たなばた(4歳~,絵本,七夕・行事)

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再話:君島久子 画:初山滋 出版:福音館書店

日本ではあまりメジャーではない人間界での七夕物語。

天女の織姫に、牛飼いが罠を仕掛けて結婚したという衝撃的な展開に驚かされることでしょう。

一般的な七夕伝説と大きく違う展開に息を呑む七夕絵本です。

目次

あらすじ

昔、天の川の東に7人の天女が暮らしていました。天女たちは雲を織っていましたが、中でも上手だったのが末娘の織姫でした。

天の川の西側は人間の世界で、牛飼いと年取った牛が暮らしていました。ある日、年取った牛が突然喋りだし、牛飼いへ天の川に水浴びをしに来た織姫の着物を隠すように言いました。

牛飼いは言われた通り天の川へ行ってみると、本当に天女が水浴びをしています。さっそく牛に言われた通り、織姫の着物を取って隠してします。

牛飼いに気付き、驚き鳥になって飛び去る天女たち。ですが、着物を取られた織姫だけは鳥になることができません。1人残った織姫に、牛飼いは着物を返す代わりに結婚するよう頼みました。織姫は仕方なく牛飼いの妻になったのでした。

結婚してからは幸せに暮らし、子どもも2人生まれました。男の子と女の子です。

けれどある時、天の王母様が織姫のことに気付いてしまいました。そして、王母様は大変に怒り天の使いを出して、織姫を連れ戻しにきたのです。織姫は牛飼いや子どもたちに別れを告げ、泣く泣く天へと帰っていきました。

牛飼いはたいそう悲しみ、すぐカゴに子どもたちを入れて担ぐと、織姫のことを追いかけました。

天の川の向こうの天まで追いかけるつもりでかけていった牛飼い。ところが天の川が消えています。王母様が追いかけてこれないよう天の川を空高く引き上げてしまっていたのです。どうしようもなくなった親子はがっかりして家へと戻っていきました。

家へ戻ると、年老いた牛がまた口をききました。もうすぐ自分は死んでしまうから、自分の皮で作った着物を着て天の川へ行けとのこと。言い終わると、牛は倒れて死んでしまいました。

牛飼いは言われた通り、牛の着物を着て天の川へ行きました。すると、体が浮かび天高く登っていったではありませんか。天までやってきた牛飼いたちは、星の間を縫って進み、とうとう天の川のそばまで来ることができました。

ですが、子どもたちが大喜びで川を渡ろうとしたその時です。王母様がかんざしを投げて天の川に線を引き、天の川の流れを荒れ狂う濁流へと変えてしまったではありませんか。親子3人は抱きしめ合って泣きました。

そのうち、女の子が顔を上げ、持ってきたひしゃくで水を汲み出そうと言い出しました。女の子の言葉に牛飼いも涙を拭き、一緒に水を汲み出し始めます。こうして、牛飼い、女の子、男の子と疲れるたびに交代し、親子3人で休むことなく天の川の水を汲み出し続けました。

そんな3人の姿をみていた王母様は牛飼いたちがかわいそうになりました。そして、年に1度7月7日に、カササギの橋を渡って会うことを許したのです。

それから、牛飼いと子どもたちは天に住み、毎年7月7日に織姫と会っています。

七夕に雨が降るのは織姫が涙を流すから。天の川の両脇を見ると強く輝く牛飼いと織姫の星、牛飼いのそばに2つ並んだ子どもたちの小さな星をみることができますよ。

めでたしめでたし!

『たなばた』の素敵なところ

  • 日本ではあまり知られていない七夕の物語
  • メジャーな七夕伝説との違いが多くておもしろい
  • 織姫・彦星・子どもまで含めた星の由来がわかる結末

日本ではあまり知られていない七夕の物語

この絵本のなによりも驚くところは、日本でメジャーな七夕伝説と大きく違う物語です。

日本で知られる七夕伝説は天界で、働き者の織姫と牛飼いが出会ったことにより仕事をしなくなって引き裂かれたというものがほとんどでしょう。多くの絵本やパネルシアターなども、基本的にはこのメジャーな七夕伝説を元に作られています。

ところが、この絵本の七夕伝説は、また違う中国の七夕伝説をもとに描き出されているのです。そもそも天の川は天と人間界の境目で、牛飼いは地上に暮らす人間だという前提から違います。元々メジャーな七夕伝説に慣れ親しんでいる子ほど、

あれ?空の上じゃないの?

いつものお話と違う!?

