作:レベッカ・ボンド 訳:さくまゆみこ 出版:偕成社
腰にドーナツをぶら下げた男の子が歩いていました。
すると、そのドーナツ目当てに動物たちがついてきます。
さらに、その動物たちを見て、どんどん町の人も集まって・・・。
あらすじ
男の子ビリーのもとに、誕生日プレゼントの箱が届きました。
ビリーは箱を抱え、ズボンにドーナツを一つ糸で吊るして出かけていきました。
すると、後ろから、ニワトリがついてきました。
ドーナツのかけらが落ちてくると思ったのです。
その後ろから、今度はネコがついてきました。
さらに、ドーナツのにおいにつられ、イヌも駆けてきます。
そのイヌを見て、おもしろそうだと思った女の子が、劇の練習そっちのけでついてきました。
女の子を見て、劇の仲間の子どもたちも。
子どもたちがどこかへ行くので、子どもクラブのお姉さんもついてきて、
お姉さんの髪を切っている途中だった美容師さんもついてきます。
それを見たランナーたちも、レース会場があると勘違い。
それに続いて、子どもバンドも道を間違えついてきました。
その音色に誘われてついてきたのは、郵便屋さんに、ポーターさん、ウェイターさんにペンキ屋さん、レンガ屋さん、パワーショベル、ウズラの群れまで。
それでもまだまだ止まりません。
どんどんどんどんついてきて、街中の人から、おもちゃ、食器、空想の生き物までついてきます。
大行列は楽しそうに大行進。
ところが、突然ビリーがピタッと止まりました。
もちろん、大行列は急には止まれずすってんころりんの大騒ぎ。
この行列いったいどうなってしまうのでしょう?
そして、ビリーの箱の中身とは?
『ドーナツだいこうしん』の素敵なところ
- ドーナツ1つでどんどん増えていく大行列のおもしろさ
- 笑いの止まらないすってんころりんの大騒ぎ
- お祭り騒ぎの大熱狂とビリーのクールさ
ドーナツ1つでどんどん増えていく大行列のおもしろさ
この絵本のなによりおもしろいところは、どんどんついてくる人が増えて、大行列になっていくところでしょう。
しかも、始まりはたった1つのドーナツというところがたまらなくおもしろい。
こんなちっぽけなドーナツ1つが、勘違いに勘違いを生んで、いつの間にか街中を巻き込む大行列になっていくスケール感がたまりません。
ページをめくるたびに新たについてくる人。
さらにその人についてくる人と、どんどん連鎖していきます。
この勘違いを見て、子どもたちも
「違う違う!」
「ドーナツ追いかけてるだけなんだって!」
「レース会場じゃないよー!」
と、大笑い。
そうは言いながらも、どんどん収拾がつかなくなっていくけれど、とにかく楽しそうな大行進に「どこまで長くなるんだろう?」というワクワクした表情を見せていました。
さらに、大行進の後半では、ファンタジーまで混ざってくるのもたまらなくおもしろいところ。
食器や、雲を捕まえた人、ハンプティダンプティ、ユニコーン、おもちゃの兵隊などなど、絵本で見たようなファンタジーな人々まで、どこからともなく集まってくるのです。
これには、
「雲捕まえてる!?」
「人間だけじゃないんだ!?」
「絵本から出てきたのかな?」
と、子どもたちも驚きを隠せません。
この、ドーナツ1つから始まったとは思えない、現実と空想の壁までも越えてしまうほど、どんどん大きく長くなっていく行列が、この絵本のとてもとても夢中になってしまうおもしろいところです。
笑いの止まらないすってんころりんの大騒ぎ
そんな、どこまでも続いていきそうな行列ですが、ある時、突然止まります。
それは、ビリーが急に止まったから。
先頭のビリーは簡単に止まれるけれど、大行列はそうもいきません。
みんなびっくりすると同時に、あっちでぶつかり、こっちで転びの大騒ぎ。
さっきまでの大行進とはまた違ったお祭り騒ぎが始まります。
このシチュエーションに、子どもが笑わずにいられるはずがありません。
人々の叫び声や「あちらですてん!こちらでどすん!」という言葉を聞いて大爆笑。
まさにドタバタコメディを見ているような笑い声が響き渡ります。
このとにかく楽しい空気感がたまりません。
しかも、このすってんころりんの大騒ぎが、さらに楽しいお祭り騒ぎに繋がっていくのですから・・・。
この、たった1つのドーナツから出来た大きな行列が、ビリー1人が急に止まっただけで大騒ぎになるというドタバタ劇のようなおもしろさもまた、この絵本のとても盛り上がるところです。
お祭り騒ぎの大熱狂とビリーのクールさ
さて、そんなお祭り騒ぎを起こした張本人であるビリー。
このお祭り騒ぎの中、いたって冷静に行動します。
なんなら、急に止まったのも、行列と離れるための作戦だったと見て取れます。
すってんころりんの大騒ぎの後、お祭り騒ぎをしている大熱狂の街の人と、
ビリーの冷静な行動は実に対照的。
最後の場面では、これまでの興奮が嘘のように、静かな時間が流れます。
このビリーのしたたかなクールさが、この絵本のなんともおもしろいところ。
最後の最後で、ビリーは目的を果たし、箱の中身も、糸で吊るしたドーナツの意味もわかります。
この、熱狂とクールさ、大騒ぎと静かな時間のコントラストもまた、この絵本のとても素敵で特徴的なところだと思います。
最後にドーナツを食べるのは・・・。
二言まとめ
たった1つのドーナツから、想像も出来ないほどの大行列になっていく様子がたまらなくおもしろい。
みんなで大騒ぎするおもしろさと、1人で静かな時間を過ごす楽しさの両方が味わえる絵本です。
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