ハのハの小天狗(4歳~)

絵本

作:飯野和好 出版:ほるぷ出版

いつも通りの帰り道。

急に忍者が現れた。

絶体絶命と思ったその時。

ぼくの姿はハのハの小天狗になっていたのです。

あらすじ

春も盛りの温かい季節。

小学生のぼくはみすずちゃんと、学校からの帰り道でした。

ぼくたちが峠にさしかかった時、「おいっ、ハのハのっ」と声が聞こえてきたのです。

びっくりして見上げると、雑木林の中から忍者の一団が現れたではありませんか。

忍者は「ハのハの小天狗、みすず姫はもらいうけたぞ」と叫びながら切り込んできました。

ぼくはびっくりして構えると、いつの間にか侍姿のハのハの小天狗になっていたのです。

それと一緒にみすずちゃんも姫の姿に。

忍者たちをどんどん倒すと、忍者は峠の方へ逃げていきます。

それを追いかけていくと、岩陰から忍者の頭が現れました。

頭は次々と手裏剣を投げてきます。

弾くので手一杯のハのハの小天狗。

頭を倒して、みすず姫を守り抜くことが出来るのでしょうか。

『ハのハの小天狗』の素敵なところ

  • 子どもが妄想するような自由な世界
  • 独特かつ大迫力の癖になる絵
  • まるで時代劇のようなセリフや言い回し

この物語は唐突に始まります。

そう、まるで子どもが急にイメージの世界に沈み込んでいくように。

きっとこの絵本の男の子は、峠を歩いている時に忍者と戦い、みすずちゃんを守って戦うぼくのイメージが湧いたのでしょう。

気付けばイメージの世界へ入り込み、ハのハの小天狗になっているのです。

イメージ次第でなんにでもなれる。

そんなことを感じさせてくれるのです。

大人が見ると、子どものイメージの世界へ触れるきっかけをくれる。

子どもが見ると、自然に当たり前のこととして受け入れる。

それぞれの見え方の違いも、この絵本の魅力かもしれません。

さて、このイメージの世界観をより味わい深いものにしているのが、独特な雰囲気を醸し出す、味のある絵だと思います。

一度見たら忘れられません。

特に忍者はその独特のフォルムと、男前すぎる顔が脳裏に焼き付くことでしょう。

そんな忍者とハのハの小天狗の戦いは臨場感抜群です。

刀と刀のぶつかり合い、迫る手裏剣、宙を舞う忍者・・・。

そのどれもが躍動感たっぷりに描かれていて、まるで映画でも見ているかのよう。

これには盛り上がらずにはいられません。

「おお!」「危ない!」「小天狗強い!」

と、歓声が上がります。

この盛り上がりには絵だけなく、その文章やセリフにも秘密があります。

「トアーッ」と頭が怪鳥のように飛び上がった。

「チェーイ」と下から払えば・・・。

というように、時代劇風の言い回しや、臨場感あふれるセリフの掛け合いと擬音などにより、さらに盛り上げてくれるのです。

見ているだけで、本当に戦いのさなかにいるような臨場感を感じられると思います。

急に入り込んでいく時代劇風なイメージの世界。

そこで繰り広げられるノンストップ剣劇アクション絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました