作:せきゆうこ 出版:PHP研究所
ある日、ハロウィンのことを知ったオバケたち。
お菓子だけじゃなく、家までもらおうと計画します。
合言葉は「お菓子・いたずら・マイホーム!」
あらすじ
ある山の奥に、オバケが住んでいる洞穴がありました。
洞穴は暗くてじめじめしているので、オバケたちは素敵な家に住んで、お菓子をたらふく食べ、ワクワクするイタズラがしたいと夢見ていました。
そんなある日、町に行っていたオバケが慌てて帰ってきて言いました。
町ではハロウィンが流行っているというのです。
なんとハロウィンは、オバケが堂々と歩いてよく、お菓子を山ほどもらえ、イタズラもし放題なのだそう。
オバケたちはさっそく、よりオバケらしく怖いおめかしをして、町へと出発したのでした。
オバケの目的は、お菓子をもらいイタズラをすること。
さらに、素敵な家まで乗っ取ることです。
こうして町に到着したオバケたち。
と、向こうから見たことのないオバケが歩いてきました。
どうやらオバケの仮装をした人間のようです。
人間のオバケたちは、家の人へ「トリックオアトリート!」と言って、お菓子をもらっていました。
それを見て、ハロウィンの作法を知ったオバケたち。
さっそく、別の家でやってみるとにしました。
家の戸を開け「とりはとりー!」とハロウィンの合言葉を真似てみると・・・。
家の中から、猛犬が飛び出して来ました。
オバケたちはつかまりそうになりましたが、間一髪逃げ出すことができました。
気を取り直してやってきたのは、草ぼうぼうでボロボロの家。
「とりはとりー!」と入ってみると・・・。
「うらめしや~」と中からオバケが。
オバケがオバケに驚かされてしまったのでした。
さらに家を周っていきますが、物だらけの散らかった家や、忍者屋敷など変わった家ばかりです。
すっかり疲れ果て、帰り道を歩いていると、どこからかいい匂いがしてきます。
その匂いにつられて辿り着いたのは、なんとも素敵な家でした。
『おかしとおうちくれませんか?』の素敵なところ
- ハロウィン初心者の笑える勘違い
- オバケが訪ねるのは変わった家ばかり
- 自業自得で残念でハロウィンにぴったりな結末
ハロウィン初心者の笑える勘違い
この絵本のなによりおもしろいところは、本物のオバケなのに、ハロウィンのことを知らなすぎるところでしょう。
初めてハロウィンのことを聞き、初参加するオバケたちはまさに初心者。
決まり文句も知らないし、ハロウィンの流れも知りません。
当然のように勘違いのオンパレード。
そもそも、お菓子を貰った上にイタズラもしていいと思っています。
さらに子どもたちを笑わせてくれるのが、勘違いして覚えた決まり文句。
人間の子どもが「トリックオアトリート!」と言うのを聞いて、「とりはとりー!」と言っていると間違って覚えてしまいます。
家を訪ね、自信満々に「とりはとりー!」というのを聞くたび、子どもたちは大爆笑。
「トリックオアトリートでしょ!」
「とりはとりーだって!」
「おもしろーい!」
とツッコミが止まりません。
また、もう一つ決まり文句があり、それが「お菓子!いたずら!マイホーム!」。
お菓子を貰い、イタズラをして、さらに家まで乗っ取ろうという、強欲なオバケたちのキャッチフレーズです。
これも家を訪ねるたび、オバケたちが合唱します。
最初は「なにそれ~」と言っていた子どもたちですが、その魅力的なフレーズに中盤くらいから「お菓子!いたずら!マイホーム!」とオバケたちと一緒に合唱するように。
すっかりオバケたちの仲間になっているのでした。
こんな風に、本来ならハロウィンの主役であるオバケたちが、人間よりもハロウィンのことを知らず、へんてこな行動をするのが、この絵本のたまらなくおもしろい魅力です。
オバケが訪ねるのは変わった家ばかり
こうして、勘違いをしたままオバケたちは家を巡るのですが、どの家も変わった家ばかりなのも、この絵本のおもしろいところです。
犬小屋、お化け屋敷、ごみ屋敷に、忍者屋敷・・・。
全然普通の家に出会えません。
なんなら、お化け屋敷などは見るからにボロボロな見えている地雷です。
もしかしたら、オバケ的には素敵な家なのかもしれませんが・・・。
そんな変わった家たちは、もちろん入った時のアクシデントも度肝を抜くものばかりです。
犬小屋からは普通の家の見た目をしているのに、中からすごい迫力の猛犬。
お化け屋敷では、オバケを驚かしにオバケが出てくると言うわけのわからない状況。
ごみ屋敷では、お菓子を貰うために、片付けの手伝いをするはめに。
と、どの家に行っても、予想外な出来事が起こるのです。
そのアクシデントと、オバケたちのリアクションも、この絵本のとても楽しいところ。
アクシデントに、
「忍者屋敷だったの!?」
「お菓子なんてあるのかな?」
と驚きつつ、オバケたちのリアクションに大爆笑。
「片付け手伝うの偉いね!」
とオバケの株もたまに上がります。
このコントのような、アクシデントとリアクションの繰り返しがおもしろいのです。
自業自得で残念でハロウィンにぴったりな結末
さて、そんなオバケたちがクタクタになりながら最後に見つけた家。
それはこれまでで一番素敵な家でした。
でも、もちろん普通の家ではありません。
子どもたちが夢見てやまない、おとぎ話のような家です。
そこでついにオバケたちはお菓子と、素敵なマイホームに辿り着いたのです。
これで、めでたしめでたしになると思いきや、まだ終わりません。
最後にこのオバケたちらしいエピソードが残されているのです。
これがなんとも、強欲なオバケたちらしい、自業自得で残念な結末。
しかも、ハロウィンの決まり文句「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ」がそのまま絵本になったような、見事な締めくくりになっていて、思わず感心してしまうほど。
「トリックオアトリート!」と言われたら、ちゃんとお菓子をあげなきゃねという気持ちにさせてくれるのでした。
このオバケたちらしさと、ハロウィンらしさが見事に融合した、トホホな結末もこの絵本の素敵なところです。
二言まとめ
わがままで欲張りなオバケたちの、勘違いハロウィンに大爆笑してしまう。
最後まで、強欲で自業自得ななオバケたちのアクシデントに、笑えるハロウィン絵本です。
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