作・絵:たかいよしかず 出版:国土社
かわいい妖怪たちが住む妖怪村に、雪が降りました。
そんな村に遊びに来たのが、南国育ちの妖怪きじむる。
でも、きじむるにはここは寒すぎるようで・・・。
あらすじ
妖怪村に雪の季節がやってきました。
妖怪たちは、雪だるまやかまくらを作って大喜びです。
そんな中、あかなめのなめなめが、次の休みにやってくる友だちの話を始めました。
みんながどんな妖怪なのかを聞くと、南の温かい島から来るキジムナーの妖怪だそう。
それを聞くと、みんなで一緒に雪合戦をしようということになりました。
次の休みの日。
キジムナーのきじむるがやってきました。
早速、雪合戦をすることになり、二口女のぺろりが説明をしますが、きじむるは「ひーさんひーさん」と言っています。
なんという意味かを、座敷童のわらしちゃんがなめなめに聞くと、「寒い」という意味でした。
そうこうしているうちに、雪合戦のチームが決まりました。
審判はかまいたちのかまぞうと、コロボックルのころるんです。
雪合戦が始まると、みんな雪玉を作ったり投げたりしていますが、きじむるはまだ「ひーさんひーさん」と言って震えて動けません。
そこでチームメイトが手袋と、帽子と、マフラーを貸してあげました。
すると、張り切って雪玉を作り始めるきじむる。
次から次へと雪玉を投げていきます。
その勢いは凄まじく、審判席や観客席まで飛んでいきます。
審判のかまぞうも我慢できなくなり、雪玉を切り裂いて参加する騒ぎに。
この雪合戦、結果は一体どうなるのでしょう。
『ようかいむらのゆきがっせん』の素敵なところ
- たくさん出てくるかわいい妖怪たち
- 異国情緒あふれるきじむるがかわいくておもしろい
- 審判も巻き込む大騒ぎの雪合戦
たくさん出てくるかわいい妖怪たち
この絵本のとても素敵なところは、かわいい妖怪たちでしょう。
あかなめ、雪女、座敷童、小鬼、二口女、かまいたち、河童、コロボックル・・・。
色々な地方の、様々な妖怪たちが出てきます。
その姿のかわいいこと。
妖怪の怖いイメージなど微塵もありません。
さらに、親しみやすさを増しているのが、妖怪たちのニックネームです。
あかなめのなめなめ、雪女のぶるる、座敷童のわらしちゃん・・・。
など、どれも特徴を捉え、覚えやすいものばかり。
すぐにでも友だちになれそうです。
こんな風に、魅力的な妖怪たちと出会えるのが、この絵本の素敵なところです。
異国情緒あふれるきじむるがかわいくておもしろい
そんな妖怪たちの中で、この絵本のメインになるのはきじむるです。
このきじむるが、異国情緒満載で他の妖怪とはまた違った魅力があるのもおもしろいところです。
まず、言葉が特徴的。
南の島の妖怪なので、沖縄の方言でしゃべります。
あいさつは「はいさい」。
寒いと「ひーさん」と震えます。
手袋などを借りた時は「にふぇーでーびる」とお礼を言います。
この方言が、妙にかわいい。
また、温かい国の妖怪なので、雪の中でパンツ一丁だったり、寒すぎて動けなくなったりと、住む国の違いに戸惑う姿も印象的。
最初は違いが目立つきじむるが、段々とみんなに溶け込んでいき、仲良くなっていく姿もまた素敵なところです。
審判も巻き込む大騒ぎの雪合戦
さて、この絵本のメインイベントは雪合戦。
この雪合戦も、妖怪ならではなものになっていると同時に、基本に忠実なのもおもしろいところです。
妖怪の力をフルに発揮するのかと思いきや、雪玉を作る人と投げる人に役割分担をし、しっかりと投げ合います。
その姿は妖怪など関係のない、「ザ・雪合戦」と言った様子。
でも、そのオーソドックス感が、むしろ雪合戦をしたいと思わせてくれるから不思議なものです。
ただ、後半戦になって激しさを増してくると、次第に妖怪感が出てきます。
ぶるるが氷の壁を作ったり、かまいたちが雪玉を切り始めたり。
そして、最後の決着をつけるのが・・・。
と、最後は妖怪の雪合戦らしい幕引きとなります。
この雪合戦のスタンダードさと、妖怪らしさのバランスもこの絵本のおもしろく素敵なところだと思います。
二言まとめ
寒さに弱い妖怪の雪景色への反応や、雪合戦へ参加する姿がおもしろい。
かわいくて、親しみやすい妖怪たちを見て、妖怪のことが好きになる絵本です。
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