作:ジョン・クラッセン 訳:長谷川義史 出版:クレヨンハウス
「人のものを盗ってはいけません」
よく言われる言葉です。
では、もし盗ってしまったら・・・。
そんな小さな魚の物語です。
あらすじ
小さな魚が帽子をかぶって言った。
これは盗ってきた帽子だと。
その帽子は大きな魚が寝ている間に盗ってきたものだった。
小さな魚は「きっとまだ寝ている」と言う。
でも、大きな魚は起きていた。
小さな魚は「起きたとしても気付かない」と言う。
でも、すぐに気づいた。
小さな魚は「気が付いても僕のことを怪しまない」と言う。
でも、すぐに怪しんで探しに行った。
小さな魚は大きな魚から逃げ切ることが出来るのでしょうか。
『ちがうねん』の素敵なところ
- 盗った側の心境がよくわかる
- 小さな魚が大きな魚の動きに気付いていないドキドキ感
- 想像に任せた結末
物を盗った時の「きっと気付いてない」「きっと見つからない」といった、ドキドキした感情や、言い訳の描き方がとてもリアルです。
そのため、見ている方も見つからないか、捕まらないかとハラハラします。
このハラハラドキドキをさらに感じさせてくれるのが、この絵本の作りです。
「きっと眠っている」「きっと気付いていない」という小さな魚のセリフに対し、ページに描かれるのは起きたり、気付いている大きな魚の絵。
見ている方は、大きな魚の動きがわかっているのに、小さな魚は気付いていないドキドキ感。
「あ、気付いてるよ!」「追いかけてきた!捕まっちゃう!」と子どもたちの声も焦ります。
そして、ドキドキが積み重なった後の最後の場面。
文字はなく、絵のみで展開されます。
帽子は取り返されていますが、小さな魚がどうなったかは描かれません。
「食べられちゃった!?」「帽子を返したんだよ」など様々な見解が飛び交います。
「物を盗ってはいけない」とわかっているけれど、物を盗った小さな魚に感情移入して、心が小さな魚と一緒に逃げてしまう不思議な絵本です。
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