文:エイミー・ヘスト 絵:ヘレン・オクセンバリー 訳:さくまゆみこ 出版:岩崎書店
新しい家にやってきた子犬。
そこで初めて眠る夜。
それはきっと不安でたまらない。
その気持ちが痛いほど伝わる絵本です。
あらすじ
ある雪の日、子犬が抱っこしてと男の子ヘンリーにせがんだ。
毛布にくるみ抱っこしながら、この子犬の名前を考えた。
そして、チャーリーにすることにした。
家に着くと、チャーリーに家を案内した。
お父さん、お母さんは、「チャーリーの散歩や、ごはんをあげるのはヘンリーがしてね」と言った。
でも、寝るのはキッチンだと言う。
ヘンリーの部屋で寝かせたいと言ってみたけれどダメだった。
そこで、キッチンにチャーリーのベッドを作った。
ヘンリーはチャーリーの隣に寝そべりしばらくすると、チャーリーは寝息を立て始めた。
ヘンリーも自分のベッドに潜って寝ることにした。
しかし、真夜中に突然チャーリーの泣き声が聞こえた。
ヘンリーはキッチンに駆けつけてチャーリーをしっかり抱き上げた。
チャーリーはぶるぶると震えていた。
初めての家での不安な夜。
チャーリーは寝付くことが出来るのでしょうか。
『チャーリーのはじめてのよる』の素敵なところ
- ヘンリーのどこまでも子犬目線な優しさ
- とてもリアルなチャーリーの描写
- 自分の身近にいる動物にもチャーリーを通して自然と目が向く
この絵本を読んでいて、まず感じるのがヘンリーの温かな優しさです。
それが全て子犬のチャーリーの気持ちや目線で考えているのが伝わってくるのです。
抱っこする時も、ヘンリーが赤ちゃんの時に使っていたふかふかの毛布でくるんであげる。
家を案内する時も、全部の場所をチャーリーに見せてあげ、チャーリーがわかるように何回も繰り返してあげる。
キッチンのベッドには寂しくないように、ヘンリーが小さい頃一緒に寝ていたクマのぬいぐるみを寝かせてあげる。
そんなふうに、チャーリーの不安な気持ちに優しく寄り添ってくれるのです。
そんなチャーリーは、その幸せそうな様子も不安そうな様子も、絵と心理描写でとてもリアルに描かれています。
まずはそのかわいい姿と仕草です。
しっぽを振ってついてきたり、一緒のものを見たり、眠ったり。
とてもいきいきと、とてもかわいく描き出されています。
それと同時に、表情や文章での心理描写もリアルです。
ヘンリーと一緒にいる時は、本当に幸せそうで安心した表情を見せています。
でも、夜中に起きたチャーリーは抱きしめると震えていて、表情もとても不安そうです。
そしてヘンリーの顔を見ると、また安心した表情に。
ヘンリーへの愛着と、新しい家での心細さとが本当に丁寧に描かれているのです。
このヘンリーとチャーリーの姿を見ていると、自分の家にいる動物へも自然と目線が向いてきます。
「この子は初めて家に来た時、不安だったのかな?」
「今はどんな気持ちなのかな?」
そんな風に、チャーリーを通して、相手の気持ちを自然と考えるようになるのです。
大きな不安な気持ちと、それに寄り添う大きな優しさの気持ちの両方に触れあえる。
とても優しく温かな絵本です。
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