構成・文:大月ヒロ子 出版:福音館書店
ここは美術の遊園地。
今回のテーマは「まる」です。
さあ、色んな人が描いた、色んな丸で遊びましょう!
あらすじ
色んな人が描いた、色んな丸を見てみましょう。
まずは大きな赤い丸(「作品(黒地に赤の円)」吉原治良)。
次はカラフルな的のような多重丸(「はじめの円」ロベール・ドローネー)。
これは丸?丸の中に人の顔が浮かんでる(「無題」ヴィクトル・ヴァザルリ)。
これは、どこかに丸が隠れてる(「作品100ーB」オノサト・トシノブ)。
ワープしてるような早丸(「流動絵画・エニグマ」イーシア・レビアン)。
他にもまだまだ丸はたくさん。
どんな丸が出てくるかな?
どれがあなたの好きな丸?
『まるをさがして』の素敵なところ
- 見ているだけで楽しい、丸を使った美術作品が盛りだくさん
- 子どもにもわかりやすい文章と解説
- 身近な丸の無限の可能性
見ているだけで楽しい、丸を使った美術作品が盛りだくさん
この絵本のまず惹きこまれるところは、その美術作品のおもしろさや美しさでしょう。
自分でも描けそうなシンプルな丸、
曼荼羅塗り絵のような丸、
トリックアートのような丸、
緻密に細かく描き込まれた丸、
などなど、それらはどれも個性的で魅力的。
ページをめくるたびに、予想もできない驚きが待っています。
この一冊で、丸をテーマとした様々な美術作品に出会えるのが、この絵本のとても素敵なところです。
子どもの目線で美術館に行ったとしたら、きっと数ある絵の中の一つとして埋もれてしまうものも多いでしょう。
ですが、丸という子どもにとても馴染みのあるテーマの作品を集めたことで、子どもたちの中に特別な意味が生まれます。
さらに他の絵と、丸について比較しながら見ることで、それぞれの絵の特徴がより鮮明になるのです。
きっと、この体験は、美術に触れ、そのおもしろさに気付くきっかけとなることでしょう。
本当の美術館に行ってみたいと思うきっかけにもなるかもしれません。
そんな美術と触れ合う入り口となってくれるのが、この絵本ならではの大きな魅力なのです。
子どもにもわかりやすい文章と解説
また、ただ美術作品を掲載しているだけではなく、そこに添えられた文章も、この絵本の素敵なところです。
その文章がわかりやすいだけじゃなく、子どもの興味をその絵の特徴へ向けてくれる力があるのです。
例えばたくさんの四角の中に、うっすら丸が隠れている「作品100-B」であれば、
「どこにまる?」
と、子どもが丸を探したくなる言葉。
月を中心とした宇宙のような「いくつかの円」(ヴァシリー・カンディンスキー)であれば、
「あつまる かさなる そまる」
と、丸の重なりによる色の変化へ目が向くように。
文章はシンプルに、文字の配色や配置を美術作品と連動させて、直感的に作品の特徴的な部分へ目を向けてくれます。
これにより、年少クラスくらいの小さな子でも、美術作品をただ見るだけじゃなく、積極的に探して触れ合って積極的に見ることへ繋がっていくのです。
合わせて、巻末に載っている登場した美術作品の解説文も、見逃すことはできません。
これもまた非常にわかりやすく、小学校低学年くらいの子なら、その作品の背景やおもしろさがすんなり理解できてしまうほど。
年長クラスくらいの子でも、大人がかみ砕きつつ伝えれば、きっとわかることでしょう。
作品を見て楽しむだけじゃなく、その背景までわかりやすく伝えてくれることで、その作品をより深く見たり、その作者が感じたことを日常生活の中で知るきっかけになるのです。
この、絵本全体を通した、子どもと美術作品を繋いでくれるわかりやすい文章も、この絵本ならではのとても素敵なところです。
身近な丸の無限の可能性
さて、そんな魅力溢れるこの絵本ですが、その中でもとてもおもしろいと思う部分が、テーマに丸を選んだところ。
こんなにも、子ども達に身近な形もないでしょう。
おもちゃ、信号、看板、車輪、ペットボトルや瓶のふた・・・。
数え上げたらきりがないでしょう。
赤ちゃんだって、丸いものは転がすくらい、小さなときから身近な形が丸なのです。
この絵本はそんな勝手知ったる丸へ、無限の可能性を与えてくれます。
「丸だけでこんな作品が作れるのか」
「変形させるだけでとてもおもしろいものになる」
「丸といっても色んな使い方ができるんだな」
そんな思いを呼び起こさせ、丸というものへの世界観を大きく広げてくれるのです。
同時に、塗る、重ねる、集める、大きさを変える・・・など、色々な表現方法のヒントも一緒に。
こんな風に、ただの身近な形だった丸が、この絵本を通して、無限の可能性に満ちたおもしろいかたちだと気付くことでしょう。
これが、この絵本のとてもとても素敵でかけがえのないところです。
二言まとめ
丸に関するたくさんの美術作品をまとめて見ることで、それぞれの特徴や違い、おもしろさやお気に入りを見つけることができる。
丸という形の無限の可能性とその魅力に気付かせてくれ、自分でも丸を使った表現を試したくなる絵本です。
コメント