作・絵:かこさとし 出版:偕成社
普段は悪い、怖い存在のどろぼう。
でも、おばけなどと一緒で怖いからこそ見てみたい。
そんな時、どろぼうらしさをしっかり残し、でもとってもユーモラスなこの絵本をぜひ読んでみてください。
読み終わったころにはきっとどろぼうごっこがしたくなると思います。
リアルだけど憎めないどろぼうがっこうのすごさ
- 登場人物がちゃんとどろぼう
- 一生懸命な間抜けさがおもしろい
- つい真似をしたくなるフレーズ
とてもリアルな絵と合わせて、遠足の持ち物がねじ回しと出刃包丁などちゃんとイメージ通りのどろぼうなのが面白いところ。
デフォルメされ過ぎていないどろぼうたちが織り成す、数々の失敗談がそのギャップと相まって笑いを誘います。
そして忘れてはいけないのが、思わず一緒に言いたくなるフレーズの数々。
劇遊びなどにもよく採用されています。
「はーい、へーい、ほーい、わかりやしたー」「残念無念不覚の至り、しまったしまった口惜しや~」
などなど耳に残るフレーズも盛りだくさんです。
あらすじと子どもの反応
ある山奥にどろぼうの学校がありました。
世にも名高い「くまさかとらえもん先生」が校長先生をやっています。
そこではどろぼうの授業が行われていて、宿題はなにか物を盗んでくること。
生徒はそれぞれ「自分の家のくつ」「ありの卵」「くまさか先生の時計」「どろぼう学校の黒板」を盗んできます。
身内の物や金にならないものばかりなので当然みんな0点に。
どろぼうというキーワードにドキドキしていた子どもたちも、この流れですっかり笑顔に。
さて、気を取り直してみんなで遠足に行くことになりました。
集合時間は夜の10時。
持ち物はねじまわしとでばぼうちょう。
どろぼう学校の遠足は本当のどろぼうをしに行くことだったのです。
これには子どもたちもびっくり。どうなるんだろうとまたドキドキしてしまいます。
「ぬきあしさしあししのびあし」と金持ち村までやってきたどろぼうたち。
その中の一番大きくて番兵までいる屋敷に標的を定めます。
忍び込むとたくさんの部屋があり、これは大金持ちの家に違いないと確信に変わります。
そして奥に鍵のかかった大きな部屋がありました。
鍵を外して中に入ると真っ暗でした。
中を手探りで探索しますが手に触れるのはコンクリの壁ばかり・・・。
するとパッと明かりがついて、そこには警察署長と牢屋の檻が。
なんと自分たちから警察署の牢屋に忍び込んで捕まってしまったのです。
「ウワー、残念無念。不覚の至り。しまった、しまった。口惜しや。」
この絵本にはあらずじでは伝えきれない、言葉選びやそのリズム、言い回しのおもしろさがふんだんに詰まっています。
ぜひ実際に読んで、かこさとしワールドを味わってみてください。
おすすめの読み方
- 歌舞伎のような仰々しさで
- 言葉のリズムを大切に
- くまさか先生は悪そうに生徒はとぼけた様子
くまさか先生が登場するまでの冒頭のシーンは仰々しく大舞台が始まるような雰囲気を出していきます。
そしてくまさか先生のセリフ以降、ほとんどセリフのやり取りで物語が進んでいきます。
なので、くまさか先生は威厳を出し、生徒はとぼけたセリフが多いのでとぼけた感じで読んでいくとメリハリが出やすいです。
さてそれぞれが宿題の発表をする場面。
くまさか先生の前半は感心し、後半は呆れて怒る感情のギャップを演出しましょう。
そして、遠足の話になると急にご機嫌に。
説明が終わり夜の場面になったら息をひそめて読んでいきます。
「ぬきあしさしあし・・・」はリズミカルにテンポよく。
金持ち村に着き、大きな屋敷の近くに寄ってからが読み手の腕の見せ所です。
毎回ページの最初に「くまさかせんせーい」「シー、なんだぁ」というやり取りがあります。
「くまさかせんせーい」を大声で、「シー、なんだぁ」を息をひそめつつ焦って止める様子で読み、その後は声をひそめつつも、お宝に近づいている期待感を含ませます。
そして、いよいよ鍵のかかった部屋に入ります。
そこからは真っ暗な部屋でのわちゃわちゃ館を出すためみんな大声でやり取りしていきます。
そして大喜びの刑務所長に対する、くまさか先生の無念さを言葉に込めて終わります。
読んでいて楽しく気持ちのいいこの絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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