作:つちだのぶこ 出版:ポプラ社
つい口に出てしまう「あれ」。
「あれ」じゃあ、なんのことを言っているかわからない?
いえいえ、大人はなぜか「あれ」で通じてしまうのです。
あらすじ
お母さんはあれって言ったら、なんでもわかってしまう。
お父さんが「お母さん、あれは?あと、あれもちょうだい。あれってどこやったかな?」と言った。
私はなんのことかさっぱりわからない。
でも、お母さんはハサミとお茶を持ってきて、メガネはおでこについているのを教えた。
お兄ちゃんがあれを忘れた時も、寝る前に「あれ、お話しして」と頼んだ時も、お母さんは全部わかってしまった。
おばあちゃんもあれって言ったらわかってしまう。
隣のおばさんも。
ある日、家族で市場に出かけたら、そこですごいことが起きていた・・・。
『あれあれあれれ』の素敵なところ
- 代名詞の面白さが詰まってる
- 次から次へと出てくる山のような「あれ」
- 読むと「あれ」って言いたくなる
この絵本には「あれ」という、代名詞の面白さが詰まっています。
色々な言葉に変わってしまうあれ。
物から、価値から、出来事まで、何の代わりにもなってしまう、あれ。
いつもなんとなく使っているけれど、色んなあれを見てみると、その幅広さに驚かされてしまいます。
なんにでも変身できる言葉「代名詞」。
その面白さが思い切り伝わってくるのです。
そんな「あれ」を使った言葉が、この絵本ではびっくりするくらいたくさん出てきます。
絵本の半分以上は、「あれ」で出来ていると言ってしまってもいいくらい、あれが出てきます。
お母さんとおばあちゃんの会話では、
「ねえ、この間買っておいたあれがないんだけど。」
「あれ、あそこの棚にあるでしょ。」
「あれじゃなくて、あれのことよ。缶にしまっておいたあれ。」
「あーあれね。食べちゃった。ごめん。ごめん。」
もう、まるでパズルです。
でも、こんなのは序の口で、さらに多くのあれが出てくるのです。
読んでいるうち、「あれ」と言い過ぎて、段々感覚がマヒしてくるほど。
目一杯「あれ」が詰っているのです。
これだけ「あれ」と言い続けていると、自分たちでも言いたくなるのが面白いところ。
読み終わった後、子どもたちが楽しそうに「あれ」を使い始めます。
「ちょっと、あれだからあれで遊ぼうよ。」
「今から、あれが始まるんだよね。」
「あ、あれしとかないと、あれになっちゃう。」
など、何か言う時、あえて「あれ」を使うのです。
それはもうニヤニヤしながら。
それだけ、「あれ」という言葉の、面白さが伝わったのでしょう。
たくさんの「あれ」を通して、自分も「あれ」と言いたくなる。
代名詞の面白さを、これでもかと伝えてくれる言葉の絵本です。
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