もものうえのたねまろ(4歳~)

絵本

作:降矢なな 出版:福音館書店

桃畑で見つけた大きな桃。

その桃は、桃の種で出来た人たねまろのお屋敷だったのです。

桃の中では、楽しく美味しい桃尽くしのひと時が待っていました。

あらすじ

夏になり、桃が色づき始めました。

ももこは毎日家の裏の桃畑に、桃の様子を見に行っていました。

ある朝、桃畑に行くと、桃たちが甘酸っぱい匂いを漂わせています。

ももこはその匂いを思いっきり吸い込みました。

すると、畑の向こうが桃色に輝き始めたのです。

ももこが輝いている方へ行ってみると、とてつもなく大きな桃がありました。

大きな桃を見ていると、小さな戸があることに気付きました。

戸の前にはぽっくりが置いてあります。

そして、ぽっくりをはいて中へ入るようにと手紙もあります。

ももこがぽっくりをはいてみると、ぽっくりがひとりでに動き出し、桃の中へ入り上の方へももこを運んでいきました。

ぽっくりは銀色の御簾の前で止まりました。

中から「さあ、入れ」と声がします。

ももこが入ってみると、そこにはお付きの桃に囲まれて、桃の種の顔をしたおじいさんが座っていました。

おじいさんは「もものうえのたねまろ」だと名乗りました。

ももこもかしこまって、丁寧にお辞儀とお礼を返します。

たねまろは満足そうにしていて、ももこは大人になった気分でした。

まずはたねまろがお抹茶を入れてくれました。

これはももこには苦過ぎました。

次に、桃尽くしのごちそうが出てきました。

これにはももこも大喜びでしたが、上品に食べました。

その後も、早口言葉をしたり、踊ったりと楽しく時間は過ぎていきました。

そして、ももこが帰る時間になり、お暇することをたねまろに伝えると・・・。

『もものうえのたねまろ』の素敵なところ

  • 桃の中に入るというまさかの展開
  • 大人のお客様のように扱われる嬉しさ
  • 読むと桃にかぶりつきたくなる

大きな桃が出てくるお話は数あれど、桃の中に入り、そこがお屋敷になっているお話は中々聞きません。

しかも、桃のイメージにぴったりの、日本や中国風のお屋敷です。

その中はまさに桃源郷。

美しく、楽しく、桃尽くし。

挨拶のお抹茶には桃の砂糖漬けがついていて、出てくる料理も桃ばかり。

中には桃のシチューなど、味の想像がつかないものもあったりします。

桃の早口言葉で遊んだり、お付きの人は顔が桃だったりと、全て桃と繋がっています。

そんな桃のお屋敷にお呼ばれしたももこ。

そこでは大人のような扱いを受けます。

対等の相手として扱われ、自然とももこも大人のような立ち振る舞いに。

「このたびはお招きくださいまして、どうもありがとうございます」

「けっこうなお味ですこと」

と、言葉遣いも大人のように上品になってしまいます。

この、大人の偉い人に対等に扱われるというのは、子どもにとって物凄く誇らしい体験です。

ももこの表情もとても誇らしげ。

それをももこと一緒に味わえるのも、この絵本の素敵なところです。

そして、もう一つ素敵なところが、読むと物凄く桃を食べたくなること。

それくらい、桃の魅力をふんだんに伝えて来るのです。

桃畑に実る桃。

甘酸っぱい香り。

美味しそうな桃料理たち。

つやつやとしたとても大きな桃。

でも、なによりも桃にかぶりつきたくなるのは、最後のページです。

このページを見たら、自然と涎が出てしまうことでしょう。

桃の瑞々しさや、滴る果汁が自然と頭に浮かんでくるのです。

桃の中での、楽しく、美味しく、不思議な体験。

それを見ることで、「自分も入ってみたい」と思うのと同時に、もの凄く桃が食べたくなる絵本です。

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