄ちゃんたちを探し始めた。

色んな売り場を探したけれど見つからない。

そこで男の子は2階と3階も探すためにエスカレーターに乗った。

それを見て、お兄ちゃんたちも後を追った。

しかし、お兄ちゃんたちは男の子を見失ってしまった。

お互いに必死に探すが見つからない。

この大きくて広いショッピングモールで再開することは出来るのでしょうか。

『ぼくはまいごじゃない』の素敵なところ

  • 小さな男の子の目線を体験できる
  • こちらまで不安になるリアルな表情
  • 男の子の不安がよく伝わる心理描写

この絵本の素敵なところは、小さな子が迷子になった不安を体験できるところです。

不安で不安でたまらない、迷子特有の感覚を追体験させてくれます。

まずはその目線です。

多くのページが男の子の身長と同じ高さから描かれます。

大人の顔は自分の目線よりはるか上にあり、見上げなければ見えません。

ショッピングモールの高さや広さも男の子の目線ではより大きく見えます。

まるで自分がショッピングモールの中に一人ぼっちでいるようです。

目線だけでなく、表情もリアルです。

不安をなんとか抑え込もうとする表情、焦って探す表情、心細さを感じる表情など、こちらまで不安になってくるようなリアルな表情で描かれます。

絵だけでなく文章にも特徴があります。

それは男の子の感じたことや気持ちで話が進んでいくことです。

お兄ちゃんたちにもセリフはありますが、説明などはありません。

その時発した言葉のみです。

対して、男の子は「一緒に来てほしかったけど」「一人になったとたん、モールの中が暗くなった気がした」などの、感じたことや思ったことが文章になっています。

この徹底した一人称視点が、自分を男の子と一体化させ、リアルな迷子体験を生み出しています。

読んでいると、「お兄ちゃんどこいったんだろう」「怖いね」など、男の子の気持ちを代弁する言葉が聞かれました。

そんな迷子を一人称視点で体験できる珍しい絵本です。

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