あむ(4歳~)

絵本

作:小風さち 絵:山口マオ 出版:福音館書店

飼い主の男の子のことが大好きな黒犬あむ。

ある日、あむを置いて、友だちと遊びに行ってしまった。

どうしても行きたいあむ。

その時、偶然首輪が外れて・・・。

あらすじ

黒犬あむは、飼い主のかっちゃんが作ってくれた小屋に住んでいる。

かっちゃんがリードを持ってやってきたら散歩の合図。

あむは散歩が大好きで、かっちゃんを引っ張って走り出す。

かっちゃんは散歩に行く時、「田んぼの中には入っちゃダメ」「落ちているものを食うんじゃない」といつも言っていた。

しばらく行くと、かっちゃんとあむの秘密の場所に着いた。

川が流れ、洞窟へと流れ込んでいる場所。

ひんやり冷たい。

そこにいると、不思議な音が聞こえてくる。

かっちゃんはそれを、波の音で、海から聞こえてくるのだと言う。

かっちゃんは「今度海まで散歩しよう」と言ってくれた。

あむは、海がどんなところか知らなかったが楽しみだった。

次の日、かっちゃんの友だちが、自転車に乗ってやっていた。

友だちはかっちゃんを誘い海へと出かけてしまった。

あむは留守番だ。

でも、一緒に行きたいあむ。

動き回っているうちに、あむの首輪が外れてしまった。

あむはまだ見ぬ海を目指して進んでいく。

外はとても暑い。

かっちゃんに田んぼの中には入っちゃダメと言われていたから、田んぼには入らなかった。

代わりに田んぼの水路を進むあむ。

水路の中は気持ちよかった。

進んでいくと、かっちゃんとの秘密の場所に着いた。

すると、あの波の音が聞こえてくる。

あむは音のする方へ進んでいった。

しょっぱいような生臭いようなにおいもし始めた。

あむは無事に海へ着くことができるのでしょうか?

そして、かっちゃんと会えるのでしょうか?

『あむ』の素敵なところ

  • あむの言葉から犬の気持ちが目一杯伝わってくる
  • 表情豊かでかわいいあむ
  • 海までの楽しくも大変な冒険

あむの言葉から犬の気持ちが目一杯伝わってくる

この絵本は、あむの一人称視点で描かれています。

かっちゃんの言葉への反応や、あむの言葉のひとつひとつ。

その全てから、イヌの気持ちが目一杯伝わってくるのです。

散歩をする時に「よし来た散歩。行こうぜ散歩。いちにの散歩。おれは散歩が大好きだ。」と、リードを見た瞬間に飛び跳ね喜ぶ姿が想像出来たり、

留守番を頼まれたときに「かっちゃんかっちゃん、おれも行く。」と吠えて、跳ねて、ぐるぐる回る姿は、まさに飼い主が家を出る時の反応。

楽しそうに水路を走った後に「だけどなあ。かっちゃんと一緒じゃないとおれは寂しい。」とうなだれる様子からは、飼い主の存在がどれだけ大切かが感じ取れます。

こんな風に、あむの感じることや、言葉のひとつひとつから、飼い主との時間がどれだけ大切で楽しい時間なのかが痛いほどに伝わってくるのです。

表情豊かでかわいいあむ

そんなあむは、見た目にも表情豊かです。

散歩のときに、リードを思い切り引っ張り走り出す力強い姿からは、嬉しさが滲み出ているし、

暑い夏の道を行く時は、舌をだらんと出しぐったりした表情。

でも、水路を走り始めたとたん、目をキラキラさせ楽しさ全開へ早変わり。

と思ったら、かっちゃんがいないことを実感し、目を閉じて悲しみに暮れる。

一ページ一ページコロコロと変わる表情を見ていると、読み進めるごとにあむへの愛着が強まります。

あむの表情豊かな姿と、素直な気持ちや言葉が合わさって、あむのかわいさが思い切り伝わってくるのも、この絵本のとても素敵なところです。

海までの楽しくも大変な冒険

さて、かわいいあむですが、かっちゃんのいない一人旅は、大変なことの連続でした。

道もわからないなかで、海を目指す大冒険です。

いつも行く道は勝手がわかりますが、行ったことのない道にはあむの知らない危険もたくさん。

踏切があったり、見たこともない食べ物が落ちていたり・・・。

そのひとつひとつへの反応や、対応にハラハラドキドキさせられます。

その中で、徐々に近づいてくる海の気配。

この紆余曲折を経て、少しずつ海が近づいて来ているのを、あむと一緒に感じながらゴールを目指すのも、この絵本のとてもおもしろいところだと思います。

二言まとめ

イヌの目線で描かれる、日常の幸せや、一人で知らない道へ挑むドキドキハラハラ感がおもしろい。

イヌの見る世界や、飼い主の存在の大きさを素直に感じ取れる絵本です。

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