作・絵:二コラ・ケント 訳:こばやしれいこ 出版:岩崎書店
子どもを抱っこしたり荷物を持ったり、ママってとっても力持ち。
でも、この絵本のママはそれどころじゃありません。
そんなスーパー力持ちのママだって限界はあるんです。
あらすじ
クマのママはスーパー力持ち。
男の子の見つけた落ち葉や、ドングリなどの宝物を全部バッグに入れて持って行ってくれる。
男の子が自転車に乗るのに疲れたら、自転車だって持ってくれるし、そのまま男の子をおんぶしてくれる。
さらに友だちに野菜や洗濯物、じゅうたんにピアノまで。
全部持っても疲れない。
でも、男の子がドングリのついた枝を見つけママの荷物にのせた時、ママがよろよろし始めた。
そして、ガッシャーン!
本当は限界だったけど、そこに男の子が荷物を乗せたから、荷物を落としてしまったのだ。
ママはすっかり落ち込んでしまった。
そこへ音を聞いて友だちが駆け付けてきた。
落とした荷物はどうなるのでしょう。
ママは元気を取り戻すことが出来るのでしょうか。
『ママはスーパーちからもち』の素敵なところ
- ママが尋常じゃないくらい力持ち
- 描き込まれた小物たち
- やってもらうだけじゃなく「手伝おう」と思わせてくれる
最初は男の子を手のひらに乗せ、持ち上げる姿に「すごい力持ち!」と驚く子どもたち。
ですが、スーパー力持ちはそんなものではないことに、徐々に気が付いていきます。
たくさんの荷物と自転車を持ちながら、男の子をおんぶしたところでただ者ではないことに気付き始めます。
「え・・・すごっ!」と漏れ出てくる驚きの声。
そして、友だちがどんどん荷物を渡してくる場面で確信に変わります。
ついにピアノまで片手で持ってしまった時、スーパー力持ちが尋常でないことを実感します。
「えー!ピアノまで!?」「なんで持てるの!?」
と、驚きの悲鳴が鳴り響きます。
遥かに予想を超えた力持ち具合にはみんな予想を裏切られたみたいです。
この驚きがあるからこそ、荷物を落としてしまった時のママの落ち込み具合に深く同情できるのでしょう。
さて、そんなママが持つ数々の荷物たちが細かく描き込まれているのも、この絵本の大きな魅力です。
ママが男の子の宝物を入れてくれるバッグの中身が、断面図付きで描かれていたり、ママが抱える荷物一つ一つがなにを持っているかわかるくらい描き込まれているのです。
バッグの中身はミニカーや石、ドングリ、絵本などのおもちゃに加え、ハンドクリームや絆創膏、財布などのママの必需品なども入り、とても親近感の湧く内容。
ママの抱える荷物には絵だけでなく、「毛皮すべすべシャンプー」などの商品名まで描かれている細やかさ。
「こんなのもある!」
といったように、見ているだけで様々な発見をしたり、絵本の世界観により深く浸ることが出来ます。
でも、これだけ色々なものを持っているママにも限界はありました。
みんな当たり前のようにお願いしていたけれど、それではいけなかったことに気付きます。
それは絵本の中のママを通して、自分のママにも当てはまります。
荷物を持ってもらって当たり前、抱っこしてもらって当たり前という考えへの少しの変化。
ママへの男の子の姿を見て、自分も「手伝おうかな」と思わせてくれるきっかけをくれるかもしれません。
特に、最後の場面は印象的で、男の子とママの今後が自然と思い浮かびます。
なんでも出来るスーパー力持ちのママの限界や落ち込む姿を通して、自分のママにも優しくなれる。
一緒にやったり手伝うことの大切さを伝えてくれる絵本です。
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