作:石津ちひろ 絵:高畠那生 出版:好学社
一人っ子だと、姉弟が羨ましくなる時があります。
一緒に遊んだり、じゃんけんしたり、取り合いのけんかだって羨ましい。
でも、誕生日の日は特別。
みんな来てくれるから、一人っ子だと普段出来ないことも出来るんです。
あらすじ
カバのかこちゃんは一人っ子。
兄弟のいる友だちが羨ましい。
ライオンのらんちゃんは弟と妹がいて楽しいことが出来る。
クマのげんくんとごんくんは双子だから、いつも二人で遊べる。
一人っ子だといつも一人ぼっちでつまらない。
おやつの時にじゃんけんで大きいのを取りっこしてみたい・・・。
そんなかこちゃんですが、誕生日会では一人ぼっちじゃありません。
最初に家に来たのは、ライオンのらんちゃん兄弟に、クマの双子げんくんとごんくんでした。
次にいつも手紙をあげているヤギさん。
そして、水泳教室で一緒のトドさん。
さらに、相撲教室で一緒のリスさんとパンダさん。
子守唄を歌ってあげているヒツジさんまで。
かこちゃんの家はお客さんでいっぱいになりました。
ひとりぼっちじゃない誕生日会で、かこちゃんがやりたいこととは。
『かこちゃんはひとりっこ』の素敵なところ
- ひとりっこにしかわからない悩みや憧れ
- ついにかこちゃんの憧れのあれが実現する
- よく見るとおもしろすぎるシュールな絵
兄弟なら当たり前の、一緒に遊んだり、じゃんけんしたり、取り合いをすること。
でも、一人っ子からするとどれもとっても羨ましいのです。
友だちと別れたら、あとは次の日まで子どもと会うことはありません。
一緒にも遊べないし、おしゃべりも出来ないし、けんかだって出来ません。
夜でも遊べる兄弟なんて夢のようです。
そんな気持ちが、かこちゃんの言動から痛いほど伝わってくるのです。
そんなかこちゃんも誕生日はみんな一緒です。
みんなが集まると、かこちゃんがどうしてもみんなとやりたかったことが実現します。
そのセリフを言う時の、かこちゃんの嬉しそうな顔といったら。
興奮し本当に嬉しいのが、その表情や動きから伝わってきます。
さて、そんな一人っ子の悩みに真摯に向き合う本作ですが、絵はけっこうシュールです。
設定も中々シュールです。
文章は真面目なのに、絵で笑わせてくるところも多いのです。
まず、かこちゃんの家の設定です。
カバなので外に住んでいます。
でも、家なのでドアがいります。
だから、草原にドア枠だけ置いてあるのです。
誕生日会に来るみんなは、ちゃんとドア枠を通って入ってきます。
しかし、トドの勢いが強すぎて、ドア枠が壊れます。
でも、ちゃんと壊れたドア枠を通って入ってきます。
家の設定だけでも、これだけ盛り沢山なのですが、場面ごとの動物たちの動きや表情、かこちゃんのママの行動など、いたるところで笑わせてこようとします。
中身は一人っ子の悩みを真剣に描きつつ、絵や設定で笑わせに来る。
新しいタイプの絵本です。
コメント