作:やまもとななこ 出版:講談社
土俵に上がる明けの海。
相手は自分よりも大きな横綱です。
さあ、優勝決める大一番が始まります。
あらすじ
今日は優勝を決める大一番。
その大一番に初めて挑む明けの海が、気合十分で土俵へと上がってきました。
迎え撃つのは、最強の横綱武留道山(ぶるどうざん)。
明けの海の二回りはあろうかという巨体です。
塩をまき、両者見合います。
そして、はっきょい!
試合が始まった瞬間、仕掛けたのは明けの海。
体全体でぶつかっていきます。
負けじと武留道山も張り手で返す。
しかし、押し返されない明けの海。
武留道山のまわしをがしっと掴みました。
合わせて、武留道山も開けの海のまわしを掴みます。
そして、そのまま押し出しの姿勢に。
明けの海はどんどん押され、土俵際。
もう後がありません。
なんとか踏みとどまった明けの海。
このピンチを乗り越えることはできるのでしょうか・・・?
『はっきょいどーん』の素敵なところ
- 間近で見ているような物凄い臨場感
- 力強い力士の肉体美
- 手に汗握る熱い展開
間近で見ているような物凄い臨場感
この絵本のなにより熱中させてくれるのは、相撲の試合の臨場感でしょう。
土俵に上がり、塩をまき、みあってみあって・・・。
と、試合の一部始終を見せてくれるのもさることながら、力士の力強い動きや、気合の入った表情まで、大一番の張りつめた空気が伝わってくるのです。
さらに盛り上げてくれるは、実況のような文章。
「待ったなし!優勝きめる大一番。初めて挑む明けの海。」
「迎え撃つのは、最強の横綱、武留道山」
と、筆で書いたような力強い字体で描かれます。
この冒頭で、一気に相撲の世界へと引き込まれてしまうでしょう。
子どもたちも最初は、
「お相撲さん!」
「太っちょだね~」
などなど、談笑しながら見ていましたが、1~2ページで真剣な表情と、ピリッとした空気感へ。
まるで、明けの海の気合が伝染しているようでした。
もちろん、そこから始まる試合も臨場感抜群。
「はっきょい!のこった。」と同時の「どーん」という体当たり。
「うわー!痛そう!」
と、子どもたちはもう完全に入り込んでいます。
そこからの張り手や、まわしを掴む攻防に、固唾をのんで見守ります。
「武留道山でけ~。」
「こんなのに勝てるの・・・」
子どもたちの心の声が漏れ聞こえるのと同時に、土俵際まで押される明けの海。
「あー!外に出ちゃうよ!」
「頑張って!」
子どもたちの応援の甲斐あってか、明けの海が踏みとどまります。
もう、絵本を読んでいる場所は完全に土俵。
気分は国技館の最前列。
熱い熱気に包まれます。
この、臨場感がものすごいのです。
まさに、本当の相撲を見ている気分になれるのが、この絵本のとても熱いところです。
力強い力士の肉体美
そんな臨場感を高めてくれるのに、欠かせないのが力強く描かれる力士の肉体美でしょう。
「どーん」と体当たりした腕・背中・お尻・足には、筋肉が浮き出し、全ての力をフルに使っていることが伝わってきます。
まわしを掴む時のごつごつとした手は、まるで重機のようで、まわしにがっちりと食い込んでいます。
極めつけは、土俵際で踏みとどまる足。
土俵の淵につま先をかけ、かかとがつかないように耐える姿は、全ての筋力をつま先の一点に集中しているかのような力強さ。
ふくらはぎの躍動感がまだ諦めていないことを、見ている人に伝えてくれます。
この一挙手一投足の力強い肉体美も、試合をとても盛り上げてくれるところ。
力士たちの本気が、体の筋肉一つ一つから生きた感覚として伝わってくるのです。
手に汗握る熱い展開
さて、この大一番の結末は、まさに歴史に名を残す名勝負といった様相となりました。
体の大きな武留道山に、土俵際まで押される明けの海。
まさに絶体絶命です。
ここからの展開が、本当に熱い。
きっと、展開としては予想できる流れだと思います。
ただ、そんなことは関係ないくらい熱いのです。
明けの海の「負けるもんか」という、大一番にかける思いと気合。
臨場感溢れる構図。
力強い絵。
これらが組み合わさって、ただただ明けの海を応援するしかないのです。
子どもたちも、土俵際に追い込まれたところから、
「あー!出ちゃう!止まってー!!」
「がんばれー!投げられるぞ!」
「明けの海、勝って―!!!」
と、完全に観客として声を上げていました。
そして、その声援を受けての結末。
開けの海も、子どもたちも全力を出し切り、清々しい顔で終わります。
この、手に汗握り過ぎる試合展開と結末も、この絵本でしか味わえない素晴らしいところです。
二言まとめ
目の前で本当に相撲を見ているような臨場感に、心が国技場へ飛んでいってしまう。
手に汗握る展開に、心の底から応援の声と歓声あげてしまう熱すぎる絵本です。
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