きょうせんそうがはじまると(6歳~)

絵本

作:藤代勇人 絵:塚本やすし 出版:ニコモ

もしも、今日戦争が始まったら?

友だちは、家は、家族はどうなってしまうのか。

幸せな日常がどんな風に変わってしまうかを、想像させてくれる絵本です。

あらすじ

友だちと遊んでいる公園。

今日戦争が始まると・・・

公園は壊され、友だちとも遊べなくなる。

ゲームをしている時。

今日戦争が始まると・・・。

電気が止まり真っ暗になる。

仲良く暮らしている幸せな家族。

今日戦争が始まると・・・。

お土産を持って帰ってきていたお父さんは、銃を持って戦争に行く。

笑っていたお母さんから、笑顔が消える。

毎日住んでいる家。

今日戦争が始まると・・・。

家の中のおもちゃは粉々になる。

住む家もなくなり外で寝ることになる。

今日戦争が始まると・・・。

『きょうせんそうがはじまると』の素敵なところ

  • 一番身近なものが壊れていくビフォーアフター
  • 残酷な絵を使わずに、心の底から戦争の怖さを感じさせてくれる
  • 当たり前だと思っていたことの大切さに気付かせてくれる

一番身近なものが壊れていくビフォーアフター

この絵本は、日常の一つ一つの場面を、戦争が始まる前→始まった後という、ビフォーアフター形式で描いています。

友だちと遊ぶ場面、家族との幸せな時間、自分たちの住む家・・・。

など、どれも身近で当たり前にあるものばかり。

ですが、

「今日戦争が始まると・・・」

の一言で、すべてが変わってしまいます。

特にお父さんとお母さんの変化は、とても心に響きます。

子どもたちも、

「お父さんが死んじゃったら嫌だ・・・」

「戦争が始まらないで欲しい」

と言いながら、真剣な顔で見ていました。

身近なものがひとつひとつ、変わってしまうのが具体的に描かれていることで、戦争の怖さを想像できたのでしょう。

この戦争前と、戦争後の変化を、とてもわかりやすく描いているのが、この絵本の素敵なところです。

残酷な絵を使わずに、心の底から戦争の怖さを感じさせてくれる

また、人が死んでいるところなど、残酷な描写で恐怖心を煽っていないのも、この絵本のとても素敵なところ。

空襲で人が死んだり、戦場での風景をリアルに描いている絵本だと、小さい子にはトラウマになってしまう場合もあります。

ですが、この絵本ではイルカが死んでしまう場面はあるものの、トラウマになるほど強烈な絵はありません。

けれど、戦争の怖さが薄れている訳でもありません。

すぐに頭に浮かぶほど身近なことを題材にすることで、それらが無くなってしまうこと、変わってしまうこと、そうなった後の自分の生活を想像させられます。

そうして、戦争の怖さを心の底から感じ取らせてくれるのです。

小さい子も安心して読める、平和への願いを込めた絵本は、とても素敵で貴重なものだと思います。

当たり前だと思っていたことの大切さに気付かせてくれる

さて、戦争の怖さを伝えてくれるこの絵本。

失うことはとても恐ろしいことです。

今の幸せな当たり前は、壊れてしまうかもしれないことに気付かされます。

それは裏を返せば、今の当たり前が、実は当たり前じゃなくて、大切で幸せなことだと気付くことでもあります。

友だちと遊ぶこと、家族と仲良く暮らせること、ケンカできること・・・。

普通に過ごしていると、通り過ぎてしまいそうな幸せに、立ち止まって気付かせてくれるのです。

これに気付くと、まさに今、戦争で当たり前を失った人々の辛さも身近なこととして感じられるでしょう。

同時に、戦争が他人事ではないということも。

そんな、今の当たり前が幸せであることに気付くきっかけをくれ、それが戦争で苦しむ人への共感にも繋がっていくのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

とても身近なことが、戦争で変わってしまう姿を見せることで、戦争の怖さを心の底から感じさせてくれる。

当たり前の日常は、実は当たり前ではない、とても幸せなことなんだと気付かせてくれる、平和への願いが込められた絵本です。

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