といつもとの違いに興味が惹きつけられてしまいます。冒頭から目をキラキラさせて続きを楽しみにしていました。

そんないつもと全然違うワクワク感から、牛飼いが織姫を脅して結婚を迫る展開になるのだから衝撃的。

泥棒じゃん!

牛飼いって悪者だったの!?

とワクワクも吹き飛び、牛飼いへの好感度は地に落ちます。序盤から先が気になりすぎる展開に、子どもたちの心が鷲掴みにされていました。

この、日本で語り継がれるメジャーな七夕伝説と名前以外ほぼ違うと言えるくらい別物の七夕伝説に、驚きの連続から先が気になってしょうがないところが、この絵本のとてもおもしろいところです。

メジャーな七夕伝説との違いが多くておもしろい

筋書からまったく違うので、物語の中にも馴染みがあるけど全然違うというポイントがたくさんあっておもしろいのも、この絵本なではなところ。

そもそも、天の川が地上と地続きという世界観から驚きでしょう。

え!?天の川って普通に行けるの!?

じゃあ、なんで空にあるんだろう?

と、天の川が登場した時点で驚かされること間違いなし。

さらに、

牛飼いが織姫を罠にはめ結婚を迫る

王母様が怒って織姫を連れ戻すかぐや姫のような展開

人間の牛飼いが空を飛び天へと向かう

親子3人で協力して水を汲む作戦

など、織姫・天帝・天の川など、馴染み深いワードをかすらせつつも、全然違う行動やキャラクター性に驚かされっぱなしになるのです。

ただ、驚く中で馴染み深い七夕と整合性が取れてくるというのが、この七夕伝説のよく作り込まれたとてもおもしろいところでしょう。

地上にあった天の川は西王母の力で空へ引き上げられることで、現在の空にある天の川になり、

織姫に会いに行ったことで牛飼いや子どもたちも空に見える星になる。

というように、みんな人間界にいるという世界観から、空に流れる天の川や織姫と牛飼いの家族がみんな星になっていることが自然と繋がっているのです。

だから、お空にいるのか~

と、子どもたちも思わず納得。七夕の由来として、見事に現在見える空模様へと着地させてくれています。

この、よく知っている七夕伝説との違いを楽しみつつも、しっかり空の星を説明するのに納得できるものとなっているのも、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。

思わず、

天の川ってもともと地上にあったんだよ!

と、誰かに伝えたくなってしまう物語ですね。

織姫・彦星・子どもまで含めた星の由来がわかる結末

織姫・彦星・天の川など、現代の空に浮かぶ星たちの由来がわかる七夕物語。この七夕物語の結末を見ることで、メジャーな七夕伝説よりもう少し詳しく星を知ることができるのも、この絵本の素敵なところとなっています。

一般的に七夕といえば、織姫星(ベガ)、彦星(アルタイル)、天の川の3つを見ていくと思います。その中で、織姫星が属する琴座、彦星が属するわし座、織姫星・彦星とともに夏の大三角形を作るデネブ辺りまで話が広がることもあるでしょう。けれど、これらこと座やわし座は西洋的な星座の話。

実は中国では、

琴座の中にあるひし形を機織り機に、

わし座の中の星が天秤棒を担いだ彦星が子どもを運んでいるように、

見られていました。この星の見方から生まれたのが七夕伝説なのですよね。

この絵本を見ると、メジャーな物語では出てこない織姫と牛飼いの子どもが出てきて、新たな星の存在へ目線を向けてもらえます。物語の最後に空に見える子どもたちの星についても一言添えてくれているのもあり、これまでよりも七夕の空が賑やかにみえることでしょう。

この、古代中国における星の見方がメジャーな七夕伝説よりも深く感じられる、もっと七夕の空を見上げたり星を調べるのが楽しくなるところも、この絵本のとても素敵なところです。

ぜひ、この絵本を読んだら、子どもの星がどこにあるか子どもと探し、天秤棒の線を描き加えてみてください。きっと、絵本の中の牛飼いと本当の星が重なると思いますよ。

二言まとめ

メジャーなわかりやすい七夕伝説と大きく違う、世界観や牛飼いの姿に先が気になって仕方ない。

これまで知らなかった七夕の新たな事実の数々に、早く誰かに伝えたくなる日本ではあまり馴染みのない七夕物語です。

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登る保育士ホイクライマー
保育士
絵本大好きなクライミングが趣味の保育士/保育士歴12年/クライミング歴10年
年間200冊以上読み聞かせをしてきた経験を元に、絵本の紹介をしています。
専門書や学術書を読むのも好き!
その中から、日々の保育や子育てに役立ちそうな知識も、深め・濃いめ・具体例多めで、紹介しています。
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