作:飯野和好 出版:ほるぷ出版
いつも通りの帰り道。
急に忍者が現れた。
絶体絶命と思ったその時。
ぼくの姿はハのハの小天狗になっていたのです。
あらすじ
春も盛りの温かい季節。
小学生のぼくはみすずちゃんと、学校からの帰り道でした。
ぼくたちが峠にさしかかった時、「おいっ、ハのハのっ」と声が聞こえてきたのです。
びっくりして見上げると、雑木林の中から忍者の一団が現れたではありませんか。
忍者は「ハのハの小天狗、みすず姫はもらいうけたぞ」と叫びながら切り込んできました。
ぼくはびっくりして構えると、いつの間にか侍姿のハのハの小天狗になっていたのです。
それと一緒にみすずちゃんも姫の姿に。
忍者たちをどんどん倒すと、忍者は峠の方へ逃げていきます。
それを追いかけていくと、岩陰から忍者の頭が現れました。
頭は次々と手裏剣を投げてきます。
弾くので手一杯のハのハの小天狗。
頭を倒して、みすず姫を守り抜くことが出来るのでしょうか。
『ハのハの小天狗』の素敵なところ
- 子どもが妄想するような自由な世界
- 独特かつ大迫力の癖になる絵
- まるで時代劇のようなセリフや言い回し
この物語は唐突に始まります。
そう、まるで子どもが急にイメージの世界に沈み込んでいくように。
きっとこの絵本の男の子は、峠を歩いている時に忍者と戦い、みすずちゃんを守って戦うぼくのイメージが湧いたのでしょう。
気付けばイメージの世界へ入り込み、ハのハの小天狗になっているのです。
イメージ次第でなんにでもなれる。
そんなことを感じさせてくれるのです。
大人が見ると、子どものイメージの世界へ触れるきっかけをくれる。
子どもが見ると、自然に当たり前のこととして受け入れる。
それぞれの見え方の違いも、この絵本の魅力かもしれません。
さて、このイメージの世界観をより味わい深いものにしているのが、独特な雰囲気を醸し出す、味のある絵だと思います。
一度見たら忘れられません。
特に忍者はその独特のフォルムと、男前すぎる顔が脳裏に焼き付くことでしょう。
そんな忍者とハのハの小天狗の戦いは臨場感抜群です。
刀と刀のぶつかり合い、迫る手裏剣、宙を舞う忍者・・・。
そのどれもが躍動感たっぷりに描かれていて、まるで映画でも見ているかのよう。
これには盛り上がらずにはいられません。
「おお!」「危ない!」「小天狗強い!」
と、歓声が上がります。
この盛り上がりには絵だけなく、その文章やセリフにも秘密があります。
「トアーッ」と頭が怪鳥のように飛び上がった。
「チェーイ」と下から払えば・・・。
というように、時代劇風の言い回しや、臨場感あふれるセリフの掛け合いと擬音などにより、さらに盛り上げてくれるのです。
見ているだけで、本当に戦いのさなかにいるような臨場感を感じられると思います。
急に入り込んでいく時代劇風なイメージの世界。
そこで繰り広げられるノンストップ剣劇アクション絵本です。
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