作:メアリー・レイナ― 訳:久山太市 出版:評論社
ある夜、父母が出かけることになった。
そこで、子ブタたちのため、ベビーシッターを呼ぶことに。
けれど、やってきたベビーシッターはオオカミだったのです。
あらすじ
あるところに、パパ、ママ、そして10匹の子ブタたちのブタさん一家が住んでいた。
ある日、パパとママが出かけることになり、ベビーシッターを呼ぶことになった。
子ブタたちにそのことを話すと、ブーブーブーと文句を言う。
だって、これまでのベビーシッターとうまくいかなかったから。
ママは子どもたちをなだめると、風呂に入れ、ベッドに入れ寝かしつけた。
ママがちょうどよそ行きの服に着替え終わった時、玄関のベルが鳴った。
ドアを開けると、そこにはオオカミのベビーシッターが立っていた。
けれど、ママはそんなこと気にせずに、家へ入ってもらった。
ママはパパの着付けを手伝っていたが、ベビーシッターの名前を聞いていないことに気付きリビングへ。
そこでは、ベビーシッターがソファでくつろぎ、編み物をしていた。
名前はウルフだと聞くと、ママとパパは出かけて行った。
夜も更け、やることもなくなり退屈しだしたウルフさん。
そのうちお腹が空いてきたので、オーブンに火をつけた。
そして、静かに子ブタたちのベッドルームへ。
一匹の子ブタを小脇に抱え、ウルフさんは階段を降りたいった。
子ブタたちが跳ね起きて、後をつけて見ると・・・。
『オオカミと10ぴきの子ブタ』の素敵なところ
- いいオオカミなのか?悪いオオカミなのか?というドキドキ感
- 静かに本性を出すオオカミの怖さ
- 子ブタたちとオオカミの白熱する戦い
いいオオカミなのか?悪いオオカミなのか?というドキドキ感
この絵本のなによりおもしろいところは、オオカミが家にいると言うドキドキ感でしょう。
普通なら、オオカミを家に入れないようにするところを、この絵本では招き入れてしまいます。
でも、ベビーシッターという肩書もあり、受け答えも丁寧です。
子どもたちは「オオカミだよ!」「家に入れちゃダメ!」と最初は言っていますが、オオカミの姿を見ているうちに、
「いいオオカミなのかな?」
「騙してるだけじゃない?」
「でも、優しそうだよ」
と、いいオオカミなのか、悪いオオカミなのか頭を悩ませます。
オオカミが何か言い、なにかするたび、子どもたちの予想が揺れ動き、「優しいオオカミのいいお話」と「悪いオオカミの怖いお話」の間を行ったり来たり。
このドキドキ感がたまらなくおもしろいのです。
そして、大体「いいオオカミ」と結論付けられ始めた頃、オオカミが本領を発揮するのもおもしろいところ。
オオカミが動き出し、オーブンに火を入れ、ベッドルームに向かう時、安心していた子どもたちの心を一気にドキドキさせてくれるのです。
静かに本性を出すオオカミの怖さ
こうして、本性をあらわしたオオカミですが、その襲い方がこれまでのオオカミと違うところが、このお話ならではの恐ろしいところです。
普通のオオカミは口を開け、大きな声で襲い掛かってくることでしょう。
しかし、このオオカミは違います。
すでに家の中にいて、当たり前のように静かに近づき、スーパーで買い物でもするように、子ブタを抱えて出ていくのです。
「うおおー!」とうなることもなければ「助けて!」と叫ぶこともありません。
ただ静かに、部屋に入ってきて、子ブタを抱え、無言で部屋を出ていくのです。
この静けさが襲われるより恐ろしい。
子どもたちも、
「だれか気付いて!」
「助けって言わなきゃ!」
と、必死に訴えますが、なぜか小声。
この異常で恐ろしい状況に、大きな声を出したら、自分も食べられてしまうといった雰囲気を感じているようでした。
この凶暴さを隠し、最初から最後まで徹底した、したたかな怖さもこの絵本の魅力の一つ。
静かに襲ってくる本当の怖さに、背筋が凍る体験を味わえることでしょう。
子ブタたちとオオカミの白熱する戦い
さて、こうして連れ去られた子ブタですが、それを助けられるのは、他の兄弟たちしかいません。
最初はなにが起こったか理解が追いつかない兄弟たちですが、追いかけるうちするべきことがわかります。
こうして助けるため、勇敢にオオカミに立ち向かう子ブタたち。
その戦いぶりが、とても白熱したものになっているのも、この絵本の素敵なところ。
オオカミの不意を突いたものの、子ブタとオオカミでは身体能力が違います。
そんなオオカミの抵抗も見事に描かれ、一筋縄ではいきません。
その様子はまさに死闘。
負けたら食べられるという必死さと、兄弟の絆の強さがひしひしと伝わってきます。
まさに手に躍動感にあふれ、手に汗握るこの戦いも、この絵本のとてもおもしろく盛り上がるところです。
二言まとめ
ベビーシッターとしてオオカミが来る、「いいオオカミなの?」「悪いオオカミなの?」という、ドキドキ感がたまらなく怖くておもしろい。
当たり前のように子ブタをさらうオオカミに、心の底から怖さを感じる絵本です。
コメント