作:エドワード・ギブス 訳:谷川俊太郎 出版:光村教育図書
どんぐりの絵本はたくさんあるけれど、種子としてのどんぐりを扱った絵本は多くありません。
どんぐりって大きくなったらどうなるんだろう。
どんぐりってどうやって出来てるんだろう。
そんなことを思った時にはぜひこの絵本を読んでみてください。
あらすじ
小さな黄色いどんぐりがひとつ地面に落ちました。
そこにしろねずみがやってきて食べようとします。
「おねがい。今は食べないで。今にもっとおいしくなるから」と言うどんぐり。
ねずみが食べずに行ってしまうと、オレンジリスがやってきました。
食べようとしますが、どんぐりがお願いすると行ってしまいます。
そのあともあおどり、はいいろうさぎ・・・と次々とやってきます。
どんぐりはなんとか食べられずに済みました。
すると芽が出て、根を張って・・・。
果たしてどんぐりはもっとおいしくなることが出来るのでしょうか。
『どんぐり』の素敵なところ(ネタバレ)
- わかりやすい繰り返しの文章
- どんぐりの先が見られる
- 自然のダイナミズムが感じられる
絵本としては繰り返しの文章でわかりやすい。
色とりどりの動物たちが順番に出てくるなど、小さい子にも読みやすい絵本です。
しかし、食べられないことでどんぐりが成長して大きな木になり、よりたくさんのどんぐりが実って、結果的に食べずにいてくれた動物たちがみんなたくさんのどんぐりを食べられる。
そんな、普段は忘れているどんぐりの木の成り立ちや、食物連鎖の一端が垣間見られる自然のダイナミズムを感じる絵本です。
それをこんなにもわかりやすく直感的に感動的に描けるセンスは本当にすごい。
きっとこの絵本を見てからどんぐり拾いに行った子は、どんぐりの木を他の木の中の一つではなく、どんぐりとのつながりを持った木として見上げるのではないでしょうか。
また、木になって葉が生い茂る場面での綴じ込みの仕掛けも大きく成長したことを直感的に感じる一助となっています。
表現、仕掛け、文章、構成、すべてがきれいにまとまった稀有な絵本だと思います。
『どんぐり』のおすすめの読み方
- どんぐりの繰り返しの文章は全部同じ調子で
- 動物たちの繰り返しの文章は動物に合わせて
- 子どもとのやり取りを楽しみながら読む
どんな動物が来てもどんぐりのセリフは一定の読み方にしていくと、繰り返しがわかりやすく子どもたちも安心して見やすいです。
反対に動物たちの繰り返しのセリフ「うーん。おいしそう」はイノシシなら低めの声など、動物に合わせて出した方がメリハリがついていいと思います。
また、小さい子は動物が出てくるたびに反応が返ってきやすいので、「イノシシさんだね。こげ茶色だね」など言葉を返す。
幼児クラスなどへは「今度は食べられちゃうかな?」などこちらから声をかけてみたり、やり取りをしつつ読むとより楽しめると思います。
油断すると読み手が最後の場面に感動してしまうこの絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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