作:庄野ナホコ 出版:講談社
マッチ箱に入るくらい小さなゾウ。
そんなゾウは最近食べ過ぎて体が大きく・・・
マッチ箱のベッドが窮屈になったので、新しい箱を探しに出かけていきました。
あらすじ
小さなゾウは、人間の家の温室にある、大きなテーブルの上に住んでいます。
その寝床はマッチ箱。
このテーブルの上が、小さなゾウの小さな世界でした。
そんな小さなゾウにも、悩みがありました。
大好きなクローバーを食べ過ぎて、体が大きくなってしまったのです。
マッチ箱がぎゅうぎゅうで、毎日悪い夢を見てしまいます。
そんな時、友だちの小鳥が、向うの部屋にきれいな箱がいっぱいあることを教えてくれました。
小さなゾウは、大きな人たちが寝静まったころ、箱探しの旅に出発することに。
テーブルを降りて、床を歩いて進みます。
寝ているネコの前をそーっと横切り・・・
プランターのイチゴと、持って来たクローバーのお弁当を食べ・・・
絨毯の海を越え・・・。
いよいよもうすぐ箱の部屋です。
と、その時。
大きな足がドシーンと降りてきて、ゾウはびっくり。
物陰に隠れ、足音が行ってしまうのを震えながら待ちました。
ようやく着いた箱の部屋には、クリスマスツリーが置いてあり、その周りにたくさんのきれいな箱が置かれています。
さて、小さなゾウが選ぶのは・・・?
『ちいさなゾウ』の素敵なところ
- リアルでかわいい小さなゾウ
- 家の中を巡る大冒険
- どこを切り取ってもおしゃれな世界
リアルでかわいい小さなゾウ
この絵本のとてもおもしろいところは、現実では大きなゾウが、ものすごく小さくかわいくなっていることでしょう。
しかも、小さくなったからといって、デフォルメされているわけでもありません。
とてもリアルなのに小さいという不思議さと、だからこそのかわいらしさが小さなゾウの魅力です。
言うなれば、小型犬をかわいいと思う感覚でしょうか。
そんなゾウは、
カップ置きの上で水浴び。
好物はクローバーの葉っぱ。
マッチ箱のベッド。
など、小さいからこそのかわいさを、これでもかと見せてきます。
眠る仕草も、かごを鼻に下げて歩く姿も、どれもかわいくて絵になるのです。
もちろん、子ども達もそのかわいさにメロメロ。
「うちにもいたらいいのに~」
と、心からの言葉が漏れます。
この、見ているだけで癒される小さなゾウの、抜群のかわいさがこの絵本のとてもおもしろく素敵なところです。
家の中を巡る大冒険
そんなかわいい小さなゾウですが、ある日、箱探しの冒険にでかけることになりました。
この冒険もまた、この絵本のたまらなくおもしろいところです。
冒険と言っても、外の広い世界へ飛び出すわけではありません。
家の中という限られた空間での冒険です。
ですが、子ども達もよく知っている、家の中という空間だからこそのおもしろさがそこにはあります。
人間なら苦にならないテーブルの高さも、小さなゾウからしたら高層ビルのよう。
昇降式のかごに乗り、昇り降りしていきます。
鉢植えのたくさんある温室は、ゾウから見たらジャングルのようだし、
小さな体にはネコだって猛獣です。
フカフカ毛並みの絨毯は、体が飲み込まれる大河みたい。
歩いて進むのも一苦労です。
こんな風に、みんなが当たり前に過ごしている家の中も、小さなゾウが歩くと全然違う場所に見えるというのが抜群におもしろい。
「この子には、絨毯フカフカ過ぎるんだね」
「人間が巨人みたい!」
「猫に見つかったら、食べられちゃうかな?ネズミみたいな色だし・・・」
と、子ども達も自分との目線の違いに驚いていました。
この、子ども達がよく知っている場所を、とても低い視点から冒険するおもしろさもまた、この絵本のとてもおもしろいところです。
どこを切り取ってもおしゃれな世界
さて、小さなゾウによる、人間の家を舞台にした冒険というだけでも、特徴的なこの絵本。
ですが、もう一つこの絵本には特徴的な魅力があります。
それが、絵本全体から醸し出されるオシャレさです。
この絵本は、どの場面を切り取っても、オシャレさを感じさせてくれます。
冒頭の温室で、カップ皿の上で水浴びをする姿。
ゾウの暮らすテーブルの上に置かれた、マグカップや厚い本、ライトスタンドのほどよいレトロ感。
マッチ箱の絵柄に、小さなかごに花束のように入れられたお弁当のシロツメクサ。
などなど、ページの構図から、ひとつひとつの小物まで、どこを見てもオシャレだと感じさせてくれるのです。
それはまるで、豪華な洋館へ招待され、内装を見て驚き、部屋のインテリアのオシャレさに心を奪われような感覚といえばよいのでしょうか。
理屈ではない、直感的なオシャレさがこの絵本からは感じられるのです。
この、絵を見ているだけでも、そのオシャレさやセンスの良さに心奪われてしまうところも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
ちいさなゾウの、かわいすぎる一挙手一投足に、見ているだけで癒される。
子ども達がよく知っている家の中を、小さくて低い目線で冒険するのがたまらなくおもしろい絵本です。
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