作:浜田桂子 出版:佼成出版社
なんでもかんでも嫌な時。
泣いているうちになんで泣いているのかも忘れてしまう。
でも、涙は止まらない。
そんな気持ちに寄り添うお話です。
あらすじ
おひさま保育園の朝。
みんな外で遊んでいますが、テラスに一人だけ泣いている男の子がいました。
名前はあっくん。
ママが行ってしまったのが嫌で泣いているのです。
それを見て、小さな女の子のひなちゃんがあっくんの頭を撫でてくれました。
でも、あっくんはよだれをつけられたと大泣き。
次に小さな男の子のしょうちゃんがあっくんの涙を拭いてくれました。
でも、あっくんはそれは雑巾だと大泣き。
同い年くらいの女の子のあきちゃんがあっくんに砂のケーキを持ってきてくれました。
でも、あっくんは砂のケーキは嫌だと大泣き。
小さな女の子のさっちゃんがあっくんの靴をしまってあげました。
でも、あっくんは自分でしまいたいと大泣き。
その後もみんながあっくんを笑顔にしようとしますが、あっくんの涙は止まりません。
その時、雨が降ってきました。
あっくんは外で遊べないのが嫌で泣きました。
雨は土砂降りになってきました。
すると、はるちゃんが「空から降る雨と、あっくんの目から降る雨が競争してるよ!」と言いました。
そして、みんなからあっくんの目から降る雨を応援する声が上がります。
あっくんは一生懸命泣きました。
この勝負、一体どちらが勝つのでしょう。
『あめふりあっくん』の素敵なところ
- なにをされても嫌なあっくん
- あっくんを気にかけている子どもたちの姿
- 涙を雨に例える子どもならではの発想
なにもかもが嫌で、聞く耳を持たないあっくん。
その姿や、他の子に対する反応は「あるある」と思うものばかり。
子どもの方も何人か思い当たる節がある反応や、姉弟がいる子は「これやってるよ」と言ったりします。
そんなリアルな姿で描かれるあっくん。
そのあっくんに関わる子も「あるある」と思うものばかりです。
小さな子からのいいこいいこ。
涙を拭いてあげようとする姿。
おもちゃや作ったもの、その子の好きなものを持って来てくれる子。
それで、気がまぎれる子もいますが、あっくんのように火に油を注いだみたいに泣き出す子もいます。
そのあたりのやり取りも、本当にそのやり取りを見ているかのような気分にさせてくれます。
そんなあっくんの目から溢れ出る涙。
それを雨に例え、降ってきた雨と競争しているという発想は、子どもならではの目のつけどころ。
思わず感心してしまいます。
そして、その発想を受け入れ、あっくんを応援する子どもたちの姿にも。
発想一つで、悲しみの涙から、希望の涙へと変わる面白さ。
子どもの発想力の柔軟さを感じつつ、からっと晴れた気持ちにさせてくれる絵本です。
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