作・絵:ハンス・トラクスラー 訳:杉山香織 出版:徳間書店
最初は生まれたてのかわいい子猫。
ですが、どんどん大きくなってライオンよりも大きな猫に。
大きすぎるこの猫はかわいがってもらえるのでしょうか。
あらすじ
ローマイヤーさんと奥さんは2人きりで大きな家に住んでいます。
息子も自立し家から出て行ってしまい、2人はさみしさから猫を飼うことにしました。
農家のローレンツさんが子猫のもらいてを探していると言う噂を聞き、早速もらいに行くことに。
ローマイヤーさんはオスネコがいいと思っていましたが、奥さんは「オスネコってちょっとおばかさんだって言いますけどね」と心配していました。
農家にはたくさんの子猫がいましたが、みんな貰い手が見つかっていました。
夫婦は唯一、小さすぎて貰い手が見つかっていなかった子猫を貰うことにしました。
帰り道、子猫の名前はチビに決まりました。
小さくてかわいいチビを見に毎日近所の人がやってきました。
しかし、チビは日に日に大きくなり、大型の犬くらいの大きさになっていました。
夫婦はどこまで大きくなるのか心配になってきました。
そこで、心配事を忘れのんびりしようとチビを猫のホテルに預け、旅行に出かけることにしました。
しかし、すぐに猫のホテルから電話が来て夫婦は慌てて帰ることになりました。
夫婦が帰ってチビを見に行くと、チビはさらに大きくなり、ライオンぐらいの大きさになっていました。
しばらくすると、チビはカバくらいの大きさになり、夫婦は一階をチビの部屋にし、2人は二階を使うことにしました。
ある日、家の前に消防士、警察官、テレビカメラが集まっていました。
チビが大きすぎて危険なので、動物園へ連れていくと言うのです。
しかし、大きすぎて家から出すことが出来ません。
別の日に屋根を外し、クレーンで持ち上げることになりました。
その様子を、夫婦はテレビで見て知りました。
奥さんはチビを動物園に連れていくと言うことに怒りました。
次の日、大学の先生がやってきて、チビの体を調べました。
そして、ニュースで大きくなる病気で、他の猫にうつるかもしれないから、ライオン用の檻に入れ観察が必要だと発表しました。
そのニュースを見て、たくさんの人が夫婦の家の前に集まり「チビに手を出すな」とデモをしました。
デモを受け、警察署長が夫婦の家にやってきました。
チビを決して外に出さないと言う約束の元、動物園に移さなくてもよいということになったのです。
夫婦はチビが寂しくないよう、たくさん遊んであげました。
チビは喜んでいるふりをしていましたが、本当は一人で窓の外を眺めていたいのでした。
チビはこのまま窓の外を見ているだけで、外に出ることも出来ずに一生を終えるのでしょうか。
『ねこがおおきくなりすぎた』の素敵なところ
- ひたすら猫が大きくなるというわかりやすい不思議現象
- もし、そうなったらどうなるのかというのが細かくリアルに掘り下げられている
- 最後にまさかの伏線回収
この絵本の根幹になる不思議な出来事はいたって単純です。
それは「小さな子猫がひたすら大きくなっていく」ということ。
このわかりやすい、かつ、インパクトの強い出来事が子どもに刺さります。
「えー!?」「大きすぎる!」「重そうじゃん!」などなど、子どもたちも単純に驚いてくれます。
この絵本の素敵なところは、その「もし、こうなったら」という部分を現実的に細かく掘り下げていくところにあります。
魔法やメルヘンな出来事は出てきません。
大きくなっていくにつれ、ローマイヤーさんと猫が一緒にくつろいでいたソファは占領されます。
子猫の時、来ていた人は子猫じゃなくなったので、訪ねてこなくなります。
猫のホテルの人は見切れないと怒る。
消防や警察がかけつけて大騒ぎになり、研究者もやってきて研究対象にしようとする。
などなど、現実世界で起こりそうなことばかりです。
それにより、「もし、○○になったら」をリアルな視点から見ることが出来ます。
そして、最後に驚かせてくれるのが、まさかの伏線回収です。
最初の方に言っていたあるセリフが最後の伏線回収になっています。
わかると「なるほど!」と思いますが、ある程度読解力が育っていないと気づかない部分でもあります。
そんな「もし、○○になったら」をじっくりしっかり現実的に考えられる絵本です。
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