作:三浦太郎 出版:童心社
野菜や果物が、へたの帽子をかぶってお出かけします。
帽子がない時の、なんか足りない感覚と、
帽子をかぶったピタッと感が癖になる絵本です。
あらすじ
ナスの父さんが走ってきます。
へたの帽子をかぶって、仕事に出かけていきました。
パイナップルの兄さんが走ってきます。
葉っぱの帽子をかぶって、出かけていきます。
カキの姉さんが走ってきます。
へたの帽子をかぶり、自転車に乗って出かけていきます。
さやえんどうの3兄弟が走ってきます。
へたの帽子をかぶり、遊びに出かけていきました。
トマトの母さんと、プチトマトの赤ちゃんが転がってきます。
へたの帽子をかぶって、赤ちゃんをベビーカーに乗せて出かけていきます。
『ぼうしかぶって』の素敵なところ
- 帽子をかぶった時のピタッと感
- 一緒に言いたくなる楽しい言葉と音
- 帽子をかぶって出かけたくなる
帽子をかぶった時のピタッと感
この絵本のなによりおもしろいところは、へたを帽子に見立てているところでしょう。
最初は、へたが取れた状態で走ってくる食べ物たち。
この姿の違和感がすごい。
大体なんの食べ物かはわかるけれど、妙な知っている人なのに外見が違うような、居心地の悪さがあるのです。
中にははへたがないと、カキをミカンだと思うなど、他の食べ物と間違えてしまう子も。
ですが、ページをめくり、帽子をかぶると、そんな違和感は一瞬で吹き飛びます。
「ナスになった!」
「パイナップルだ!」
と、子ども達のテンションもうなぎのぼり。
ものすごくしっくり来ているのでしょう。
まるで、パズルの最後のピースをはめたようなピタッと感があるのです。
この帽子をかぶった時の気持ちよさが、この絵本のとてもおもしろい素敵なところ。
きっと、野菜や果物のへたが帽子に見えて、かぶせたり脱がせたりしたくなることでしょう。
一緒に言いたくなる楽しい言葉と音
また、絵本の中に使われている言葉や音が楽しいのも、この絵本の素敵なところです。
食べ物たちは、みんな走って登場するのですが、その時の音が
「ナスの父さん、たたたたた」
「パイナップルの兄さん、どどどどど」
「カキの姉さん、さささささ」
と、一緒に言いたくなってしまう楽しい音なのです。
特に同じ音の繰り返しなので、小さい子にも真似しやすく、つい口をついて出てしまうのもポイント。
絵本の楽しさにつられて、自然とおしゃべりに繋がります。
もう一つ、この絵本の言いたくなってしまうフレーズで忘れてはいけないのが、
「いってきまーす」
の繰り返し。
食べ物たちは、帽子をかぶるとみんな「いってきまーす」と出かけていきます。
すると子どもたちも当たり前のように「いってきまーす」。
いつの間にか、自分たちも野菜や果物になって帽子をかぶった気分になっているのです。
なにより「いってきまーす」という言葉は、ただ言うだけで楽しくなってしまうのでしょう。
ままごとなど、遊びの中でもよく言っていますしね。
そんな「いってきまーす」を絵本の流れに合わせて何度も言えるところも、この絵本のとても楽しいところなのです。
帽子をかぶって出かけたくなる
さて、すっかり食べ物たちと出かける気分を共有した子どもたちの心は、お出かけモードになっていることでしょう。
帽子をかぶって早く出かけたくて仕方ありません。
おもしろいのは、帽子をかぶるのが嫌な子も、絵本からの繋がりだとけっこう帽子をかぶってくれること。
帽子を嫌いな子はけっこういます。
多分、クラスに1~2人はいるでしょう。
そんな子たちも、この絵本を読んだ後、
「ナスさん、帽子をかぶりましたかー?」
のように、絵本の世界観で声をかけると、自分から「はーい!」とノリノリで帽子をかぶったりするから不思議なもの。
「リンゴでーす」と、訂正されたりしつつの、言葉遊びもおもしろい。
この、読んだ後に子どもが帽子をかぶって出かけたくなる、現実での楽しさへと続いていくところも、この絵本のとても素敵なところです。
帽子嫌いな子へは、ぜひ試してみて欲しい1冊ですね。
二言まとめ
へたのない野菜や果物たちが、へたの帽子をかぶった時のピタッと感が気持ちいい。
見たら、帽子嫌いな子も、帽子をかぶって出かけたくなる絵本です。
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