作:ねじめ正一 絵:いぬんこ 出版:すずき出版
ある日、父さんが手品を見せてくれることに。
手のひらに乗せた500円玉を握りしめると・・・。
なんと、父さんが消えちゃった!?
あらすじ
ある日、父さんが、娘のあーちゃんを呼んだ。
あーちゃんに手品を見せてくれるらしい。
父さんは、ポケットから500円玉を取り出し、左手の平に乗せた。
そして、ぎゅっと握ったら、500円玉は床に落ち、父さんの姿は消えてしまった。
驚いたあーちゃんは、500円玉を拾って、母さんにそのことを話しに行った。
あーちゃんとお母さんは、家の中を探すことにした。
けれど、父さんはどこにもいない。
家中を探し回っている時、庭にいるイヌのジョンが吠えているのに気づいた。
もしかしたら、犬小屋の中にいるのかもしれない。
あーちゃんが犬小屋の中を探してみると・・・。
『とうさんのてじな』の素敵なところ
- 父さんが消えてしまう魔法のような手品にびっくり
- こっそりページ内にいる父さん
- けちんぼな父さんの簡単な見つけ方
父さんが消えてしまう魔法のような手品にびっくり
この絵本のおもしろいところは、ビックリ仰天な父さんの手品でしょう。
500円玉を握っただけで、姿が消えてしまうのですから。
これには子どもたちも、あーちゃんと一緒に「消えちゃった!」と大慌てです。
「どこいっちゃったんだろう?」
「手品と言うより魔法じゃない!?」
など、みんなざわざわしてしまいます。
この単純ゆえに、種も仕掛けもわからなすぎる手品がおもしろい。
「急いで隠れたんじゃない?」
「魔法の500円玉なんだよ」
「500円玉になっちゃったのかな?」
など、どうやっているのか、色々な可能性を考え始めるのです。
このどうなっているのかわからなすぎる手品に、みんなで驚き、あーだこーだ言うところがこの絵本のまずおもしろいところです。
こっそりページ内にいる父さん
ただ、考えても種と仕掛けはわからないので、いったん置いておいて、父さんを探しに行くことに。
トイレ、お風呂場、父さんの部屋、あーちゃんの部屋と、家じゅうを探していきますが見つかりません・・・あーちゃんには。
実は、窓の隙間から父さんが見えていて、子ども達には見つかっているのです。
口に人差し指を当て、「しーっ」のポーズをする父さん。
子どもたちは、
「あ!あそこにいるよ!」
「どこどこ?」
「でも、教えちゃだめだよ!」
「ここにいるよー!」
と、見つけて喜んだり、父さんの意思を尊重したり、あーちゃんの味方になったりと反応は様々。
でも、共通するのは、父さん探しがおもしろいということ。
ページをめくるたび、お話そっちのけで父さんを探していました。
この、こっそり隠れている父さん探しも、この絵本のとても楽しいところです。
けちんぼな父さんの簡単な見つけ方
さて、そんな父さんの見つけ方ですが、とても簡単なことでした。
ある一言を言うだけで、父さんは自分から出てきてしまうのです。
これがなんとも、庶民的で子どもっぽい。
むしろこの一言を言うあーちゃんの方が大人に見えるくらいです。
あんなに探していたのに、簡単に出てくる父さん。
この手品の凄さと、庶民的なけちんぼさのギャップもまた、この絵本のクスリとさせられる、とても素敵なところです。
きっと、この結末を見て、父さんのイメージが凄い人から、身近な父さんに変わっていることでしょう。
二言まとめ
父さんの予想を超えたすご過ぎる手品に、あーちゃんと一緒にビックリ仰天。
でも、手品の凄さと、けちんぼ父さんの簡単な見つけ方のギャップに、最後はほんわかしてしまう絵本です。
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